海へいこう!「海事観光」という新たなジャンル

インバウンド需要

はじめに

四方を海に囲まれ、美しい島々を保有する日本。この「海」という貴重な観光資源を活用する「海事観光」を、国はさまざまな戦略で推し進めています。海と島旅に不可欠な交通手段である船・スーパーヨットなどを整備し、国内外の旅行客に周知してもらい、飛行機や新幹線といったゴールデンルートだけではない「観光立国」を目指すことが目的です。

日本人さえも気づかなかった海や船舶のレジャー、島の文化、伝統、風習などの情報を、動画や写真などで発信しています。そうすることで、今後のアフターコロナの旅が具体性を帯びてゆくでしょう。ここでは、「海事観光」という新たな取り組みが、どのように私たちを楽しませてくれるのかご紹介します。

海事観光とは?

海事観光について国土交通省は、「海や船舶を輸送手段、あるいは観光資源として活用した観光振興」と定義しています。ですが、「この定義に拘泥(こうでい)することは無意味」とも述べています。海事観光は、海や船舶がレジャーの舞台となり、観光スポットとして楽しめるようにすることであると、広い意味で捉えているからでしょう。

国内外の観光のさらなる促進を目的として、地方への誘客、消費拡大の貢献、受入環境の整備、多様な魅力の発信強化など、数々の取り組みを進めています。

  • フェリーや旅客船による、快適な広域周遊と地方部への送客。
  • 海上輸送の特性を生かした、船でしかアクセスできない離島への誘客。
  • マリンアクティビティ等、体験型コンテンツによる「コト」消費の拡大。
  • スーパーヨット等、豪華な滞在環境コンテンツによる富裕層の誘致。

出典:国土交通省海事観光戦略実行推進本部資料

海を巡る観光事情

訪日外国人観光客の増加により、海事分野でのインバウンド推進の取り組みは、これまでも目標とされてきました。しかし、社会全体の人口減少、若者のレジャー多様化による海離れにより、船の乗客数やマリンレジャー参加者数が減少の一途を辿っています。ですが、訪日外国人客は年々増加していますので、海事観光の発展のために、海事観光の魅力をもっと発信する必要があるでしょう。

今後は、海や船舶に触れ合う機会を積極的に作り出し、多くの人に海や船に対する関心を高めてもらう必要があります。海事観光の推進によって、海事分野への関心向上、海事分野への誘致、リソース確保を行うことが求められています。訪日外国人旅行客にとって、マリンレジャーが観光の目玉となるよう、国全体でのインバウンド対策が必要と言えます。

出典:国土交通省

海事観光の可能性

これまで、日本人も訪日外国人も、国内移動の手段として飛行機や鉄道の利用がほとんどでした。今後は「船」という交通手段をPRして、新たな観光ルートを作り出していくことで、インバウンドの可能性が見いだせるでしょう。

日本国内での広域周遊の実現

フェリーや旅客船は、広域の送客が可能です。その特性を生かした上で、車・鉄道など他の交通手段と連携させれば、さらに広域移動が可能となります。

豪華フェリーやクルーズ船は、客室の個室化、設備の充実により、観光客の満足度を高められるでしょう。そのうえ、手頃な価格帯で提供すれば、多くの観光客の利用が見込めます。近年は、レンタカーを利用する外国人旅行客が増えています。船とレンタカーを組み合わせるプランを充実させることによっても、外国人旅行者の広域周遊が可能になります。

訪日外国人が広域移動できるサービスの充実により、外国人旅行者が地方に滞在する日数が増え、地方での消費拡大につながります。地方創生と脱ゴールデンルート、両方の実現が可能となるでしょう。

出典:国土交通省

地方への集客

日本には数多くの離島があります。それぞれの島が観光事業に力を入れていますが、認知度が低いため、集客数を上げることができていません。まずは、離島航路の活性化が必要です。航路が増えれば、地元の人々の生活も向上しますし、観光客も増加します。地域経済の発展と、観光業の発展に貢献することは間違いないでしょう。

例えば、「アイランドツーリズム」という取り組みがあります。これは、島暮らし体験を通して、島の文化を学び、自然に触れ、その素晴らしい思い出を未来に伝えていこうとする取り組みです。

国土交通省は、訪日外国人旅行者向けウェブサイト「Scenic Japan from the Water」(英語)の発信に、力を注いでいます。サイトでは、日本の魅力的な島々を紹介し、楽しいコンテンツを配信しています。このサイトを見た外国人に「ぜひ行ってみたい」と思わせる、四季折々の行事や地元の人々の暮らしの写真が多数アップされています。

物から体験へ~「コト消費」

日本のインバウンド需要は、「モノ」から「コト」へシフトしています。海事観光においても、マリンアクティビティなど「コト消費」の需要がメインになってゆくでしょう。例えば、手軽にボート遊びを楽しめる「レンタル・チャーターボート」、若年層向けのマリンアクティビティ、夜景を見ながらのクルーズディナー、工場夜景クルーズ、本格的イベント付きの海賊船クルーズなどです。

海と船でしか体験できない、特別な「海事観光」コンテンツ。これらを磨き上げ、そこでしか体験できない「コト」を消費してもらえるような取り組みが大切です。

富裕層マーケティング

特に富裕層が喜ぶコンテンツを提供することにより、富裕層の誘致と消費の拡大を目指しています。例えば、スーパーヨットや豪華チャーターヨットなどの環境整備です。スーパーヨットは、通常の旅客船と構造も異なりますので、その技術基準の見直しなどを行い、普及促進が行われています。

“瀬戸内海に浮かぶ小さな宿”として話題を集める高級客船「ガンツウ」は、全室スイートで1泊1室/2名利用/40万円~と、高額なプランが提供されています。露天風呂付きの「テラススート」では、木の香りに満ちた空間で、海から瀬戸内海の景色を眺めるという極上の体験ができます。(こちらのサイトをご覧ください)

その他、豪華チャーターヨットでは、1隻あたり1日の宿泊チャーター料が約30万円というものもあります。高価格でも、特別の時間と空間を楽しめるサービスであれば、富裕層への需要は大きいでしょう。

海事観光ポータルサイト「海ココ」

国土交通省と日本観光振興協会との協力により、ダイナミックな海の絶景や、穏やかな時間を過ごせる船旅・島旅など、海事観光の総合的プロモーションが実施されています。

プロモーション動画「#海があるから」

” #海があるから、みつかる、驚きと新発見” がテーマのプロモーション動画、「#海があるから」が制作されました。旅をしながら出会う、様々な海の風景を描いた映像です。実際そこにいるかのように心揺さぶられる美しい海の映像は、想像力がかきたてられます。「ぜひ行ってみたい」と思わせる、とても魅力的な映像です。

海事観光特設サイト「海ココ」

ウィズコロナ・アフターコロナを見据えて、海事観光の魅力を広く周知するための海事観光特設サイトが1/17にオープンしました。海と船の情報ポータルサイト「海ココ」です。海と海沿いの街を旅する光景が、多彩な角度から紹介されている情報ページです。

フェリーや遊覧船などの航路や、魅力的な船旅のエリア情報がまとめられた「全国航路MAP」は、日本地図から簡単に観光スポットを探すことができます。また、船旅の魅力をバーチャル体験できる様々な航路の「トラベルムービー」も満載されています。乗って、遊んで、食べる!を満足させる充実したコンテンツは、アフターコロナの海事観光と船旅を探すお手伝いをしてくれます。

さらに「海ココ キッズ」という、子ども向けのポータルサイトもあります。” #知ろう もっと 海のこと” をテーマに、海に纏わる学びを楽しく面白く紹介しています。船の仕組み、海での仕事がマンガと動画で紹介されていますので、子どもさん必見です。

海事観光の総合的プロモーションブースをバーチャル展示

海ココ”には、2021年1月開催予定で中止となった「ツーリズムEXPOジャパン トラベルフェスタ」のバーチャルブースが展示されています。日本をめぐる航路、美しい海と景色を映像で楽しむことができます。

その一つ、「鹿児島~奄美・沖縄航路」は、鹿児島を出発し奄美群島や屋久島をフェリーでめぐる沖縄までの船旅。島民の生活を支える交通機関でもあるフェリーで個性豊かな島を巡ります。また、「瀬戸内海航路」では、瀬戸内の穏やかな海と大小さまざまの島が作り出す独特の景観が、見る人を別世界に誘います。

まとめ

残念なことに、日本でコロナウィルスが広まるきっかけとなったのは、クルーズ船でした。しかし、海と島の豊かな自然のなかで体験し周遊できる船旅は、日本にとってかけがえのない海事観光の象徴です。たとえ時間がかかっても、船旅の快適さや爽快感を皆が思い起こせるように、努力していかなければならないのだと思います。

ウィズコロナの自粛期間も、家にいながら船旅に思いを馳せ、アフターコロナにはぜひ行ってみたいと思えるような、海の観光スポットはたくさんあります。それらをさまざまなコンテンツで提供している「海事観光」の取り組みは、コロナを乗り切るうえでの心の栄養となってくれるでしょう。

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