ベトナムの教育マーケット事情2021年版(後編)

ベトナム

はじめに

前編では、ベトナム政府が打ち出す教育政策と教育市場の概要について、またベトナムの教育事情についてご紹介しました。

今回の後編では、教育マーケットの最新情報やオンラインで学習できる様々なサイトについてご紹介しましょう。

ベトナムの教育マーケットのトレンド

“KHO HỌC LIỆU SỐ"(オンラインデジタルデータ学習ストレージ)

Eラーニングの加速

公立学校

ベトナムでは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が出る前から、幼児・保育所向けから高校3年生向けまでの授業動画を集めたサイト"KHO BÀI GIẢNG E-LEARNING"(Eラーニング授業ストレージ)や、幼児・保育所向けから高校3年生向けまでの教科書をはじめとするさまざまな教材をデジタル化したサイト"KHO HỌC LIỆU SỐ"(オンラインデジタルデータ学習ストレージ)が、教育訓練省によって運営されていました。

これは、主に通学せず独学で卒業資格を得ようとする人や、学校に通えなかった人のための補習教材として用意されていました。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)によって学校が休校になってしまい、これらのサイトが宿題などとして活用されるようになっています。

私立学校・インターナショナルスクール

公立学校はコロナ禍でもEラーニングが本格的に導入されていませんが、私立学校、その中でも特にインターナショナルスクールでは、新型コロナウイルス感染症が流行し始めて休校になった2020年春ごろから、学校で行われていた授業に代わってEラーニングが本格的に導入された学校が数多くありました。

Eラーニングでも、事前に収録された授業動画を視聴するなどのような一方向の授業ではなく、決まった時間に教師が講義を行い、さらにGoogle Classroomなどのツールを活用した、双方向性のある授業が実現されていました。

はじめてのEラーニング

新型コロナウイルス感染症がベトナムで初めて確認されたのは2020年1月23日ですが、そのころベトナムの学校はすでにテト(旧正月)休みに入っていました。休みが終わっても休校措置は継続され、5月に入ってからようやく再開されました。

そのころに、多くのベトナム人は初めてEラーニングに接しました。自分の子供を公立高校に通わせていた多くの親は、学校が自宅で学習できるコンテンツを提供できなかったこともあり、子供たちにオンライン学習を利用させる保護者が急増しました。

出典:JETRO

ある調査によると、学生全体の56.4%が今回の新型コロナウイルス感染症流行の影響で初めてオンライン教育を体験しました。

新型コロナウイルス感染症による休校で、多くの生徒や保護者が実際にEラーニングを体験しました。Eラーニングの需要は今後さらに急速に高まると予想されており、特に公立学校はその需要に対応するためにIT教育を強化する計画です。

主な学習サイト

TOPICA

https://topica.edu.vn/

オンライン英語教育を主な事業分野としているTOPICAは、2008年にハノイで設立されました。現在は、シンガポール、タイ、フィリピン、インドネシア、米国に進出しており、同時に執筆時点ではEdTechを展開する唯一のベトナム企業にもなっています。

主な学習コンテンツ

TOPICA Native

英会話に特化した、タイ、インドネシア、ベトナムの学生向けオンライン学習プラットフォームです。

毎日朝8時から晩12時まで、スマートフォンひとつでヨーロッパ・アメリカ・オーストラリアの講師とオンラインで直接つながり、コミュニケーションができるNative Mobileや、人工知能を使った発音練習ツールNative Talk:が用意されています。

Edumall

2,000以上のビデオ講義を提供するオンライン学習プラットフォームです。

講義内容は外国語のほか、音楽、情報技術、スポーツ・健康、自己啓発、デザイン、経営、オフィスIT、マーケティング、マルチメディア、専門知識、芸術・生活、結婚・家族、育児、風水・人相学など、多種多様な分野の学習を、ベトナムトップレベルの講師から勉強できます。

Kidtopi

アジアの子供たち向けの、教える経験を豊富に持つ国際的な教師とマンツーマンで英語を学ぶことができるオンライン学習プラットフォームです。

VIOEdu

https://vio.edu.vn/

VioEduは、1988年に設立されたベトナムIT分野のパイオニア企業であるPTグループがリリースしています。

日本を含む海外45カ国に進出しており。ベトナム国内では教育分野を展開しています。AIを搭載したスマート学習支援アプリ「VioEdu」は、小学校1年生~高校3年生向けの数学に特化したオンライン学習システムです。各個人で学習内容カスタマイズできるため、学習時間の節約、学習効率の向上が期待できます。

現在の算数/数学のカリキュラムしか用意されていませんが、今後はさらに国語、英語、物理、化学、STEMも用意される計画です。

manabie

https://www.manabie.vn/

日本人のCEO、本間拓也氏がホーチミンを拠点に設立した、中高校生向けのオンライン学習サービスを提供する日本資本のサイトです。サッカーの本田圭佑氏も出資していることで知られています。

数学/物理/化学/英語/生物の学習コンテンツ配信に加え、ライブ授業も提供しています。今後はオンライン事業をさらに拡大し、ターゲットも小学校、大学生、社会人に広げていく予定です。

オフライン学習サービスを提供する場として、ホーチミン市内にオフライン学習センターを5教室展開しています。オフラインと、スマホやパソコンを使用したオンライン授業を組み合わせた「オフラインオンラインハイブリッド学習センター」を運営しています。

2021年3月1日には、300万ドルの資金調達をしたことでも話題になりました。(出典:https://thebridge.jp/2021/03/keisuke-honda-backed-edutech-startup-manabie-secures-us3m-to-bring-japanese-education-to-vietnam-20210301)

教育マーケットに参入するためには

現在ベトナムでは、オンライン教育のみを提供する場合の規定は存在しません。そのため、物理的に学校施設を確保し、講師や教員も確保したうえで提供する必要があります。例えば、前述のmanabieも、ホーチミン市内に5教室を展開しているので規定を満たしています。

投資額については、1学生当たり最低2000万VND(約10万円)必要で、学習のためのスペースも1人当たり2.5㎡以上と決まっています。また教員一人につき学生25人までとも決められています。

オンライン教育の普及により、もしかしたら今後はオンライン教育のみを提供する場合の規定が制定されるかもしれません。

今後の教育マーケットの予想

Eラーニングや、オンライン学習のコンテンツやプラットフォームはさまざまな企業が提供していますが、まだまだ利用人口が少ないので、今後マーケットが伸びる可能性は十分あり得ます。特に、社会人向けの自己啓発分野や、日本のピアノやそろばんのような子供の習い事系に参入している会社が少ないので、今後特に有望な分野であるといえるでしょう。

現行の法規制では、すべてオンラインよりも、オンライン+オフラインの方が受け入れられやすいです。また、ベトナムではパソコンの保有率よりもスマホの保有率が圧倒的に高いので、使いやすく、学習に関連することをすべてまとめられるアプリが必須といえます。

まとめ

ベトナムは、ネットを積極的に使用する若い世代が多く、とても有望なマーケットとして海外から注目されています。さらに国の教育政策の3本の柱のうちの1本が「教育のデジタル化」でもあるので、今後、海外から多くの企業が教育マーケットに参入することでしょう。

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