世界各国のマイナンバー事情(後編)
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はじめに
世界各国では、日本のマイナンバーと同じようなシステムをすでに取り入れています。
日本のマイナンバー制度は、あまり国民に「浸透」していないのが現状です。今後は、健康保険証としての利用を押し進めるとのことですが、トラブル続きで利用開始はまだ先のようです。
では、他の国の事情はどうなのでしょうか? どのように国民の生活に役立っているのでしょうか? 今回は「アメリカ」と「シンガポール」の国民番号制度について紹介します。
世界各国のマイナンバー事情は「前編」もありますので、そちらもご覧下さい。
アメリカのSSN
元々は社会保障限定だったが……
ハリウッド映画でもたびたび耳にする「SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)」が誕生したのは今から85年前、1936年のことです。当初は労働者の年金や社会保障に役立てることを目的として作られましたが、その後利用が拡大していきました。
SSNは9桁の数字で構成されています。最初の1~3桁目までがエリア(州の中で地域ごとに分ける)、次の2桁がグループ(エリアをさらに小さく分けたもの)、そして最後の4桁がシリアル番号(自動で決められる)というものでした。しかし、利用者が増えるなどの様々な要因により、2011年にエリア番号を廃止しました。現在は、番号からエリアを特定することはできなくなっています。
どんな時にSSNを使うか?
アメリカには戸籍や住民票がありません。そのため、SSNは「身分証明書」として非常に重要な役割を果たしています。
また、生活の様々な場面で用いられています。納税時はもちろん、病院で受診するとき、水道・電気・ガスなどのライフラインの契約、銀行口座の開設、クレジットカードの作成、自動車運転免許証の取得、車の購入、不動産の契約の際に必要な証明書となります。
コロナ禍でもSSNは役立つ
アメリカでも給付金が支給されましたが、問題なく非常にスムーズに給付が行われました。ニュースなどでもよく取り上げられていましたので、覚えていらっしゃるのではないでしょうか。
個人を対象にした給付金の場合、2018年・2019年に納税時にSSNの情報を使った人は、申請不要で自動的に支払われました。それ以外の低所得者層はSSNによる申請が必要でしたが、銀行口座との紐づけがあるため迅速な給付が行われました。
シンガポールのNRIC
なんと建国以前から運用されている!
シンガポールの「NRIC(National Registration Identification Card)」が生まれたのは1948年。当時イギリス統治下にあったシンガポールでは不法移民が問題となっており、これを排除するために身分証としてNRICの発行が始まりました。
子供が生まれると9桁のアルファベットと数字が組み合わされた番号が割り当てられ、15歳になるとNRICカードが発行されます。30歳になったときに、カードの更新が必要となります。NRICカードは、すべての国民と永住者に発行されます。NRICカードには番号のほかに写真、指紋、名前、民族、生年月日、性別、出生国、発行日、住所、国籍(永住者の場合)などが記載されています。
どんな時にNIRCを使うか?
NIRCは様々な場面で必要となる身分証明書です。年金や税務等の行政手続きはもちろん、銀行口座の開設、不動産売買、兵役(シンガポールには兵役制度があるため)、図書館の利用、飼い犬の登録、インターネットの契約などでも利用されます。
さらに、病院にかかる際にも必要となりますが、なんと手術前にもNIRCで個人確認をされます。また、入院時に手首に巻く患者識別用のタグにも印刷されるとのことです。
コロナ禍でも役立ったNRIC
諸外国と同様、シンガポールでも一時金が国民に支給されました。この時に役立ったのがNRICです。事前に政府が国民に対し、NRICと銀行口座を紐づけることを呼びかけました。国民はその指示に従っていたために、速やかに個人口座に一時金の振り込みが行われました。
また、シンガポール国民と永住者は必ず「メディセーブ」と呼ばれる制度(年金)に加入しなければならず、毎月給与から一定額が差し引かれて口座に積み立てられています。医療にお金が必要な時は、この口座から引き出すことが出来ます。このようなシステムをうまく運用できているのは、NRICによって個人の身分がきちんと証明されているからです。
まとめ
アメリカとシンガポールにおけるマイナンバー制度は、人々の社会生活に溶け込み、暮らしを助ける有用なものとして活躍しています。
日本のマイナンバーカードは、この分野で先進している国と比べると、残念ながら「時代遅れ」と言わざるを得ません。日本の発展を願うばかりです。とはいえ、改善・進歩をしていますので、今後の動きに期待することにしましょう!