アフターコロナ・インバウンド呼び込みのポイントは?

はじめに

日本では現時点で、ワクチンを一回以上接種した人の割合は70%以上、必要回数のワクチン接種を完了した人の割合は60%以上になっており、ゆっくりとアフターコロナに向かっていっています。

アフターコロナの課題と言えば、インバウンド、つまり訪日外国人旅行客の呼び込みが挙げられるかもしれません。

今日は、コロナ禍におけるステイケーション、さらにアフターコロナのインバウンド呼び込みのポイントをさまざまな観点からご紹介しましょう。

コロナ禍においてはステイケーション

ステイケーション(Staycation)とは、 滞在を意味する「ステイ(Stay)」と休暇を意味する「バケーション(Vacation)」を組み合わせて作られた造語です。
遠くに旅行に行ったりせず、自宅や近場で休暇を取ろうという意味の言葉です。

新型コロナウイルス感染症の流行により、不要不急の外出、県境をまたぐ移動の自粛や長距離の移動が制限されたこともあり、自宅からあまり遠くに移動せず近くのエリアに滞在して休暇を過ごすステイケーションが日本や海外で注目されています。

オーストラリアでのステイケーションの実例

日本にはあまりみられないステイケーションに関する取り組みについてご紹介しましょう。

オーストラリア、クイーンズランド州ブリスベン市は、市民や地域住民に以下のようなさまざまなステイケーションのアイデアをブリスベン市役所ホームページで紹介しています。

2160以上ある公園でピクニック

出典:ブリスベン市役所HP

冒険家のためのストーリーブリッジクライム

出典:ブリスベン市役所HP

レンタルカヤックでブリスベン川の探索

出典:ブリスベン市役所HP

食通のためのリバーサイド探索

出典:ブリスベン市役所HP

アート愛好家のためのアウトドアギャラリー

出典:ブリスベン市役所HP

インバウンドを呼び込むポイント

「レスポンシブル・ツーリズム」、つまり「責任ある観光」とは、観光客も含めて観光に関わる全員が観光地の環境や文化、周辺住民への影響を意識し責任を持ち、より良い観光地を作っていくことを目指した観光やその考え方です。

環境保全や文化の保護継承など、観光地をより良い場所にしていくという努力は観光地の地元住民だけでできることではありません。実際には、訪れる多くの観光客にも協力し、自分の行動が地域や環境へ負荷を与えてしまうかも知れないことを認識し、自律した行動を実践していってもらう必要があります。これがまさにこれからの観光のカタチと言えるでしょう。

自治体国際化協会ロンドン支局のレポートでは、この新しいカタチの観光「レスポンシブル・ツーリズム」が取り上げられています。

観光をより良くする

最近は、健康、生態系、環境、そして地元住民へ配慮したカタチの観光への転換が求められています。数十年前のように、これらの要素の優先順位を下げてまで観光を推し進める時代ではもうありません。さらに、飛行機で遠く離れた場所への旅行から近場や居住圏内での旅行へ、より自然と親しむ自然に優しい旅行へとなど、旅行者の嗜好も量より質を重要視するように変化してきています。これは冒頭で取り上げたコロナ禍におけるステイケーションとも方向性が一致しています。

パンデミックが落ち着いた後もかつての観光産業に戻るのではなく、この機会をきっかけに気候変動対策や生態系の保全を取り入れた経済復興が成し遂げられるべきです。自治体国際化協会でも「レスポンシブルツーリズムもその一環として存在感を増しており、アフターコロナの観光が、旅行者にとっても環境や住民にとってもより良いものとなることが期待されている」とレポートで述べています。

それぞれの地域の状況を一番よく知っている各自治体が、地元の観光産業、地元住民を包括的にマネジメントし、「レスポンシブル・ツーリズム」をしっかりアピールすることによって、地元住民にも、観光客にも、環境にも良い観光産業が形成されると思います。

日本の「アグリツーリズム」について

日本にも似た取り組みがありました。新しいカタチの観光、グリーンツーリズムの一種、アグリツーリズムについてご紹介しましょう。

アグリツーリズム(Agritourism)とは、その名の通り農業を意味する「アグリカルチャー(Agriculture)」と観光を意味する「ツーリズム(Tourism)」を組み合わせた言葉です。農村や農場を訪れて一定期間滞在し、実際に農業の仕事を体験したり、農家の民宿に泊まったりする観光のスタイルです。

農体験や原生林巡り、温泉入浴や地元食材を用いたアウトドアディナーなど、自然の恵みを感じながら大自然の中で時間を過ごすことは、心身共にリラックスでき、都会に住む人々にとっては普段なかなか体験できることではありません。

さらに、近年の訪日外国人観光客の消費傾向は、ブランドものや日本のものを買う「モノ消費」から、日本文化の体験といった異文化交流や日本でしか体験できないアクティビティにお金をかける、いわゆる「コト消費」に変化しています。

自分の国の農業文化と日本の農業文化の違いを実体験を通して知ることができるアグリツーリズムは、「コト消費」を求める訪日外国人観光客にとってピッタリの体験であると言えるでしょう。

このアグリツーリズムが、インバウンド呼び込みのポイントになるかもしれません。

他のポイント

英国に本社を置く調査会社YouGovによって実施された調査の結果から、アフターコロナの旅行への意識の世界的なトレンドが読み解けます。

YouGovが2020年7月から8月にかけて世界25の国や地域で5万2,000人以上を対象に行った調査の結果をまとめた報告書“Vacation Dreams”によれば、距離が離れていても安全な所、つまり新型コロナウイルスの感染者数が抑えられている地域に注目が集まっているようです。

また、アフターコロナを考えれば、旅行に行けない今においてポジティブな評判を獲得・維持しておくことは大事なポイントになります。入国制限があったり、観光目的の入国ができない状況でも、好意的な印象を持ってもらえれば、パンデミックが落ち着いた後の海外旅行の有力候補になるかもしれないからです。

さらに、YouGovのデータによると、感染者が多い中でも比較的多くの人が海外旅行を含めた旅行を肯定的に考えていることが分かります。ミレニアル世代と呼ばれる25歳から34歳の年齢層で肯定的に考えている人の割合が最も高く、25歳から44歳までの年代で広く見ても旅行を予定している人の割合は比較的高く、55歳以上では反対に低いという傾向がありました。

このデータから、パンデミックが落ち着いたすぐあと、アフターコロナの初期の段階では、はじめに動くのはミレニアム世代であるかもしれないとの理由から、インバウンド呼び込みのターゲットを高齢者層よりも若年者層に定めた方が効果を上げやすいと考えられます。

韓国の3本柱ースマート観光は決め手になるのか

「日韓地方自治体におけるコロナ19 への取組と観光事例研究」をテーマに、2020年12月9日にKRILA(韓国地方行政研究院)とクレアソウル事務所が共同開催した日韓共同研究会では、地域観光の新しい方向性やトレンドいわゆるパラダイムとして、「新型コロナウイルスの影響により地域観光の需要が非対面フレックス価値消費デジタル中心にシフトした」、また以前に比べ「観光地までの時間と交通の利便性をより重視するようにシフトした」との分析が発表されました。

このパラダイムシフトに対応した地域観光政策としては、以下の3点が重要であることも提言されました。

①地域観光資源の磨き上げと、非対面を追求する観光客の情報とニーズを満たす「スマート観光」の積極的導入
②公共データと地域観光政策を組み合わせて地域観光を分析し、地域観光資源を掘り起こす人材の育成
③地域観光の構造変化を改善の機会と見なし、新しい環境の中で中長期的な地域観光政策を樹立していくこと

スマート観光、つまりスマートツーリズムとは、近代的なデジタル技術を活用して、これからの観光客のニーズを満たす観光サービスを提供することです。このスマートツーリズムが推進されることによって、観光客の集客や滞在の長期化、消費の拡大などの効果が期待されています。

日本のマイナスポイント

インバウンド呼び込みに際して、日本のお隣の国韓国の国民の日本旅行に対する意識調査は参考にできるかもしれません。

日本旅行の際の不安なことを尋ねる問いに対して、「飲食物の放射性物質による汚染」、「新型コロナウイルス感染」、「大気の放射性物質による汚染」が挙げられました。韓国では、放射性物質や大気汚染への関心が高くなっており、東日本大震災以来、その傾向が特に顕著に見られています。現在でも韓国国民には、新型コロナウイルス感染症と同じように不安視されていることが改めて浮き彫りになりました。

韓国以外の訪日外国人観光客は、韓国人ほど放射線汚染を気にしていないかもしれませんが、パンデミックが落ち着くことや新型コロナウィルス感染症の新規感染者数の減少と並行して、日本旅行のマイナスポイントとも捉われてしまう放射性物質による大気汚染の実態を広く知ってもらうことが、日本旅行への不安解消に繋がるかもしれません。

シンガポールからのレポートを見てみる

北海道サーモンバーガー

シンガポール人はパンデミック以前から日本への関心が高く、実際に2019年のシンガポール人訪日旅行客の約75%がリピーターでした。日本に旅行ができないコロナ禍の現在でも、シンガポール国民の日本への関心は依然として高いです。

そのことも関係し、有名ハンバーガーチェーンであるマクドナルドが、「A Little Escape to Hokkaido」というキャッチフレーズで北海道サーモンバーガーを販売しました。これは日本に旅行に行けない寂しさを食によって紛らわしているのかもしれません。また、このキャンペーンは海外旅行に対する意欲が冷めやすい今、パンデミックが落ち着いたら日本に旅行に行きたいという意欲を維持するのにとても役立っています。

アフターコロナのインバウンド呼び込みのために、今から関心をつなぎ留める努力もポイントとなることでしょう。この点で、日本の観光地や観光施設、文化や食文化などをメディアで発信し続けることはとても重要です。

インバウンド需要が戻るまで

インバウンド需要がいつ戻るのか、正確なところは誰にもわかりません。しかし日本がコロナ禍でも依然として各国民からの高い関心を維持しており、日本への旅行意欲が高い人はまだ多くいます。

国ごとにコロナの感染状況が異なりそれに伴って旅行規制が異なるため、コロナ禍の旅行では数か国を周遊することや乗り継ぎついでに観光することよりも、目的国に直行便で行きそこにある程度長期滞在する可能性が高いと思われます。そのことを考えると、海外旅行に行きたくてうずうずしている人に最初の目的地として選んでもらうことができれば、日本、周辺地域にとって大きなチャンスになると言えます。

まとめ

今回は、コロナ禍におけるステイケーション、さらにアフターコロナのインバウンド呼び込みのポイントについてさまざまな観点からご紹介しました。

アフターコロナのツーリズムに欠かせないポイントは、グリーンツーリズムやサスティナブルツーリズム、アグリツーリズムや予防や教育というキーワードを含むものになるのかもしれません。

パンデミック前まで日本を訪れる外国人観光客は年々増えていました。コロナ禍で海外旅行に行けない状況が続いていますが、行きたくてうずうずしている人は特に若い世代で大勢います。ワクチンの接種が進んだりコロナが終息したあと、きっと来日観光客が増加することでしょう。アフターコロナを見据えて、インバウンド呼び込みのポイントを押さえて今から日本の良さを発信し続けることは、リピーターをつなぎ留めることにもなり、コロナ収束後に日本に旅行したいと思っている大勢の観光客を誘致することに大いに役立つことでしょう。

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