食の「多国籍対応」を目指そう!

インバウンド需要

はじめに

新しい生活様式が浸透してきましたが、多くの人がインバウンドの再開を心待ちにしています。そうなれば各国からの旅行者でにぎわう日が訪れるでしょう。また、留学生や日本での仕事のために移住してくる人たちも増えるはずです。

外国人に日本食はとても人気がありますが、世界の様々な文化の人々の需要に対応するためには「食の多国籍化」も求められています。つまり、ムスリム向けのハラール料理、ベジタリアン、ヴィーガン向けのメニューなどを提供するということです。

ここでは、JNTO 日本政府観光局の情報をもとに、「食の多国籍化」の今後の課題について取り上げます。

食の多国籍化は大変?

外国人のそれぞれの必要に合わせる食の「多国籍化」は、どうしても難しいと思われがちです。なぜでしょうか?

数年前は、ムスリムに対応する料理を検討する時に、できないこと、してはいけないことが強調されていました。豚肉・お酒はダメ、豚肉を扱ったまな板や鍋も併用できない、冷蔵庫も別にしないと・・・となると「そこまでできない」ということになってしまいます。手間も費用もかかりすぎてしまうからです。いつ来るかわからないお客様のために新しいオペレーションを考えなければいけない、食材も別に取らなければいけないと思うと、二の足を踏んでしまうのもうなづけます。

最近ではハラールだけではなく、ヴィーガン、オーガニック、コーシャなどの需要も増えてきていますが、今までの日本の現状、考え方ではとても対応できないということになってしまいます。

出典:JNTO

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では、「違いよりも共通点を見る」という考え方に変えてみるのはどうでしょうか?

一般的な食事との「違い」にばかり目を向けていると難しいことでも、みんなが共通して食べられるもの、「共通点」に目を向けるとさほど難しくないことが分かります。

出典:JNTO

下の表からも分かるように、ほぼ共通している食材はベジタリアン用の食材です。その食材に、さらに食べられるものをプラスしたり、食べられないものを取り除けばいいのです。野菜、穀物、きのこ、豆乳などはほとんどの人が食べられます。ベジタリアンが食べる野菜、卵、乳製品にハラール認証の肉、魚介類を加え、アルコール成分が含まれるみりんなどの調味料を除けば、ムスリムの人たちが食べられるハラール食になります。また、動物由来の卵、乳製品、はちみつなどを除けば、ヴィーガン対応の食事になります。アレルギーを引き起こす食材として挙げられる卵、乳製品、魚介類はヴィーガン食には含まれないので、ヴィーガン対応ができればアレルギー対応も可能だということになります。

このように、共通して使用できる食材をベースにしてシンプルに考えると、「食の多国籍化」も意外と難しくないことが分かります。

出典:JNTO

成功したメニュー例

実際に成功した例があります。

名古屋の味噌煮込みうどんのお店は、中部国際空港にインドネシアの飛行機が就航することになり、インドネシア人の観光客が増えることに着目してムスリム用のメニューの開発をすることにしました。インドネシア国民の約8割がムスリムだからです。

このお店は百年以上の歴史がある老舗なので、メニューを開発するにあたり、まず「変えられない守るべきこと」と「変えても大丈夫なこと」を整理しました。

小麦粉のみで作ったうどん、八丁味噌を使った汁は「絶対に変えられないこと」でしたが、これらの材料はハラール対応食なので、ムスリムにも全く問題のないものでした。

かつお出汁やアルコールが含まれる調味料、かまぼこ、鶏肉は「変えても大丈夫なこと」に分類しました。アルコールを含むみりんをデーツシロップに変え、醬油もアルコール無添加のものに変えました。トッピングのかまぼこはアルコールが含まれていたのでのせるのをやめ、鶏肉はハラールチキンを使用することにしました。

ハラール認証の食材と聞くと特別なルートが必要な感じがしますが、最近では一般的な問屋でも扱っていますし、業務スーパーなどで売られているものもあります。特にアジア人向けの食料品店ではそうした商品が置かれています。海外から来ている研修生や定住者もいるので、自炊する人にとってはハラール認証食材が気軽に買える場所が必要だからです。

先ほどの味噌煮込みうどんのお店では、ベジタリアンやヴィーガンに対応するメニューも開発しました。苦労があったようですが、かつお出汁をキノコ出汁に変えて、「キノコ香る味噌煮込みうどん」という名前で提供しました。これらをハラール用、ベジタリアン用の特別メニューとするのではなく、誰でも注文できるようにしたので、外国人だけではなく日本人の集客にもつながりました。

このお店が成功した理由は何でしょうか?それは老舗としての伝統を守りつつ、新しいメニューの開発にチャレンジしたことです。今まで当たり前だったことにこだわりすぎるのではなく、どうすればより多くの人に伝統の味を提供できるかを考えることが成功につながるといえます。

上手に対応しているお店を見習おう

外国人が日本へ来た時に、ホテルのブッフェが利用できないという声が聞かれます。なぜなら、アレルギー対応がされているところは多くなりましたが、ムスリムやヴィーガンには対応していないところが多いからです。日本の多くのホテルでは、作りたい・食べて欲しい料理を並べる傾向が強いといえます。

この点で、シンガポールでの取り組みは参考になります。MICEという会議や学会のために来る外国人への対応です。基本のメニューをヴィーガン対応のものにすれば、世界中のほとんどの食の禁忌に対処できることをよく理解しているので、ベースをヴィーガン対応食にしています。肉や魚、乳製品など動物性の物は別コーナーに準備しておけば、食べたい人がそこへ行けばいいわけです。

MICEの受け入れに積極的な東京のある有名宴会場でも同様の取り組みをするようになりました。以前はムスリム用、ヴィーガン用を別々に準備していましたが、それではオペレーション的にも食材のコスト的にも厳しかったそうです。でも、ヴィーガン用のメニューを共通項にすることで、様々な文化に対応することができるようになりました。ヴィーガン対応のメニューは意外とシンプルで応用しやすいとも言えます。

まとめ

「食の多様性」(フードダイバーシティ)は手間がかかりすぎると考えられがちでした。でも「違いよりも共通点を見る」という考え方は、積極的な取り組み方につながります。考え方をシンプルにすると実現できることがたくさんありそうです。

最近では、多くの人が環境問題や自分自身の健康に関心を持つようになり、ベジタリアン、ヴィーガン食もさほど特別ではなくなりました。食べる食材を制限しますが、美味しいものを食べたいという願いは共通です。

世界中から外国人が再び日本を訪れる日に向けて、食の「多国籍化」に取り組んでみませんか?自分の食べたい美味しいものが食べられたら、日本での生活をもっと満喫してくれるはずです。同時に、外国人が日本での食を楽しめるように、多言語対応にも取り組んでみましょう。

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