観光地の外国語翻訳ー意味が通じるか見直そう(前編)

インバウンドが復活した今取り組みたい施策

はじめに

残念なことにコロナ禍で旅行の自由が制限されてしまいましたが、政府は2030年までに6000万人の外国人旅行者の受け入れを目標に掲げていました。

それに伴って、観光地の「多言語表記」された看板や案内が多く見られるようになりました。しかし、それらの外国語翻訳は本当に正確なのでしょうか?

今後も引き続き外国人旅行者が訪れますが、正確な多言語表記することは非常に重要です。そもそも誤訳であったり、意味が不明な文章であるなら非常に残念です。全く役に立たない案内表記では、多言語表記する意味がありません。

ここでは観光庁の資料をもとに、日本の文化・歴史などの観光資源をもっと訪日外国人に楽しんでもらえるよう、多言語翻訳を成功させるポイントを考えてゆきましょう。

参照:観光庁「HOW TO  多言語解説文整備」

デービットアトキンソン氏のコメント

デービット・アトキンソン氏は、 1965年イギリス生まれ、オックスフォード大学で日本学専攻、1990年来日、金融アナリストまた日本文化財の専門家です。2017年に「日本政府観光局(JNTO)」 の特別顧問として任命され、訪日外国人旅行者の誘致拡大のためのアドバイスをしており、日本のインバウンド業界に大きな影響を与えています。

デービッド・アトキンソン氏は日本在住が長く、日本の歴史・文化・自然・食に通じており、「外国人目線」で日本の魅力を分析しています。グローバルな視点で日本の観光業をどのように発展させてゆけばよいのか、アトキンソン氏のアドバイスはとても役立つものです。

アトキンソン氏は次のようにコメントしています。

「外国人観光客にとって、文化財や国立公園の自然などの日本特有の観光資源に触れることは大きな楽しみの一つです。しかし、観光地にある多くの解説看板は、元々日本人観光客向けに用意されていた日本語の文を翻訳しただけのもので、外国人にとっては分かりにくくなっています。さらに、外国人観光客には日本人にはすでにある日本の歴史や文化的な基礎知識がありません。その大前提に立って、背景知識がなくても理解できるように、分かりやすく丁寧に説明することが必要です。日本の文化や歴史を理解したうえで観光地を旅行して楽しんでもらえれば、外国人観光客の満足度も高まります。そして、日本から帰国した後も、色々な楽しみがあったことが口コミで広がり、更に新たな外国人観光客に来てもらう好循環に繋がります。」

このコメントからも、日本の観光業の発展のためには、外国人に意味が分かりやすい多言語翻訳を行うことが重要であることが分かります。

観光地の多言語翻訳の「課題」は何か

課題

観光地の多言語翻訳の課題として、以下のようなものが挙げられています。

 ⚫︎そもそも外国人旅行者向けの解説文が整備されていない
 ⚫︎解説文の正確性に問題がある
 ⚫︎多言語解説文を整備してから時間が経過している
 ⚫︎日本語解説文と比べ外国語の解説文が短く情報が少ない
 ⚫︎施設や人物の名称が同じ解説文の中で統一表記されていない
 ⚫︎看板の解説文が長すぎる
 ⚫︎外国人が興味を持つ内容となっていない

効果的な多言語解説文のニーズ

過去に実施されたアンケート調査では、観光地で解説文を読む外国人旅行者は93%とかなり高いことが分かっています。ですから、外国人旅行者が読みやすくて分かりやすい、そして魅力的な解説を作成することは必須です。そうすれば外国人旅行者の満足度は高まります。

また既に多言語解説文が整備されている観光地や施設であっても、その「質」を見直す必要があります。もし日本人向けに準備された解説文をそのまま多言語翻訳した場合や、機械翻訳をした文章では、外国人旅行者には「面白くない」「意味が分からない」ことが多々あります。もし誤訳であるなら、外国人旅行客を満足させることはできません。それで、翻訳文が正確であるか、外国人目線で書かれたものとなっているか、もう一度見直しが必要かもしれません。

改善した方が良いケース

観光地の案内表記や解説文において、改善が望まれるのは以下の6つのケースです。

1. 観光施設・対象物に「多言語解説文」がない

これはインバウンドの対応ができていないということです。解説文の多言語翻訳を早急に行いましょう。

2. 多言語解説文はあるのだが、事実と反する記載がある

 多言語解説文の内容が間違っているのであれば、すぐに改善を図りましょう。

3. 多言語解説文が、訪日外国人旅行者にとってストレスなく読めるものではない

日本語の解説文をそのまま直訳した外国語の文章では、不自然な表現であることが多いものです。すぐに改善しましょう。

4. 外国人にとって興味・関心のない情報ばかりである、または情報が不足している

施設の展示品や遺跡などを説明する解説文の場合、寸法や重量や製作された時代など、数字の情報だけの文章では全く面白味がありません。また、例えば「東京ドーム何個分」など日本人にしか分からない表現では伝わりません。専門用語ばかりが使用されていては、難しすぎて外国人は理解できません。外国人が楽しめることを目指しましょう。

5. 解説文として不適切と感じる内容である

例えば、執筆者の意見や感想などは観光地の解説文として相応しくありません。日本語では違和感がない「美しい景色」のような表現であっても、人それぞれ思うことや感じることは異なっています。主観的な説明ではなく「情報」を伝えるようにしましょう。

 6.その他

外国語の解説文自体に問題はなくても、フォントやデザインに違和感を感じさせてしまう場合もあります。例えば、日本語の文章の中に中国語の漢字の書体が使用されていると違和感を感じます。他の言語も同様です。使用するフォントにも注意を払いましょう。

まとめ

今回は、外国人旅行者が日本旅行を楽しみ満足してもらうために必要な「多言語表記」の改善点についてご説明しました。

再び「観光大国」として経済活性化を図るためにも、外国人観光客のニーズに合わせた正確で理解しやすい「多言語翻訳」が求められています。訪日外国人が日本旅行を最大限に楽しんでもらうために、日本全国で「多言語翻訳」の改善がなされることを期待しています。

後日「ストラテ」で掲載される「観光地の外国語翻訳ー意味が通じるか見直そう(後編)」もぜひご覧ください。

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