観光地の外国語翻訳ー意味が通じるか見直そう(後編)
はじめに
前編に続き、後編でも多言語翻訳の重要性を考えていきます。残念なことに、観光地での多言語翻訳には課題がまだまだ残されています。
例えば、
・最初に多言語翻訳をした時から時間が経過していて内容が更新されていない
・外国人が興味を持つ内容が盛り込めていない
などの問題があるかもしれません。
このような問題をどのように解決したら良いのでしょうか?どうしたら外国人が面白いと思ってもらえる解説文に翻訳することができるでしょうか?ここでは、観光庁が提案しているいくつかのポイントをご紹介いたします。
多言語翻訳の重要ポイントは?
多言語翻訳には、重要なポイントがあります。ここでは「訪日外国人旅行者に向けた解説文」を作成する際に役立つ情報をご紹介します。これらのポイントを意識すると、外国人観光客が理解しやすい翻訳となるでしょう。
Point ① 日本人と外国人旅行者の、日本文化についての知識や認識の違いを理解すること
日本人にはなじみ深い単語が、外国人には分からないことがあります。例えば「鳥居」「神社」「大名」などです。日本文化や宗教に関するもの、日本の歴史上の人物、伝統技術の技法などを表す用語は、外国人が理解できるように表現を調整する必要があります。
例1: 例えば「織田信長」「豊臣秀吉」「徳川家康」を単にローマ字表記しただけでは、外国人にとっては誰のことか分からないかもしれません。よほど日本の歴史が好きな外国人でないと、これらの人物を知らないことでしょう。歴史上の人物を紹介する際は、プロフィールやエピソードなど補足情報を記載することが必要となります。
例2: 日本人であれば「戦後」というと第二次世界大戦後を指しているということが分かりますが、この表現では外国人には分かりません。一体どの戦争の後のことなのか、その点を分かるように解説文を調整する必要があります。
Point ② 訪日外国人旅行者が感じる疑問点、興味・関心事を把握すること
日本人と訪日外国人では、疑問点や関心事が異なります。外国人旅行者(ターゲット)に焦点を合わせて、情報を提供しなければなりません。解説文はただ単に外国語に翻訳すればよいのではなく、外国人を満足させるという目的を達成しなければなりません。
伝えたい情報が外国人の興味を引くものとなるように、まず外国人の興味と関心の度合いを把握しましょう。その方法として、SNS や口コミサイトのユーザーコメントを参考にしたり、地域に住む在日本在住の外国人へのヒアリングをすることができます。
訪日外国人旅行者を対象にした解説文に対する満足度調査では、多くの人が日本で体験・体感できる文化に関心が高く、地域の行事やイベントにも参加したいと回答しています。外国人観光客は、日本の文化と歴史を良く知りたいと考えているようです。
Point ③ 媒体の種類と特徴を捉えること
媒体の長所と短所を理解し、目的にあった媒体を利用しましょう。大きく分けて、ウェブサイト・解説看板・パンフレットの3つの方法があります。
・ウェブサイトに解説文を載せるとき
旅行者は、旅行前にウェブサイトのホームページ、SNSなどで行きたい場所を探します。映えるスポットや食事は人気が高く、Instagramの検索欄とハッシュタグから目的地を探す人も多いようです。文章は短すぎず長すぎないことがポイントです。興味を持ってもらえるような魅力的な記事にしましょう。旅行地に関する全体像を把握できるように、できるだけ多く情報を発信しましょう。
・解説看板に解説文を載せるとき
外国人旅行者が観光地を訪れたら、まずは解説看板を見て内容を把握するでしょう。解説文の長さは、あまり長いものはふさわしくありません。簡潔に要点がまとめられた解説文にしておきましょう。解説看板の文字数は、100〜 250wordが適切な目安です。
満足度調査の結果によると、欧米人が現地の解説看板を良く傾向を持ち、詳細な追加情報を望む声が多くあったとのことです。現地案内板を整備する際には、より詳細な情報を掲載することができるホームページ(QRコードを解説看板に付けることでリンクが可能なもの)や、パンフレットを準備することにより満足度がさらに向上することでしょう。
・パンフレットに解説文を載せるとき
お出かけモデルコースやちょっとした穴場スポット、チェックポイントやお土産ショップなどを記載すると良いでしょう。パンフレットは持ち歩きできますし、マップを見れば全体図がすぐに分かります。また、旅行をもっと楽しむことができるようにスタンプ欄やクイズなどを付けるのも面白いでしょう。
Point ④ 質の高い解説文作成のための専門人材を確保すること
高い専門性が求められる分野の翻訳スタッフは、実績を調査して慎重に判断しましょう。ライター(執筆・修正)・エディター(編集・推敲)・スタイルチェッカー・校正者(文字校正)・内容監修者(解説文の事実確認)など、多くの専門的人材が必要となります。
専門家に依頼することが重要!
良い解説文の作成フローとは?
多言語解説文の翻訳には、次のような手順を踏む必要があります。
ステップ1 作成体制の構築
ステップ2 整備対象の調整
ステップ3 観光資源の特徴や魅力の把握
ステップ4 整備対象物と作成方針の決定
ステップ5 解説文の執筆
ステップ6 編集・推敲
ステップ7 執筆内容の確認
ステップ8 提示された問題点への対応
ステップ9 文章が所定の文体・表現に沿っているかどうかの確認
ステップ10 最終的に原稿を確認
ステップ11 校了・納品
※詳しくは下記の図よりご確認ください。
まとめ
前編・後編にわたって、外国人に分かりやすく、質の高い多言語翻訳の重要性をお伝えしました。
ただ単に日本語から外国語に翻訳しただけでは、外国人の心に届く文章にはなりません。機械翻訳の精度が上がってきているとはいえ、正確さには限界があります。ぜひ「外国人目線」になって、面白いなと思ってもらえる多言語解説を目指していきましょう。
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