将来の発展が見込める中東EC

はじめに

世界中のEコマース市場が拡大を続けています。中東も同じです。しかし世界的にみると、まだまだ中東ECの占める割合は大きくはありません。ですが、中東EC市場は今後の可能性を大いに秘めています。成長スピードが速く、ビジネスターゲットとして注目すべき地域となっています。

ここでは、なぜ中東に注目できるのか、今後の見通しはどうかなど、中東EC事情について見てみることにしましょう。

中東のEコマースはどのくらい成長した?

米国シカゴの世界的経営コンサルティング会社A.T.カーニーによる調査結果を見てみましょう。GCC(湾岸協力会議)6カ国のEコマースの市場規模は、2015年に53億ドルだったのが、2020年には216億ドルと約4倍に拡大しています。グラフからも分かりますが、毎年大きく伸び続けています。2020年も、前年比で22.0%も増加しています。

国別で見ると成長が著しいのは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の2カ国です。

GCC諸国におけるEコマース市場規模の推移
出典:JETRO資料

なぜ今後の成長を期待できるのか?

若年層が多い

中東の多くの国では、若年層の人口増加が顕著です。中東・北アフリカ(MENA)地域の平均年齢は、なんと28.9歳です(2020年時点)。これほど若者層が多いので、インターネット・スマートフォン・SNS・Eコマースの利用は当然多くなります。中東では「Mコマース」と呼ばれるモバイルによる商取引が多く、Eコマース市場におけるMコマースの割合が63.4%も占めています。中東Eコマース市場は今後発展を続けていくと思われますが、それはモバイルの使用に慣れ親しんでいる若年層が多いということが理由のひとつです。

UAE ―アラブ首長国連邦

UAEの人口は約1,000万人、インターネット普及率は90%とほとんどの人が利用しています。Eコマース市場規模は、サウジアラビアに次ぎます。

大手小売企業がECサイトを展開していましたが、2019年にAmazonがSouq.comを買収することで最大規模のEコマースが誕生しました。現在Amazonに次ぐのはnoon.comで、コロナ禍の2020年3月に世界規模の「ドバイ・モール」と提携し、サイト内に「ドバイ・モール・バーチャルストア」を立ち上げ、好スタートを切っています。

UAEの人口の68%が、オンラインショッピングを利用しています。政府もキャッシュレス決済を推奨しており、近代化がどんどん進んでいます。新型コロナの流行は、キャッシュレス決済の増加に拍車をかけることとなりました。今やオンラインショッピング利用者の61%が、現金による代引きではなく、クレジットカードやデジタルウォレットなどキャッシュレス決済を利用しています。アラブ首長国連邦は、今後も近代化が進んでいくことでしょう。

サウジアラビア

サウジアラビアは、市場規模ではGCC諸国最大です。人口は3,500万人、97%とほとんどの人がインターネットを利用しています。高所得の人たちが約6割もいます。若年層が多いのでスマートフォン普及率も高く、生活に便利なさまざまなアプリも普及しています。

現地で人気のECサイトは、Amazonが所有しているHaraj.com.saやSouq.comがあります。Eコマースで一番人気が高いのはファッションで、その後に家電製品が人気です。

しかし、サウジアラビアは保守的な一面があり、オンラインで購入できる商品は限られています。また、オンラインショッピングの利用に懐疑的な人たちも多いようです。実際、クレジットカードを持っている人たちが多くありませんので、オンラインショッピングの支払いは代引きが主流となっています。しかしスマートフォンを使用する若年層が多いので、今後はこの傾向も徐々に変わっていくでしょう。

トルコ

トルコは若年層の人口が多く、クレジットカード利用者も多く、物流も発展しているため、EC市場が急成長しています。モバイル所有率も高いため、モバイル上のショッピングも活発に行われています。EC市場の成長の原動力となったのは、2011年に米国のeBayがギッティギディヨル(GittiGidiyor)を買収、2015年にドイツのデリバリー・ヒーローがイェメッキセペティ(Yemeksepeti)という出前宅配ポータルアプリを買収、2018年には中国アリババがファッション専門ECサイトのトレンドヨル(Trendyol)を買収したことが挙げられます。

日本ブランドに対するイメージは?

中東の人たちは日本製品を「品質が良い」「技術が高い」「信頼できる」と良いイメージを持っています。ソニー、無印良品、ユニクロなど、日本ブランドが好きな人たちも多くいます。電化製品、化粧品、日用品などのニーズが高いでしょう。オンラインショッピングに抵抗のない若年層に向けて効果的にPRをしていくなら、期待が持てるのではないでしょうか。

しかし、中東はすでに欧米や中国など世界の企業が参入している競争の厳しい市場です。いかに「JAPAN」ブランドを魅力的にPRしていくか、それが課題です。SNSやインターネットを使いこなしている若年層の心を掴むPRが必要といえます。

まとめ

中東EC市場は、今後の成長を見込める市場であることは間違いありません。中東各国の市場の特性を活かして、効果的にジャパンブランドが進出していくことを望んでいます。少しの情報をお伝えしましたが、お役に立てれば嬉しいです。

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