交通系ICカードで気軽に観光、「おもてなしクラウド事業」とは?

ガイド,プラットフォーム

外国人観光客へのサービス向上のため、総務省が推進してきた「おもてなしクラウド」事業が注目を集めています。外国人観光客が気軽に一人歩きできるようなサービスを提供するため、交通系ICカードやスマートフォンに個人情報を登録してもらい、言葉や習慣の壁があっても、入国手続きやホテルまでの移動、レストランでの注文やショッピングがスムーズにいくよう、官民が協力して実験を重ねてきました。自治体、企業、飲食店・ホテルなど、インバウンドサービスを提供する事業者にとっては、コスト面での負担が比較的少なくてすむため、関心が高まっています。

「おもてなしクラウド」とは?

IoT(モノのインターネット)やクラウドを活用し、インバウンドサービスを提供する事業者が連携して、2020年の東京オリンピックに向けて、外国人観光客が快適に滞在できるシステムを確立するものです。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000464450.pdf
総務省HP「IoT おもてなしクラウド事業について」

総務省が描くサービスのイメージは次の通りです。
1) 災害や緊急事態が起こったときに、災害情報、避難所情報、交通情報、避難経路などの情報を、デジタルサイネージやスマートフォンなどと連携させて、外国人観光客を安全に誘導します。
2) ホテルのチェックインや、公共スポーツ競技場や美術館、博物館の入退室管理をします。
3) 主な観光地やショッピングモールにおけるデジタルサイネージで、利用者の使用言語に応じた情報の提供をします。障害に応じたバリアフリーマップの提供や、ハラル情報の提供も含まれます。

「おもてなしクラウド」の実例

外国人観光客のショッピングの拡大を目指す、ジャパンショッピングツーリズム協会などは、東京の六本木・虎ノ門エリアで、実証事業を行いました。おもてなしクラウドとは、具体的に、どういったサービスなのでしょうか。

総務省の動画チャンネルで、サービスの流れを見てみましょう。

外国人観光客は、日本に到着後、アプリを使って「おもてなしクラウド」に情報を登録します。氏名、年齢、国籍、母国語、パスポート情報、食の禁忌などの情報です。どの情報を誰に提供するかは、利用者が選びます。ホテルにチェックインするときだけ、パスポート情報を提供する、といったことも可能です。

購入した交通系ICカードを自分のスマートフォンにかざして、自身の情報と紐づけします。カードには個人情報が記録されないため、セキュリティー面でも安心です。

ホテルに到着したら、フロントに設置されたICカードリーダーにICカードをかざします。パスポートを提示することなく、スムーズにチェックインできます。レストランでは、スタッフが、ICカードの登録内容で食の禁忌情報を把握できるため、外国人観光客は安心して食事ができます。免税店では、書類の作成が必要ですが、おもてなしクラウドを使えば、ICカードの提示だけでパスポート情報をお店に知らせることが可能なため、ストレスなくお買い物ができます。

美術館もチケットレス

日本観光の目的として、日本の美術を見たい、という外国人が増えてきました。東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで行われた、「新・北斎展」を見るだけのために来日した欧米の観光客もいます。

国立新美術館は、東京都、YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所などと協力して、チケットレス入場の実験を行いました。都営大江戸線の六本木駅と都庁前駅に、おもてなしクラウドと連動したサイネージを設置しました。利用者は、URL からダウンロードできる Android アプリ OPaaS.io 上で、自分の利用言語を登録します。おもてなしクラウドに登録した交通系 IC カードをかざすことで、自動的に表示言語が切り替わります。

おもてなしサイネージに交通系 IC カードをかざすと、自動的に表示言語が切り替わり、美術館の情報などを読むことができます。おもてなしクラウドのアカウントを展覧会チケットと紐付け、さらに「おもてなしサイネージ」上で事前に入場日時指定を行うことで、チケットレスで入場できる仕組みとなっていました。

実証事業の概要はこちら https://www.ubin.jp/press/pdf/UNL180219-01.pdf

課題は、ネット環境

総務省は、「2020年までに、訪日外国人の行動を支援するための仕組みを確立する」との目標を掲げました。官民の共同研究、実験は順調に進んでいるといえますが、課題も残っています。日本は、欧米・韓国などと比べて、無料Wi-Fiスポットが少なく、また、個人情報を登録することに抵抗がある利用者へ安全性のアピールも必要です。

旅行代理店や航空会社との連携を深め、利用者の登録を促進したり、2020年東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会が提供する情報と連携させたりするアイデアも検討されています。

おわりに

言葉や習慣の壁を、ICカードひとつでクリアする「おもてなしクラウド」は、インバウンドサービス提供者にとって、必須のプラットホームといえます。大規模な設備を必要としないため、コスト面での負担感が比較的軽く、売り上げアップが期待できます。メニューやイベント情報、店舗ホームページの多言語訳に取り組み、笑顔で毎日、多くの外国人観光客を迎えるおもてなし事業者が増える日も近いのではないでしょうか。

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