インバウンド対応で無料で利用できる多言語情報伝達ツール 最前線

ピクトグラム

観光庁(JNTO)のデータによれば、2019年の訪日外国人旅行客数は前年比2.2%増の3188万2100人でした。2020年は東京オリンピックが開催されるということもあってさらなる増加が期待されていました。しかし残念ながら新型コロナウィルスのパンデミックが起こったことでそれは叶いそうにありません。オリンピックは延期され、渡航制限や外出制限が実施され、自粛ムードの中で多くの事業者が悲鳴を上げています。

しかし、一部の地域で緊急事態宣言が解除されるなど、少しずつ収束の兆しが見え始めているのもまた事実です。いつか必ず来る「終息」を見越し、インバウンド施策の強化に向けて爪を研いでいる事業者も多いことでしょう。そこで今回は、インバウンド対応で無料利用が可能な多言語情報伝達ツールの最前線をご紹介します。

音声翻訳アプリ

VoiceTra

VoiceTraのWebサイトより引用

VoiceTraは国立の研究機関「NICT(情報通信研究機構)」が研究・開発している音声翻訳アプリ。アプリを起動してスマートフォンに向かって話しかけるだけで、翻訳したい言語に翻訳されて再生されます。翻訳アプリと言うよりは、通訳アプリと言ったほうが正確な表現かもしれません。

こういった通訳機能は他のアプリにもありますが、VoiceTraは他のアプリに比べて正確に日本語を認識・解析してくれるので誤認識が少なく、ストレスのない通訳が可能となっています。これは日本の研究機関が開発したアプリであることが大きな理由と言えるでしょう。

対応可能言語は31言語ですが、現状ではすべての言語に音声入力・出力が対応しているわけではないので注意が必要です。音声入力が可能なのは18言語、そのうち何語なのか自動判別が可能なのが8言語。音声出力が可能な言語は16言語となっています。

なお、VoiceTraは原則的に商用利用が許可されていないので注意しましょう。ただし、VoiceTraのホームページによると「商用利用のご相談は別途承りますので、当機構までご連絡ください」とのことなので、必ずしも許可されないわけではありません。また、VoiceTra技術を使った民間サービスの利用も進めているので、興味がある方は利用してみても良いでしょう。

Google翻訳

App StoreのWebサイトから引用

おそらく世界で最も有名な翻訳アプリ、それがGoogle翻訳です。なぜ、最も有名で、最も多くの国で使われているのか。それは、圧倒的な対応可能言語の多さに加え、他の翻訳アプリを凌駕する高精度の翻訳能力にあります。

機械翻訳と言うと「役に立たない」というイメージを持っていた方も多いのではないでしょうか。実際、数年前までは目も当てられないレベルの翻訳結果ばかりでした。しかし、そんな状況を一気に変えたのが何を隠そう「Google翻訳」なのです。

2016年、Googleは世界に先駆けてニューラルネットワーク技術(ディープラーニング技術)を翻訳エンジンに導入しました。これにより、劇的に翻訳精度を上げることに成功。それに続くように各翻訳サービスもニューラルネットワーク技術を組み込んでいきますが、検索エンジントップシェアを誇るGoogleの圧倒的な情報収集・解析能力の前には歯が立たず、それ以降翻訳サービス業界のトップを走り続けています。

オンラインでの翻訳の対応言語数は108言語に及び、オフライン状況下でも59言語の翻訳に対応。また、カメラを向けるだけで画面内に映ったテキストを瞬時に翻訳する「リアルタイムカメラ翻訳」では90言語、写真をアップロードして高精度に翻訳する「写真翻訳」では50言語、2か国語での会話をその場で翻訳する「会話翻訳」は43言語、キー入力の代わりに手書きで入力する「手書き翻訳」でも95言語に対応しています。

手軽で、翻訳精度が高く、機能も多い、と三拍子揃ったのがGoogle翻訳です。どのアプリを使えばいいかで迷ったときにはGoogle翻訳を選びましょう。

指差し会話ツール

指差し会話ツールとは、使用頻度の高い基本フレーズや分かりやすいイラストなどを記載したシートのようなツールです。

たとえば、飲食店なら、「アレルギーはありますか」や「お持ち帰りですか? 店内でお召し上がりですか?」など、利用頻度の多いフレーズを多言語化して記載したシートのようなものです。これを用意しておくことで、外国人の方が指差すだけで簡単に意思疎通ができるようになります。

指差し確認ツールは自作することも可能ですが、自作が難しいようであれば無料で公開されているものがあるので利用してみてください。

熊本県公式サイトから入手できる指差し会話ツール

まずご紹介するのは、熊本県の公式サイトが無料で配布している「指差し確認シート」です。英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語・タイ語に対応したシートがそれぞれ用意されています。対応言語が多く、且つ有用なフレーズが多く収録されているのでおすすめです。

日本政策金融公庫が作成した指差し会話ツール

日本政策金融公庫(JFC)が作成した「指差しコミュニケーションツール」もおすすめ。対応言語は英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語の3言語。熊本県が配布しているものと違ってタイ語に対応していないのがネックですが、もちろんこちらのツールにも利点があります。

こちらのツールは1セット内にすべての言語が収録されているので、言語ごとにツールを管理する必要がありません。1セットダウンロードするだけで多言語に対応できる汎用性が特徴です。

ピクトグラム

ピクトグラムとは一般的に「絵文字」「絵単語」などと呼ばれるもので、伝えたい情報をシンプルな図記号にして表したものです。わかりやすい例では、「非常口(EXIT)」の表示版に緑色で描かれた逃げる人の絵などが挙げられます。また、トイレの男女マークもピクトグラムの代表例です。

ピクトグラムは一目見ただけで瞬時に情報を得ることができるので、非常に効率の良い情報伝達ツールと言えます。しかし、ピクトグラムこれだけでは正確には情報を伝えられないので、多くの場合は同時に「非常口」などの説明文も表示されています。この説明文を多言語化することで、外国人にも理解しやすいピクトグラムにすることができます。

無料のピクトグラムは様々な機関や会社などが提供していますが、今回は東京都産業労働局が提供しているピクトグラムをご紹介します。こちらのページにアクセスし、(歩行者編)(鉄道等編)(観光施設・宿泊施設・飲食店編)のそれぞれの項目にある「資料編」のPDFをダウンロードしてください。ピクトグラムの一覧が掲載されています。

多言語コールセンター

多言語コールセンターは、お店の従業員が外国人旅行者との接客時において意思疎通が困難な場合に、コールセンターのオペレーターが間に入って通訳・翻訳してくれるサービスです。主に宿泊業者、飲食業者、小売業者などを対象にしています。

東京都多言語コールセンター

東京都では外国人旅行者との円滑なコミュニケーションを支援することを目的とし、24時間対応での多言語コールセンターサービスを無料で提供しています。対象は宿泊施設飲食店小売店の3つです。

対応言語については、電話による通訳サービスは英語・中国語・韓国語・タイ語・フランス語の5言語、メールによる翻訳サービスではドイツ語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・ロシア語・ベトナム語・インドネシア語の7言語に対応しています。

熊本県多言語コールセンター

熊本県でも24時間対応での多言語コールセンターサービスを無料で提供しています。対応言語は英語・韓国語・中国語(北京語)・タイ語・ベトナム語・インドネシア語・タガログ語・ネパール語・ポルトガル語・スペイン語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・ロシア語・マレー語の15言語です。なお、利用するためには事前の登録が必要なので注意しましょう。登録はこちらのPDFをダウンロードして行ってください。

その他のツール

最後に、これまでご紹介してきたもの以外に有用なツール・サービスをいくつかご紹介します。

トイレの使用方法に関する外国人観光客向け啓発ステッカー

近年訪日外国人旅行客の数が増えてきたことに伴い、問題となっているのがトイレの使用方法。たとえば、韓国ではトイレットペーパーを便器に流さず、ゴミ箱に捨てるシステムになっています。そのため、日本でも同じように捨ててしまう方がおり、トイレが汚れる原因となっています。

このような文化の違いによる混乱を起こさないために、京都市ではトイレの適切な使用方法に関するステッカーを無料で配布しています。

マナー啓発マンガ

福岡県では、さまざまなシュチュエーションにおけるマナーを分かりやすく紹介した4コマ漫画をPDF形式で公開しています。飲食店におけるルールや交通ルールなどの基本的なものから、神社でのマナーやトイレでのマナーなども紹介しています。対応言語は英語・韓国語・中国語(繁体字・簡体字)・タイ語の4言語です。

【JNTO提供】 旅館に関するQ&A

JNTOはWebサイト上で、英語と中国語(繁体字)で旅館に関する20の質問に答えたQ&Aを公開しています。youtubeでこの20の質問をまとめた動画が公開されているので、動画を使うことでより分かりやすく伝えるも可能です。

【JNTO提供】小売業の多言語対応の手引き

JNTOでは小売業の多言語対応の手引きと称して、接客コミュニケーション・店頭表示・商品情報など、さまざまなシチュエーションで使用できる無料ツールや事例などを提供しています。

中でも便利なのが接客用語・フレーズ検索です。検索窓に接客などで使用したい単語を検索することで、それに適した多言語フレーズを表示してくれます。例えば、「予約」で検索すると、11件の例文が表示されます。

まとめ

今回はインバウンド対応で無料利用できる多言語情報伝達ツールについてご紹介しました。コロナ禍によってインバウンドが大打撃を受けていますが、いつまでもこのような状況が続くわけではありません。いつか来る「その日」「アフターコロナ」に備え、虎視眈々と対策をしていきましょう。

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