ベトナムでキャッシュレス決済が急拡大-ベトナムにおける最新のモバイル決済事情とは?

ベトナム, 電子マネー

フィンテック 金融イメージ

ベトナムは東南アジアの中でも比較的キャッシュレスが遅れているというイメージが強い国でした。欧米諸国や隣国の中国や韓国と比較すると、日本はキャッシュレス後進国と言われていますが、これまで現金主義だったベトナムはもっと遅れているかもしれません。クレジットカードの普及率は低く(あるデータでは普及率は4.1%ともいわれる)、小さな商店も多いため、そもそもクレジットカードを使用できるお店も日本より限られています。

しかし、ベトナム政府が打ち出したキャッシュレス化計画やスマートフォンの普及により、日本のPayPayやLINE PayのようなQRコード決済サービスがベトナムでも急速に普及してきています。ハノイやホーチミンなどのベトナム都市部では、コンビニなどの店舗やレストラン、カフェなどにおいて、モバイルで支払いを行う人々の姿を見ることが多くなりました。

また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う封鎖を背景に、ベトナムではキャッシュレス決済の利用が急拡大しています。今回は、そんなベトナムにおけるキャッシュレス決済に関する近年の動向と変化を含め、最新のキャッシュレス事情についてレポートします。

ベトナムにおけるこれまでのキャッシュレス決済の状況

ベトナムではキャッシュレス決済が2006年に開始し、2008年からは電⼦決済が導入されました。さらにベトナム政府は、2016年から2020年にかけてキャッシュレス化計画を打ち出し、キャッシュレス化を推進しています。その計画では、現金払いの割合を90%から10%未満にするという目標が掲げられています。

ベトナム商工省のレポートによれば、ベトナムの人口9,000万人のうち、約50%がインターネットを利用しており、オンラインショッピングなどの電子商取引の成長がキャッシュレス化の拡大に繋がると見込まれていました。しかし、ベトナム中央経済研究所の2019年レポートによれば、ベトナムのキャッシュレス決済⽐率は全体の11.49%に留まっております。

これまでキャッシュレス決済が普及しにくかった理由

ベトナムでこれまでキャッシュレス決済が普及しにくかった理由として、以下の3点が考えられます。

1. 現金支払いにしか対応していない店舗が多い

一つ目の理由は、カードおよび電子マネーの支払システムが整備されていない中小企業が多く、現金支払いにしか対応していない店舗が多いということです。ベトナム人は、食料品や生活用品等の日用品を購入する際には、小規模の小売店舗を利用することが多いですが、このような小売店舗においては、POS (販売時点情報管理システム)や電子マネー用のスキャナは導入されておらず、現金のみの利用に限られる場合が非常に多いです。その結果、現金決済が増えます。

現金はベトナム人の生活に欠かせないものであり、ベトナムの実際に世の中に出回っている現金の量を表す「現金流通高」は他の国と比べると著しく高いです。2018年9月の紙幣の流通量は 1,026 兆 VND 超となっていて、これは平均でベトナム人1人あたり約1千万VND(約5万円)を現金で持っていることになります。

また、最近はキャッシュレス決済の環境は整って来てはいますが、一定金額以下の支払いにキャッシュレス決済が出来なかったり、レストラン等では昼食時の利用を断わられる場合があるため、現金を持ち歩く必要性があることも、キャッシュレス化が普及しにくい一因と考えられています。

2. オンラインショッピングに対する信頼性が低い

二つ目の理由は、電子商取引、オンラインショッピングに対する信頼性が低いことが挙げられます。

ベトナムの場合、購入前に商品を直接確認する慣習がありますが、オンラインショッピングではこれができません。購入後に製品に不具合が見つかったり、または偽造品である可能性があるのではないかと感じる消費者が多く、多くの消費者がオンラインショッピングに対して不安を感じていることも一因と考えられます。実際にベトナムでは、オンラインショッピングの利用に対する不安や不満の声が95%以上と非常に高いのが現状です。

3. クレジットカードの普及率が低い

三つ目の理由は、クレジットカードの普及率が低いことです。

これはベトナムの現金事情に関係します。ベトナムでは、インフレの為、高額の商品を買う為にはたくさんの現金が必要です。 しかし、現金をたくさん持ち歩くことは、不便で危険でもあります。そこで、キャッシュレス決済の方法としてクレジットカードがありますが、ベトナム人の銀行口座の所有率は低く、15歳以上のベトナム人のうち銀行口座を持っているのは約30%ほどです。クレジットカードを作るにはまず支払いのための銀行口座が必要です。また、それに加えて返済可能かの審査もあります。これがベトナムでのクレジットカードの普及率が低い原因です。そのため、クレジットカードの利用率はまだ低く、特に10万ドン(約460円)未満の日常取引においては約99%が現⾦決済となっています。さらに、クレジットカードを悪用する犯罪もあるので、人々は現金を好んで使っていました。

ベトナムでキャッシュレス決済が急拡大

最近、ベトナムで急激に普及しているのが、キャッシュレス決済の中でも特にモバイルコード(QRコード)決済です。日本でもPayPayやLine Payなど様々なQRコード決済事業社が登場しましたが、QRコード決済のメリットは主に、①現金を持ち歩く必要がない、②安全、③簡単です。大量の現金を持ち歩く必要がなく、クレジットカードのように番号を控えられる事もありません。何よりもピッと画面をかざすだけで支払いが済んでしまうので非常に便利です。

さらに、ベトナムでは人口の70%以上が35歳以下の若者です。それに加えて、世帯当たりの携帯電話加入者が100%を超えるなか、スマートフォンの普及率も約70%と高いため、QRコード決済のようなテクノロジーも受け入れられやすいのです。

新型コロナウイルスによる外出自粛

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う封鎖を背景に、多くの人がオンラインで買い物をするようになっており、ベトナムのキャッシュレス決済市場はさらに急成長しています。2020年4月20日のベトナム・ニュースの報道によれば、2020年1月下旬の旧正月から3月半ばにかけて、キャッシュレス決済の取引額は7割増加しました。

ホーチミン市人民委員会がレストランの閉店や企業活動や集会の一時的な自粛を要請して以来、多くの企業がオンラインショッピングや宅配サービスに注力しています。ル・バン・ビエット通りにある飲食店、トーチャ・ミルクティーショップの店員によると、デリバリー用アプリを使った注文はこの間に30%増加しました。ケンタッキー・フライド・チキンとロッテリアも、電話やウェブ、アプリで宅配を注文すると、カウンターでオーダーするよりも1万ドン(約45円)程度割安になるなどのサービスを開始しました。新型コロナウイルスによる外出自粛により、多くの人が大手配車サービスのGrab(グラブ)が展開するフードデリバーサービス、GrabFood(グラブ・フード)を利用しています。

また、シンガポールに拠点を置く電子商取引企業で、現在は中国の「アリババ」が運営している大手オンラインショッピングサイトLAZADA(ラザダ)によると、この1カ月で衛生商品の需要が激増しており、抗菌スプレーが160%以上、紙おしめやティッシュペーパーが60%、缶詰が50%の伸びを記録しているそうです。多くの消費者がオンラインで買い物や支払いをするようになるなど、感染の予防をきっかけに市民の生活スタイルが変化したことで、オンライン決済は600%の増加になるとの予想も出ています。

現金の利用を控える呼びかけ

ベトナム・ホーチミンの現地紙The Saigon Timesによると、2020年2月10日、ベトナム国家銀行(中央銀行)のダオ・ミン・トゥー副総裁が、商業銀行21行の代表者と行なった会議で、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、現金の使用を控え、オンライン決済を増やすようにとの異例の要請を行いました。紙幣や硬貨の現金は多くの人の手を渡ってやりとりをされるため、新型コロナウイルスを含む複数のウイルス感染のリスクが高まるからです。

こうしたなか、金融機関もさまざまな優遇措置を講じるなどして、キャッシュレス決済への移行を促しています。ベトナム国立銀行は、キャッシュレス決済の普及を進めるために、50万ドン(約2270円)より少ない小額の銀行間取引の料金は72%引きにするなど手数料を削減しています。他の民間銀行数行も、モバイルバンキング、インターネットバンキングの登録料、維持費不要を継続して顧客へキャッシュレス決済の利用を推奨しています。このような影響もあり、ベトナム国家決済会社(NAPAS)によると、50万ドン(約2270円)より少ない小額の銀行間取引の3月の件数は、前月より32%増加するなど、キャッシュレス化へのシフトが徐々に進んでいることをうかがわせています。

キャッシュレス決済の日

「キャッシュレス決済の日」ー6月16日は、ベトナムがキャッシュレス社会になることを目指して、キャッシュレス使用を促進するために提案されたイベントです。 このプログラムは、ベトナム国家銀行の指導とベトナムの金融機関の協賛のもと、ホーチミン市を中心に刊行されているベトナムの日刊新聞Tuổi Trẻ(トゥオイチェー)が主催しています。

当初6月16日の「キャッシュレス決済の日」は、人々にキャッシュレス決済の形態を紹介し、知ってもらうことが目的でしたが、のちに「キャッシュレス決済の日」は消費者のショッピング意欲を刺激する効果的なイベントになりました。

モバイル決済の利用用途

モバイルペイメント利用用途
ベトナムのモバイル決済の現状について【VIETJO LIFEコラム:データでわかるベトナム】より

市場調査会社Cimigoがハノイとホーチミンで実施したある調査では、電話料金のチャージ、送金、定期的な支払い、フードデリバリーやタクシー料金の支払いにキャッシュレス決済がよく使用されていることが分かっています。

ベトナムでよく使われているキャッシュレスサービスは?

ベトナムの経済誌「Nhịp cầu Đầu tư (ニップカウダウトゥ)」が開発者とユーザーを対象に実施し2019年7月に発表した2018年に最も人気があったベトナム国内の電子財布(eウォレット)ランキングでは、携帯電話による電子決済サービス(電子マネー)「MoMo(モモ)」が2年連続の1位に輝きました。

これは、普及度、認知度、金融機関との連携性、決済機能の容易さ、機能の安全性の5つの指標に基づいて開発者やユーザーが評価し、ランキング化したものです。

MoMo(モモ)の他には、Zalo Pay(ザロペイ)、Viettel Pay(ベトテルペイ)がベトナムを代表する電子ウォレットトップ3に選ばれました。このほかにもVNPAYやVinID、Grabウォレット(moca)、SamsungPayなど、約30を超える事業者がサービスを展開しています。

1. MoMo(モモ)

momo

MoMo(モモ)は、現在ベトナムで一番広く利用されているQRコード決済アプリです。MoMoは、ベトナム国家銀行から電子財布サービスを提供することを認可された最初の企業の1つです。

各種店舗での支払い、オンラインショッピングサイトでの支払い、各種公共料金の支払い、アプリ所有者間の送金、各種公共料金の支払い、提携している航空会社の航空券購入、携帯電話で使用するプリペイドSIMのチャージなど、なんでもできる便利なアプリです。

https://momo.vn

2. Zalo Pay(ザロペイ)

zalopay

Zalo Pay(ザロペイ)は、地場総合インターネットメディア運営会社VNGコーポレーション(VNG Corporation)のモバイル決済アプリで、MoMoと並び非常に人気の高いQRコード決済アプリです。

もともと、ベトナム人は日常的にZaloとFacebookのMessengerをよく使っていますが、家族や友達のような親しい関係の人との連絡にはこのZaloがよく使われています。日本で言えばLineのようなアプリですが、日本でLineがLine Payを始めたのと同じように、Zaloの付随機能としてZalo Payが出来ました。機能もMoMoとほぼ同じで、非常に利便性が高いです。

https://zalopay.vn/

3. ViettelPay(ベトテルペイ)

viettelpay

Viettel Pay(ベトテルペイ)は、ベトナムで最もシェアが高い携帯電話事業者である国防省傘下ベトナム軍隊工業通信グループ(ベトテル=Viettel)が始めたデジタル銀行サービス(モバイル送金決済)です。

Viettel Pay(ベトテルペイ)は、送金や電気、水道、学費などの支払い、乗車券購入、ホテル予約、オンラインショッピングなど、日常生活の幅広いニーズに応えることができるよう100以上の機能で構築された電子決済サービスで、毎日の支払い活動のほとんどがこのアプリで完結します。また、全国の小売店やスーパーマーケット、郵便局など約20万店舗で使用可能なほか、ユーザーは30行を超える国内銀行から必要な銀行のカードとリンクさせ、ベトテルペイのアカウントに入金し全国各地のベトテルペイ取扱店舗で現金を引き出すことができるサービスは、ATMに行かなくても現金が引き出せるので非常に人気があります。

https://viettelpay.vn/

ベトナムにおけるキャッシュレス決済拡大の今後の見通し

ベトナムではいまだに現金での決済が主流であり、キャッシュレス化はそこまで浸透していないのが現状ですが、モバイル決済は徐々に新しいトレンドになりつつあります。

QRコード、非接触型決済、非接触型決済、カード情報のデジタル化などのテクノロジーが増加しています。 特に、eコマースとデジタル経済省(産業貿易省)の統計によると、ベトナムは世界で最も高い電子決済の伸びを誇る国の1つであり、年間の伸び率は実に約35%にも上ります。また、キャッシュレス化の拡大は、現金を持ち歩く必要がないことから盗難の危険性を減らし、企業としても現金管理にかかるコストを削減出来るといったメリットがあります。

さらに今後ベトナムの地下鉄が開通したら、日本のSuica、PasmoなどのようなICカードが搭載されることが決まっており、電子マネーを使う需要がもっと高まると考えられています。

長崎県立大学東アジア研究所の河又貴洋氏は、「電子マネーを採用する場合、技術の進化と同時に、信頼形成に係る制度や商習慣、慣習が醸成される必要がある」と述べていますが、キャッシュレス決済をベトナム国内で広く浸透させるためには、国や行政機関が企業へのシステムの導入を支援し、国民に対しても積極的にキャッシュレスサービスの利用を促進することが求められるのではないでしょうか。

キャッシュレス決済を普及させるために、例えばVAT(Value Added Tax、付加価値税)を減らすなど、電子決済による直接的な利点を増やす必要もあるかもしれません。さらに、所得税などの政府サービスもキャッシュレス決済が可能になれば、ベトナムも電子政府への一歩を踏み出すことができることでしょう。

まとめ

ベトナムではクレジットカードの普及がまだ低いため、若者を中心にモバイル決済が非常に伸びています。小さな店舗や屋台のようなお店でも使えるところがどんどん増えてきています。新型コロナウイルスの影響もあり、ベトナムでキャッシュレス決済がさらに拡大しています。

多くのアプリはまだベトナム語にしか対応しておらず、外国人には難しいですが、携帯電話番号とクレジットカードもしくはベトナム現地の銀行口座がある人は使えますので、是非まだQRコード決済を使ったことない長期滞在者や居住者は利用してみて下さい。

今後、ベトナムでBtoCのビジネス展開をお考えの企業は、「キャッシュレス決済」対策がますます重要になってくると思われます。ストラテを運営している株式会社アットグローバルは、ベトナムのホーチミンに現地法人を構えておりますので、ベトナムへの進出をお考えの企業、現地でのマーケティングサポートを必要としている企業、ベトナムの市場調査を行いたい企業は、是非弊社株式会社アットグローバルにお声掛けください。

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