楽しみにしていた旅行や、大切な出張の当日。空港の電光掲示板に浮かぶ「欠航」の二文字を見た瞬間、頭が真っ白になる――そんな経験はありませんか?もしかすると今まさにその状況に直面している方もいらっしゃるかもしれません。
「今夜泊まる場所はどうしよう…?」 「予約していた現地のホテルや航空券のキャンセル料は誰が払うの?」 「急な出費は自己負担?それとも航空会社が補償してくれるの?」
次々と湧き上がる不安と疑問で、冷静な判断が難しくなるのも当然です。
ご安心ください。この記事では、そんな緊急事態に直面したあなたが、まず何をすべきか、そして経済的な負担を最小限に抑えるための全知識を、順を追って丁寧に解説します。まずは深呼吸をして、この記事を一つずつ確認していってください。
- 欠航時の初動対応方法
- 欠航理由別の補償有無の理解
- ホテル代負担と補償条件の理解
- 宿泊先確保とキャンセル手順
飛行機が欠航になった場合にホテルへの対応前にすべきステップ

突然の「欠航」の知らせに、頭が真っ白になってしまいますよね。特に初めての経験だと、何から手をつけていいか分からず、パニックになってしまうかもしれません。
でも、ご安心ください。やるべきことを一つひとつ順番に整理すれば、必ず落ち着いて、そして的確に対応できます。
ここでは、あなたが空港で最初に取るべき行動を、5つのステップに分けて解説します。
ステップ1:まずは「欠航理由」と「振替便の有無」を確認!
まず最初に行うべきは、正確な情報を得ることです。自分が乗るはずだった航空会社のカウンターに並ぶか、できればスマートフォンで航空会社の公式アプリやWebサイトを開いて、最新の運航状況を確認してください。
カウンターは長蛇の列になっていることが多いため、アプリやWebサイトの方が早く情報を得られる可能性があります。
ここで確認すべき大切なポイントは、以下の2つです。
- 欠航の理由(例:天候、機材トラブルなど)
- 振替便の有無(代わりの便が用意されているか)
特に「欠航理由」は、後のホテル代の補償を左右する最も重要な情報になりますので、必ず確認しましょう。
ステップ2:すぐに「振替便」を確保する
もし旅行を続ける予定であれば、できるだけ早く振替便を確保することが重要です。
なぜなら、欠航が決まった瞬間、同じ便に乗るはずだった乗客全員が、数少ない後続便の空席をめぐる競争を始める、と考えてください。カウンターやコールセンターが大変混雑する中で、空席はあっという間になくなっていきます。
そのため、カウンターの列に並びながら、同時にスマートフォンで航空会社のアプリやWebサイトを操作し、ご自身で振替手続きを進めるのが最も賢明で早い方法です。行動が早ければ早いほど、希望に近い便を確保できる可能性が高まります。
ステップ3:「払い戻し」の手続きをする(旅行を中止する場合)
振替便のスケジュールが合わない、あるいは旅行そのものを中止すると決めた場合は、航空券の払い戻し手続きを行いましょう。
航空会社側の判断で「欠航」となった便については、キャンセル料などの手数料が引かれることなく、支払った航空券代が全額戻ってきますので、ご安心ください。こちらもアプリやWebサイトから手続きできる場合がほとんどです。
ステップ4:「欠航・遅延証明書」を手に入れる
次にするべきは、「欠航・遅延証明書」を手に入れることで、非常に重要です。
というのもこの証明書は、「航空会社の都合で飛行機が飛ばなかった」という事実を公的に証明してくれるものだからです。元々予約していたホテルのキャンセル料を交渉したり、加入している旅行保険会社に費用を請求したりする際に、提出を求められます。
多くの航空会社では、公式サイトから簡単に発行・ダウンロードできます。スクリーンショットを撮ってスマートフォンに保存したり、PDFファイルをダウンロードしたりして、いつでもすぐに見せられるようにしておきましょう。
ステップ5:今夜の「ホテル」と元々の「予約」を手配・キャンセルする
ここまでの手続きで翌日の便が決まったら、次に行うべきは宿泊に関する手配です。まずは、今夜安心して休めるホテルを確保することが最優先です。
そしてもう一つ、忘れてはならないのが、元々予約していた旅行先のホテルやレンタカーへのキャンセル連絡です。連絡を怠ると、利用しなくても料金を全額請求されてしまう(無断キャンセル扱い)可能性があります。ステップ4で取得した「欠航証明書」が、ここでも役立つはずです。
これらの具体的なホテルの探し方や、費用負担の詳細については、この後の章で詳しく解説していきます。
欠航理由別の対応方法と補償の違い

「ホテル代は補償されるの?」という最大の疑問は、「なぜ飛行機が欠航したのか」という理由によって結論がほぼ決まります。 ここを理解することが、全ての基本です。
欠航理由による補償の違いを理解する
欠航の理由は、大きく分けて2つに分類されます。
① 機材トラブル・運営上の理由による欠航(=航空会社都合)
飛行機の整備不良や、乗務員の手配がつかないといった、航空会社側に原因があるケースです。この場合、航空会社は乗客を目的地まで運送する契約を果たせなかった責任を負うため、ホテル代などの補償を受けられる可能性が非常に高くなります。
② 天候による欠航(台風・大雪など)(=不可抗力)
台風、大雪、火山噴火といった自然現象が原因のケースです。これは誰の責任でもない「不可抗力」とみなされます。航空会社も安全を最優先して欠航を判断するため、この場合、航空券の振替や払い戻しには応じてもらえますが、それによって発生したホテル代や交通費は、原則として旅行者の自己負担となります。
航空券キャンセル時の注意点と損をしないコツ
ここで一つ、非常に重要な注意点があります。それは「自己判断でキャンセルしない」ということです。
- 航空会社による「欠航決定」後のキャンセルの場合:手数料なしで全額払い戻しや、手数料なしでの便の振替が可能です。
- 「欠航しそう」という自己判断でのキャンセルの場合:天気予報を見て「明日の便はたぶん欠航するだろう」と予測し、航空会社が公式に欠航を発表する前にキャンセル手続きをしてしまうと、これは「自己都合のキャンセル」と見なされます。その結果、規定通りのキャンセル料が発生してしまいます。必ず、航空会社からの正式な発表を待ってから行動しましょう。
欠航によるホテル代の扱いと補償の有無
お金の話を具体的に整理していきましょう。「元々予約していたホテルのキャンセル料」と「急遽泊まることになったホテルの宿泊費」、この2つは分けて考える必要があります。
予約していた「旅行先のホテル」キャンセル料は?
飛行機が飛ばないため、今夜泊まるはずだった旅行先のホテルにたどり着けない。この場合のキャンセル料はどうなるのでしょうか。
パッケージツアーの場合
航空券とホテルをセットで申し込んでいる場合は、まず予約した旅行代理店(JTB、HISなど)に連絡してください。ツアー自体が催行中止と判断されれば、旅行代金が全額返金されるケースがほとんどです。個別にホテルへ連絡する必要はありません。
個人で手配した場合
すぐにホテルへ直接電話し、「搭乗予定の飛行機が欠航になったため、そちらへ向かうことができなくなった」と事情を説明しましょう。その際、先ほど取得した「欠航証明書」の提示を求められることがあります。
正直に事情を話すことで、不可抗力と判断され、キャンセル料を免除または減額してくれるホテルは少なくありません。無断キャンセル(ノーショー)だけは絶対に避けましょう。
急に必要になったホテル宿泊費は誰が負担する?
これが最も切実な問題です。結論は、先ほどの「欠航理由」に直結します。
① 航空会社による負担(航空会社都合の場合)
機材トラブルなどが理由で欠航した場合、大手航空会社(ANA・JAL)は、乗客の負担を軽減するための補償規定を設けています。これは「一次情報」として非常に重要なので、公式サイトの情報を基に正確に理解しておきましょう。
航空会社 | 公式URL | 対象 | 補償内容 | 上限額 | 手続き | 注意点 |
ANA | 機材故障などが理由の振り替えに伴う諸費用のご案内 ・諸費用のご精算方法(申請・立替・領収書・申請期限詳細) | ・ANAが原因の遅延・欠航により翌日以降到着となり、宿泊が必要な場合 | 宿泊費、および目的地までの交通費 | 15,000円まで | 乗客が立て替え、後日精算。領収書必須。予約便出発予定日から30日以内に手続き | 悪天候などANAの責任外の場合は対象外 |
JAL | 遅延・欠航で宿泊費や交通費が発生した場合の補償案内 ・予約便が遅延・欠航になり宿泊費や交通費が発生した場合 | ・JALが原因の遅延・欠航で代替交通手段がなく宿泊が必要な場合 | 宿泊費、宿泊施設と空港間の交通費 | (明記なし) | 原則JALが宿泊施設を手配。困難な場合は乗客が立て替え、後日精算。領収書必須 | 悪天候など不可抗力の場合は対象外 |
このように、航空会社都合で、かつ大手航空会社であれば、上限付きで補償される可能性が高いと覚えておきましょう。
② 自己負担の場合の注意点(天候理由・LCCの場合)
残念ながら、旅行者が遭遇する欠航の多くは「天候理由」であり、この場合は自己負担となります。また、LCC(格安航空会社)は、その運賃の安さから、規約で機材トラブル時でも宿泊費などの補償は行わないと定めていることがほとんどです。
大手旅行会社のHISやJTBの案内でも、「悪天候など不可抗力による欠航に伴う宿泊費は、原則お客様のご負担となります」と明記されているのが実情です。
では、自己負担をカバーする方法はないのでしょうか?
③自己負担をカバーする方法
ホテル代・食事代の自己負担をカバーしてくれる可能性があるものは、以下の2つになります。
保険の活用:国内旅行保険の「航空機遅延費用補償」
もしあなたが事前に国内旅行保険に加入していて、その契約に「航空機遅延費用補償(特約)」が付いていれば、話は変わります。これは、航空機の遅延や欠航によって発生した宿泊費や食事代などを、保険金でカバーしてくれるものです。補償額は1万〜2万円程度が一般的です。
クレジットカード付帯保険の確認
見落としがちなのが、クレジットカードに付帯している保険です。特にゴールドカード以上の場合、この「航空機遅延費用保険」が自動で付帯していることがあります。旅行前に保険に入っていなくても、このおかげで助かるケースは少なくありません。
ただし、ほとんどのクレジットカードは、そのクレジットカードで飛行機代やホテル代を予約していた場合のみ補償対象とする傾向があります。一度、ご自身のカード会社のWebサイトで補償内容を確認してみることをお勧めします。
飛行機が欠航になった場合にホテルを探す具体的な方法

自己負担でホテルを探さなければならなくなった場合、時間は待ってくれません。欠航が決まると、同じ状況の乗客が一斉にホテルを探し始めるため、空港周辺のホテルは瞬く間に満室になります。
今すぐホテルを予約しよう!
ホテル側の視点から見ると、欠航発生後は電話が鳴り止まず、オンライン予約サイトもすごい勢いで埋まっていきます。カウンターで航空会社の対応を待っている間に、スマートフォンで周辺ホテルの予約を進めるくらいのスピード感が求められます。
探し方の具体的な手順
【最優先】空港直結・隣接ホテルを検索
羽田空港の「羽田エクセルホテル東急」や、成田空港の「ナインアワーズ成田空港」など。移動が最も楽ですが、競争率も高いです。
【次に】空港アクセス線の主要駅周辺を検索
- 羽田空港なら「品川駅」「蒲田駅」「天空橋駅」周辺
- 成田空港なら「京成成田駅」「JR成田駅」周辺
【最終手段】ホテル予約サイト・アプリを活用
「アゴダ
」や「Booking.com」などで、「近くのホテル」として地図検索をかけ、空室があるエリアに移動することも考えましょう。深夜のチェックインに対応しているかどうかも重要な確認ポイントです。
10年以上昔の筆者の実話です。イタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港からパリのシャルル・ド・ゴール国際空港、そしてそこからマレーシアのクアラルンプール国際空港に飛行機で移動する予定でした。
ローマからパリは、独自手配したチケット、そしてパリからクアラルンプールはマイルを使用した特典航空券で予約していました。ところが、当時のアリタリア航空でストが起き、飛行機が全面停止。空港はカオスでした。
もしパリ行の飛行機が欠航すれば、その後のチケットも無駄になるかもしれないと思い焦ったことを覚えています。結果としては、アリタリア航空がエアフランス航空のチケットに振り替えてくれていたおかげで事なきを得ました。
特典航空券は、連絡さえすれば、振替をお願いできたかもしれませんが、当時はスマホもなく、ノートPCを広げて空港内のWi-Fiを探し回る状況でした。旅行の計画を立てる時には、そうしたケースも想定しておきたいものです。
飛行機が欠航になった場合のホテルに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 航空券の振替は無料とのことですが、それによって発生した宿泊費は自己負担になるのでしょうか?
A1. その認識は、多くの場合で正しいです。日本の国内線で最も多い欠航理由は台風や雪などの「天候」です。この場合、航空券は無料で変更してくれますが、それ以外の費用(ホテル代、食事代)は自己負担が原則です。
Q2. 航空会社から宿泊先を手配すると案内されましたが、満室でした。この場合、どのように対応すればよいですか?
A2. 航空会社都合の欠航時、航空会社が用意した提携ホテルが満室になることもあります。その場合は、「上限〇〇円までならご自身で手配いただいて結構です。領収書を必ず保管してください」と案内されることがほとんどです。案内された上限金額と、領収書が必須である点を必ず確認しましょう。
Q3. LCCが欠航した場合、どのような補償が受けられるのでしょうか?
A3. 航空券の払い戻し、または自社便への振替まで対応してくれます。しかし、それによって生じた宿泊費や他社便への振替費用などを補償してくれることは、規約上ほぼありません。運賃が安い分、そうしたリスクは利用者が負うというのが基本的な考え方です。
Q4. 国内線の欠航で、その先の国際線に乗り継げなくなりました。この場合のホテル代やチケットはどうなりますか?
A4. 航空券の買い方で対応が全く異なります。国内線・国際線を一連の旅程(通し)で予約した場合、航空会社が振替便や宿泊先を手配してくれる可能性が高いです。しかし、LCCと大手航空会社のように個別に予約した場合、乗り継ぎは自己責任となり、ホテル代や乗り遅れた航空券は自己負担となるリスクがあります。
Q5. 航空会社が手配してくれるホテルは選べますか?食事代なども出ますか?
A5. 航空会社が手配するホテルを乗客が選ぶことはできません。満室時は、上限額を示され、自身で手配するよう案内される場合があります。食事代は補償対象外が多いですが、空港とホテル間の交通費は宿泊費と合わせて補償されるのが一般的です。
Q6. ホテルに欠航証明書を提示してもキャンセル料を請求された場合、どのように対応すればよいですか?
A6. 欠航証明書にキャンセル料を強制的に免除させる効力はありません。交渉しても応じてもらえない場合は一度支払い、「キャンセル料」と明記された領収書を受け取ってください。その上で、加入している旅行保険やクレジットカードの保険会社に請求できるか相談しましょう。
Q7. 家族旅行で欠航になりました。宿泊費の補償は1部屋分ですか?人数分ですか?
A7. 補償は「1部屋あたり」ではなく「1名あたり」の上限額で設定されるのが基本です。例えば上限15,000円なら3人グループで合計45,000円まで、となります。この範囲なら複数部屋の予約も可能です。ただし、詳細は必ずその場で航空会社の係員にご確認ください。
Q8. ペット同伴で欠航になりました。ペットホテル代は補償されますか?
A8. 残念ながら、ペットホテル代が補償されることは極めて稀です。航空会社や一般的な旅行保険の補償は、あくまで搭乗者本人を対象としています。基本的には自己負担とお考えください。
飛行機が欠航になった場合のホテルまとめ
- 欠航時はまず理由と振替便の有無を公式情報で確認すること
- 振替便が必要ならアプリやWebで早急に確保すること
- 旅行を中止する場合は手数料なしで払い戻し手続きを行うこと
- 欠航・遅延証明書を必ず取得し保険やホテル交渉に備えること
- 航空会社都合の欠航なら宿泊費補償が受けられる可能性が高いこと
- 天候理由やLCCの場合は宿泊費が原則自己負担となること
- 保険やクレジットカード付帯の航空機遅延補償を確認すること
- 空港直結ホテルや予約サイトを使い迅速に宿泊先を確保すること
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