太平洋商事株式会社は、2026年5月24日より渋谷センター街にて、インバウンド送客特化型物産展「All JAPAN in shibuya」を開催することを発表しました。1日約4万人の訪日外国人が行き交うこのエリアを活用し、「売って終わり」の物産展から「現地へ誘う」プロモーションへと発想を転換する取り組みです。
日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、2025年の訪日外客数は約4,268万人と過去最高を記録し、インバウンド市場は急拡大を続けています。一方で、訪日客の多くが東京・大阪・京都といったゴールデンルートに集中し、地方への送客が長年の課題となってきました。
今回の「All JAPAN in shibuya」は、まさにこの課題に正面から挑む企画です。しかし、外国人観光客に「地方の魅力」を伝え、実際の来訪行動につなげるためには、単なる物産展の枠を超えた言語・文化的なコミュニケーション設計が不可欠です。本記事では、このプレスリリースを入口に、インバウンド送客を成功させるための多言語戦略について考察します。
「購入」を「旅のきっかけ」に変える発想とは
従来の物産展は、その場で商品を購入してもらうことがゴールでした。しかし「All JAPAN in shibuya」では、購入体験を起点に、その土地への興味を喚起し、実際の訪問につなげるという新しい動線設計を導入しています。
この発想は、マーケティングの世界で言う「カスタマージャーニー」の考え方に近いものです。渋谷で地方の特産品に出会う→その土地のストーリーを知る→「行ってみたい」という気持ちが芽生える→実際に旅行を計画する。この一連の流れを設計することで、単発の消費を継続的な関係性へと転換させることができます。
ただし、この動線を機能させるためには、外国人観光客が「理解できる言葉」で情報を届けなければなりません。どれほど魅力的な地域であっても、その魅力が伝わらなければ、旅の候補地として認識されることすらないのです。
インバウンド送客における「言語の壁」の実態
商品説明だけでは伝わらない「土地の物語」
物産展で扱われる地方特産品には、それぞれの土地ならではの歴史や文化、作り手の想いが込められています。しかし、これらの「物語」を外国人に伝えることは、想像以上に難しい作業です。
たとえば、ある地方の伝統工芸品を紹介する際、「300年の歴史を持つ○○焼」という説明を単純に英訳しても、その価値は十分に伝わりません。なぜ300年も続いてきたのか、どのような技術や美意識が継承されてきたのか——こうした背景情報を、外国人にとって理解しやすい文脈で伝える必要があります。
さらに、日本特有の美意識や概念を翻訳することの難しさもあります。「侘び寂び」「手仕事の温もり」「旬を味わう」といった表現は、直訳では意図が伝わりにくく、文化的な「翻訳」が求められるのです。
観光情報の多言語化で見落としがちなポイント
地方送客を目指すイベントでは、当然ながら観光情報の発信も重要な要素となります。しかし、多くの自治体や観光協会が作成する多言語パンフレットには、いくつかの共通した課題が見られます。
第一に、情報の優先順位が日本人目線のままになっているケースです。外国人観光客が知りたい情報(アクセス方法、所要時間、Wi-Fi環境、クレジットカード対応など)と、日本側が伝えたい情報(歴史的背景、地元の誇り)には、しばしばズレがあります。
第二に、言語ごとの読者特性が考慮されていない点です。英語圏、中国語圏、韓国語圏など、言語によって旅行スタイルや関心事は異なります。すべての言語で同じ内容を翻訳するのではなく、ターゲットに合わせた情報設計が効果を高めます。
テストマーケティングの場としての可能性
プレスリリースでは、本イベントが「訪日外国人にどのような商品が好まれるのかを検証できるテストマーケティングの場」としても機能すると述べられています。この点は、地方の事業者にとって非常に重要な意味を持ちます。
リアルな反応から得られる「言葉にならないフィードバック」
ECサイトのデータ分析では、購入に至った理由は把握できても、購入に至らなかった理由を知ることは困難です。一方、対面販売の現場では、外国人客の表情、質問の内容、迷いのポイントなど、数値化しにくい情報を直接観察できます。
「この商品の説明が理解されていないようだ」「価格表示の仕方が分かりにくいらしい」「パッケージデザインに興味を示す人が多い」——こうした気づきは、その後の海外展開における多言語戦略の貴重なヒントになります。
「売れる翻訳」と「売れない翻訳」の差
同じ商品でも、説明の仕方によって外国人客の反応は大きく変わります。テストマーケティングの場では、複数の翻訳パターンを試し、どの表現がより効果的かを検証することも可能です。
アットグローバルがこれまで支援してきた事例でも、商品コピーの翻訳を改善しただけで、海外向けECの売上が大幅に向上したケースがあります。翻訳は単なるコストではなく、売上に直結する投資なのです。
地方と世界をつなぐ「言語のハブ」という発想
今回の「All JAPAN in shibuya」のような取り組みは、渋谷という都市を「地方と世界をつなぐハブ」として位置づけるものです。この発想をさらに発展させるためには、言語面でのハブ機能も重要になってきます。
多言語対応は「おもてなし」の第一歩
訪日外国人が地方を訪れる際、最大の不安要素の一つが「言葉が通じるかどうか」です。観光庁の調査でも、外国人旅行者が旅行中に困ったこととして「施設等のスタッフとのコミュニケーション」が上位に挙げられています。
つまり、地方への送客を成功させるためには、「その地域に行っても大丈夫」という安心感を事前に与えることが重要です。多言語対応が充実していることは、外国人観光客にとって地方を訪れるハードルを下げる大きな要因となります。
自治体・地域事業者に求められる多言語戦略
インバウンド誘客を本気で進める自治体や地域事業者にとって、多言語対応は「あれば良い」ものではなく、戦略的に取り組むべき重要課題です。具体的には、以下のような観点が求められます。
1. ターゲット言語の選定:すべての言語に対応する必要はありません。自地域を訪れる(または訪れてほしい)外国人客の国籍・言語を分析し、優先順位をつけることが重要です。
2. 翻訳の品質管理:機械翻訳の精度は向上していますが、観光・地域PRの文脈では、文化的なニュアンスや地域の個性を伝える「ローカライゼーション」の視点が欠かせません。
3. 統一的なブランドボイスの確立:パンフレット、Webサイト、SNS、現地サインなど、さまざまな接点で一貫したトーンとメッセージを維持することで、地域のブランドイメージを強化できます。
まとめ:「伝わる言葉」が地方の未来を拓く
「All JAPAN in shibuya」は、渋谷という国際都市のポテンシャルを活かし、地方への送客を実現しようとする意欲的な取り組みです。しかし、この仕組みが真に機能するためには、外国人観光客の心に届く「言葉」の設計が不可欠です。
地方の魅力を世界に伝え、実際の来訪行動につなげる。その実現のためには、単なる翻訳を超えた、文化的背景を踏まえたコミュニケーション設計が求められます。翻訳・ローカライゼーションの専門企業として、アットグローバルは地域と世界をつなぐ「言語の橋渡し役」として、こうした取り組みを支援しています。
インバウンド対応、地方創生、海外展開——いずれの場面でも、「伝わる言葉」は成功の鍵を握っています。多言語戦略についてのご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考:【出展受付開始】1日4万人の訪日客が歩く渋谷センター街を”地方への玄関口”に 。インバウンド送客特化型物産展『All JAPAN in shibuya』開催決定|PR TIMES



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