ムスリムフレンドリー自治体や官公庁の受け入れ事例

インドネシア,マレーシア,ムスリム

国内のムスリムフレンドリー対応の事例として、「インバウンド関連施設編」、「大学・企業編」をご紹介しました。第3弾は「官公庁・自治体・団体編」です。

マレーシアやインドネシアをはじめとしたムスリムの多い東南アジアからの訪日旅行者数は年々増加しており、平成29年の訪日外国人旅行者数は、マレーシアからは前年比12%増の約44万人、インドネシアからは前年比30%増の35万人でした。今後も多くのムスリム訪日客が日本を訪れることが期待されます。

一方で、ムスリム旅行者の目線で旅行先国を評価した指標によると、日本の食事対応の充実度、礼拝スペースの充実度などの項目での評価は低く、ムスリム旅行者の規模も欧米や東アジアの国々と比較して少ないのが現状です。ムスリム旅行者の訪日に対する期待は「日本食を食べること」が最多ですが、「食べ物やその成分の表示が不十分であることに困っている」「食事ができるお店が少ないことに困っている」「礼拝できる場所が少ないことに困っている」「ムスリム対応を行っている施設の情報が不十分であることに困っている」といった声が数多く上がっています。

こうした現状を打破するため、内閣官房が音頭をとって推進する「観光戦略実行推進タスクフォース」は、今年5月に「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」を策定し、これまで以上にムスリム旅行者の受け入れ環境整備と訪日プロモーションを強化することを決めました。

受け入れ環境整備のポイントは、以下の4点です。
受け入れ環境整備に向けた知識啓発:セミナーやガイドブックの配布を通じて、基礎的な知識や実践的なノウハウの習得を支援する。
食事環境の整備:地域関係者が具体的な対応方法を学習する取り組み、特に和食や郷土食における対応強化を促進するため、調理手法の研究を支援する。食品産業事業者や飲食事業者の啓発に資するさまざまな情報を提供する。
礼拝環境の整備:交通の結節点や商業施設、飲食店において、礼拝スペースの設置を促進する。
ムスリム旅行者への情報提供:各地域でムスリム向けに提供している食事や礼拝などのサービス内容に関する情報を提供する。個別施設における簡潔かつ分かりやすい情報提供を促進する。

こうした流れを受けて、官公庁や全国の自治体、さまざまな団体がムスリムフレンドリーな対応の強化をさらに進めるようになりました。その中でも代表的な事例をご紹介します。

国土交通省 観光庁のムスリムフレンドリー対応事例

飲食店や宿泊施設等の受け入れ関係者が、ムスリム訪日客をスムーズに受け入れるために必要な情報をとりまとめたガイドブックを提供。
ムスリムおもてなしガイドブック概要
ムスリムおもてなしガイドブック(基礎知識編)
ムスリムおもてなしガイドブック(実践編)
ムスリムおもてなしガイドブック(付録)

農水水産省のムスリムフレンドリー対応事例

国内サービス事業者に対して、農林水産行政所轄官庁の立場から「ハラール」に関するさまざまな情報提供や支援を行っている。
「ハラール」に係る取り組み状況
ハラール食品輸出に向けた「手引き」

日本貿易振興機構(JETRO)のムスリムフレンドリー対応事例

国内サービス事業者に対する、調査情報やガイドブックといった形での情報提供を行っている。以下は一例。
【貿易・投資相談Q&A】ハラール認証の取得手続きハラールとハラール認証について(2015年9月25日)
主要国におけるハラール関連制度・市場動向~農林水産物・食品の輸出に向けて~

復興庁のムスリムフレンドリー対応事例

東北復興支援の一環として「新しい東北」交流拡大事業を推進中。合計11の事業が選出され実行中だが、「MUSLIM FRIENDLY TOHOKU」と題する取り組みが含まれている。事業内容は、東北主要都市・観光地のホテルにおいて、ハラール対応を取り入れるなど、ムスリム受け入れ拠点として整備するとともに、ムスリム旅行者向けの旅行商品を開発。

東京都のムスリムフレンドリー対応事例

ムスリムへの理解を深め、おもてなしの質を高めるための情報提供。ムスリム旅行者受け入れに役立つセミナー開催・アドバイザー派遣など
ムスリム旅行者おもてなしハンドブック 日本とイスラムをつなぐための3つのこと
※ ムスリム、食、礼拝、習慣・マナーに関する基礎知識、おもてなしのポイント、都内での取り組み事例、都内の礼拝所マップなど
ムスリム観光客受け入れ対応BOOK(事業者向け)
※ ムスリム対応会話集、ムスリム対応チェックkシート、都内礼拝場所一覧など
ムスリム旅行者受入対応施設紹介パンフレット「TOKYO MUSLIM Travelers’ Guide」(旅行者向け)
※ 飲食店、礼拝施設、宿泊施設、物販店などの各施設が提供可能なムスリム対応サービスをアイコンを用いて掲載。英語版。

東京都台東区のムスリムフレンドリー対応事例

「浅草」を要する東京都随一の観光地だけに、ムスリムフレンドリーに関してもさまざまな対応を行っている。
●「ムスリムおもてなしマップin台東区ver.10」を作成。
●「台東区ハラール認証取得助成事業」の実施。助成金額は助成対象経費の2文の1以内で、上限は10万円まで。
●「ムスリム対応アドバイザー」を区内の飲食店、観光施設、観光関連団体に派遣し、サポートを実施。

北海道観光振興機構のムスリムフレンドリー対応事例

ムスリムおもてなしガイド
※ ムスリム観光客のために「理解しておきたいこと」と、具体的な事例を通して「準備しておきたいこと」を知るための基本的な情報を紹介している。

宮城県のムスリムフレンドリー対応事例

● 平成28年度からハラール対応食普及促進事業を推進中。
● 事業者・旅行者に役立つガイドブックの作成と配布。
MUSLIM Travel Guide to MIYAGI Ver.2
※ ムスリム対応が可能な飲食店や宿泊施設など30施設を紹介。
ムスリム向けおもてなしレシピ Ver.2
※ ムスリム向け料理メニュー10メニューを紹介。
ムスリム向け食のおもてなしハンドブック(宿泊施設・飲食店のみなさまへ)
※ ハラール、ハラール認証といったものの基礎知識や食に関する基本対応などを紹介。
ムスリム向け食品製造・生産ハンドブック(食品製造事業者のみなさまへ)
※ ハラール、ハラール認証といったものの基礎知識や食品製造過程における注意点などを紹介。
● 県内の事業者を対象とした「ハラール対応セミナー」の開催。

埼玉県のムスリムフレンドリー対応事例

産学官が連携して、ムスリムが安心して使用できるハラール化粧品の開発やプロモーションの支援を行っている。
詳細はこちらを参照。

横浜市のムスリムフレンドリー対応事例

行政が旗を振り、ムスリムフレンドリー対応の強化を推進中。
● 世尾浜観光コンベンション・ビューローが、外国人旅行者向けの観光情報サイト「Yokohama Visitors’ Guide」内にムスリム旅行者向けのページを設置。
● 2013年度の観光庁の「訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備事業」に応募して採用されたことをきっかけに、ムスリムフレンドリーの取り組みが加速。横浜市は「ムスリム居住者等と連携したムスリム・フレンドリーな施設・サービスなどの情報収集と発信」をテーマに掲げてプロジェクトを立ち上げ、推進。
● 地元のムスリム留学生にムスリム対応ページのコンテンツ作りに貢献してもらったり、SNSを活用した情報発信に努めている。
● ムスリム向けの旅行モデルコースの立ち上げと情報提供。

愛知県のムスリムフレンドリー対応事例

●「AICHI NOW」というサイトの「MUSLIM INFORMATION(英語)」コーナーで、モスクやハラル対応のレストランといった県内施設の情報を発信している。
● 名古屋モスクと連携して「ムスリムフレンドリーガイド」を作成。平成30年の最新版は現在作成中。

岐阜県高山市のムスリムフレンドリー対応事例

高山市が推進するインバウンド誘客戦略についてはこちらを参照。
● 民間の飲食店や観光施設と連携し、ムスリムの食事や礼拝に関して必要な対応を学ぶセミナーを開催。
●「Muslim friendly project in Hida Takayama」というプロジェクトを推進中。Facebookでも情報を発信中。
● ムスリム旅行者が安心して食事ができる飲食店や、礼拝対応可能な施設などを掲載した「ムスリム旅行者向け市内散策マップ(英語)」を作成。
● 食材情報を表示するためのピクトグラムを市内飲食店で活用するように指導。ムスリム受け入れ可能店舗では、「ムスリムウェルカムマーク」を店頭に表示するよう指導。

京都府のムスリムフレンドリー対応事例

京都府が策定したムスリムインバウンド戦略(平成28年7月22日)はこちらを参照。
● 京都市内のムスリム対応施設を増強。
● 事業者向けのセミナーの開催。
ムスリム向け専用ホームページ(英語)の開設。
● ムスリム向けおみやげ開発の取り組み。
● イスラム圏への拠点設立(ドバイ)、インドネシアでの旅行博への出展、などによる交流推進。

大阪府のムスリムフレンドリー対応事例

●「ハラル&ムスリムフレンドリーマップ」を英語で作成・配布。※ 2018年8月17日現在更新中
● ムスリム向け 関西のレストラン・ホテル案内アプリの配布(株式会社C’s提供)。
● 祈祷室を関西空港や大阪駅・難波駅などに設置。
● ハラル認証済みのホテルのレストランの料理長を講師に迎えた「ハラル&ムスリムフレンドリーセミナー」を開催。

福岡市のムスリムフレンドリー対応事例

福岡市ムスリムフレンドリーレストランガイド」を発行。

沖縄県のムスリムフレンドリー対応事例

沖縄観光コンベンションビューローが運営する観光情報サイト「VISIT OKINAWA JAPAN」内に「Okinawa Information for Muslim(英語)」を開設して情報提供。
●「OKINAWAムスリム旅行者おもてなしハンドブック」を作成・配布。

石川県小松市のムスリムフレンドリー対応事例

ムスリムフレンドリーKOMATSU」を推進している。
※ ハラール認証を取得してもしていなくても、ムスリムの方に対してできる範囲で配慮・対応することを「ムスリム・フレンドリー」という。小松市では、各店舗がどこまで対応しているのかムスリム旅行者に分かりやすく開示するお手伝いをし、ムスリムの方のお店選びの支援に取り組んでいる。
●「ムスリムフレンドリーKOMATSU おもてなしガイド」を作成。
●「ムスリムフレンドリーKOMATSU宣言店」のリストを公開。

特定非営利活動法人インターナショクナルのムスリムフレンドリー対応事例

宗教上の戒律やベジタリアンにより「食べてはいけないもの」がある人や、食物アレルギーや健康上の理由により「食べられないもの」がある人でも安心して食事を楽しめるように、ユニバーサルデザインの食材表示の絵文字(フードピクト)を開発、提供している(フードピクト使用時のライセンス契約やコンサルティングなどは、株式会社フードピクトを通じて提供)。

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