アパホテルズ&リゾーツを展開するアパグループが、カナダ・アルバータ州カルガリーで新たなホテルを取得し、2026年7月1日に「COAST calgary university district hotel by APA」としてオープンすることを発表しました。同社にとってカルガリーでは2店舗目となり、北米における存在感をさらに高める一手といえます。
注目すべきは、単なる物件取得ではなく、「日本のおもてなし」を象徴する折り鶴やハイグレード・アメニティの全室設置、TOTO製ウォッシュレットの導入といった、日本品質を海外で再現する取り組みが計画されている点です。これはグローバル展開における「標準化」と「現地適応」の両立という、まさにローカライゼーション戦略そのものといえるでしょう。
翻訳・ローカライゼーションを専門とするアットグローバルは、ホテル・観光業界のグローバル展開を言語・文化の側面から支援してきました。本記事では、アパグループの北米戦略を入口に、ホテル業界の海外進出において「言語」と「文化」がいかに重要かを掘り下げていきます。
アパグループの北米戦略——10年間の軌跡と新中期計画
2015年からの着実な歩み
アパグループの海外展開は、2015年11月に米国ニュージャージー州イズリンで「APA HOTEL WOODBRIDGE」をフランチャイズ第一号としてオープンしたことに始まります。翌2016年9月には、カナダ・バンクーバーに本社を置くCoast Hotels Ltd.を買収。ミッドスケール・フルサービスのホテルチェーンとして北米に確固たるネットワークを持つ同社を傘下に収めることで、一気に展開力を手に入れました。
現在、Coast Hotelsはカナダ・米国で計53ホテル・5,254室を擁するネットワークに成長。2024年6月にはシアトルで米国所有第一号店を取得するなど、「所有」と「運営」の両輪で事業基盤を固めています。
「AIM5-Ⅱ」が描く2031年への道
2026年4月に始動した新中期5ヶ年計画「AIM5-Ⅱ」では、国内自社ブランド単独10万室、海外1万室という野心的な目標が掲げられています。海外戦略としては、当面Coast Hotelsを中心に北米エリアでの基盤強化を進めつつ、次期戦略エリアの模索も並行して行うとされています。
こうした大規模な海外展開において避けて通れないのが、ブランドアイデンティティをいかに維持しながら現地に根付かせるかという課題です。そしてその核心にあるのが「言語」と「文化」の問題なのです。
「おもてなし」は翻訳できるのか——ホテル海外展開の言語課題
折り鶴に込められた意味をどう伝えるか
今回のカルガリー新ホテルでは、「日本のおもてなしの心を象徴する折り鶴」を全客室に設置すると発表されています。日本人にとって折り鶴は「平和」「幸福」「心を込めた歓迎」といった意味を自然に想起させますが、北米の宿泊客にもその意図を正しく伝える必要があります。
折り鶴がただの紙細工として見過ごされてしまっては、せっかくの演出も効果を発揮しません。客室内の説明カードやウェブサイトで「なぜ折り鶴なのか」「どんな想いが込められているのか」を文化的文脈とともに伝える多言語コンテンツが必要です。
これは単純な「翻訳」では実現できません。日本語の「おもてなし」という概念自体、英語の”hospitality”とは微妙にニュアンスが異なります。「見返りを求めない心からの歓待」「相手の期待を先回りして察する配慮」といった日本特有の価値観を、異なる文化背景を持つ人々に響く言葉で「書き直す」作業が求められるのです。アットグローバルでは、こうした作業を「ローカライゼーション」と位置づけています。
現地スタッフへの「日本流サービス」の伝達
海外ホテルの運営において、もうひとつの大きな課題が現地スタッフへのサービス基準の伝達です。アパグループが日本で培ってきた接客ノウハウを北米の現場に浸透させるには、業務マニュアルや研修資料の翻訳が不可欠です。
しかし、日本語のマニュアルには「お客様の気持ちを察して」「状況に応じて柔軟に」といった表現を使うケースがありますこれを字義通りに英訳しても、文化的文脈のない現地スタッフには具体的な行動指針として機能しません。
たとえば「お客様が困っていそうなら声をかける」という指示。日本人スタッフなら「困っていそう」の判断基準を暗黙のうちに共有していますが、北米では「困っているなら自分から言うだろう」という文化的前提があります。どのような状況で、どのような言葉をかけるのか、具体的なシナリオに落とし込んだローカライズが必要なのです。
本部と現地のコミュニケーションギャップ
グローバル展開が進むと、日本本部と海外現地法人の間で日常的に英語でのやりとりが発生します。ブランド基準の確認、品質評価、経営報告——こうしたコミュニケーションにおいて、「ニュアンスのズレ」が思わぬ認識の齟齬を生むことがあります。
アパグループの場合、Coast Hotelsという北米ブランドを傘下に持ちつつ、「by APA」の冠をつけた店舗展開を行っています。このハイブリッドな形態では、Coast Hotelsの北米スタンダードとアパグループの日本流サービスをどう融合させるかという繊細なすり合わせが常に求められます。そこでは正確な翻訳だけでなく、双方の文化的前提を理解した「橋渡し」が重要になります。
北米ホテル市場の特性と多言語対応の実際
カナダ——公用語が2つある国の複雑さ
今回アパグループが進出するカナダは、英語とフランス語を公用語とする二言語国家です。特にケベック州ではフランス語が主要言語であり、連邦法により製品表示や消費者向け情報のフランス語併記が義務付けられている分野もあります。
ホテル業界においても、カナダ全土で事業展開するなら英仏両言語でのサービス提供が競争力に直結します。ウェブサイト、予約システム、館内案内、客室インフォメーション——あらゆる顧客接点で二言語対応を実現するには、体系的な翻訳・ローカライゼーション体制の構築が欠かせません。
多様な宿泊客への対応
カルガリーは、カナディアンロッキーの人気スポットであるバンフやレイクルイーズへの玄関口として、世界中から観光客が訪れる都市です。また、石油・天然ガス産業の中心地としてビジネス渡航者も多く、大学・病院・スポーツ施設を擁するエリアでは、国際会議や学術交流、スポーツ大会に伴う団体利用も見込まれます。
こうした多様な宿泊客に対応するには、英語・フランス語に加え、主要な観光客の出身国・地域の言語への対応も視野に入れる必要があります。中国語、スペイン語、ドイツ語など、優先すべき言語は立地や客層によって異なります。
アットグローバルが提供する「グローカル言語戦略」
アットグローバルは、翻訳・ローカライゼーションの専門会社として、「Global(世界基準)× Local(現地適応)」を両立させる言語戦略を提唱しています。ホテル・観光業界のグローバル展開においては、以下のような支援を行っています。
多言語コンテンツのローカライゼーション
ウェブサイト、予約システム、館内案内、メニュー、客室インフォメーション、緊急時対応マニュアルなど、ゲストが接するあらゆる情報の多言語化を支援します。単なる翻訳ではなく、ターゲット言語圏の文化・慣習・法規制を踏まえた「伝わるコンテンツ」への変換を行います。
社内コミュニケーションの翻訳・通訳
ブランドガイドライン、業務マニュアル、研修資料、契約書、報告書など、本部と現地法人をつなぐドキュメントの翻訳を担います。また、重要な会議や交渉における通訳サービスも提供。単に言葉を変換するだけでなく、双方の文化的前提を理解した「意図の橋渡し」を心がけています。
異文化理解を深めるCQ研修
CQ(Cultural Intelligence=文化知性)は、異なる文化的背景を持つ人々と効果的に協働するための能力を指します。アットグローバルでは、外国人スタッフの受け入れ研修や、海外赴任者向けの異文化適応研修などを通じて、言語スキルだけでは解決できない「文化の壁」を乗り越える支援を行っています。
まとめ——海外展開の成否を分ける「言語戦略」
アパグループのカルガリー進出は、日本のホテルチェーンが「日本品質」を武器に海外市場で存在感を示す好例といえます。折り鶴やウォッシュレットといった「日本らしさ」の導入は、差別化戦略として理にかなっています。
アットグローバルは、翻訳・ローカライゼーション・異文化コミュニケーションの専門家として、グローバル展開を目指す企業の「言葉の壁」を越えるお手伝いをしています。海外進出における多言語対応、社内コミュニケーションの翻訳、異文化研修など、お気軽にご相談ください。



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