大分県別府市を拠点とする株式会社SEKIYA RESORTが、2026年6月6日より、ホテルコンドミニアム「Rock & Steam」の第1期分譲販売予約受付を開始しました。全室に半露天風呂を備え、温泉・サウナ・アートが融合する新たな滞在体験を提供するこのプロジェクトは、「宿泊する場所」から「所有する場所」へという価値転換を提案しています。
参考:【株式会社関屋リゾート】 【SEKIYA RESORT】別府でホテルを所有する新たな選択肢『Rock & Steam』第1期分譲販売予約受付開始(PR TIMES)
九州本土ではまだ事例が限られるというホテルコンドミニアム。オーナー自身が利用できるだけでなく、不在時には宿泊施設として運営され、収益の一部が分配される仕組みは、別府という温泉地との「継続的なつながり」を育む新しいライフスタイルとして注目されています。
しかし、こうした「所有する旅」のモデルが成功するためには、国内外の富裕層オーナーや多様な宿泊客との多言語コミュニケーションが不可欠です。本記事では、SEKIYA RESORTの取り組みを入口に、地方リゾートが直面する言語・文化の課題と、その解決策について考察します。
「所有する旅」が求める新たなコミュニケーション設計
ホテルコンドミニアムというビジネスモデルは、従来の宿泊業とは異なる顧客層を対象とします。一般的なホテル宿泊客は「数日間の滞在者」ですが、コンドミニアムのオーナーは「長期的なパートナー」です。この関係性の違いは、求められるコミュニケーションの質と量を大きく変えます。
海外オーナーとの継続的な関係構築
Rock & Steamのような温泉リゾートのコンドミニアムは、アジア圏の富裕層や欧米のウェルネス志向の投資家にとって魅力的な選択肢となり得ます。海外オーナーを獲得するためには、分譲販売資料、契約書類、管理規約、運営レポートなど、膨大な文書の多言語対応が必要です。
特に不動産取引に関わる文書は、法的な正確性と文化的な配慮の両方が求められます。日本の不動産慣行や温泉地特有の規制(温泉法、景観条例など)を、海外の投資家にも理解できる形で説明する必要があるのです。単なる翻訳ではなく、相手の文化的背景を踏まえた「説明的な翻訳」が求められる場面です。
オーナー専用サービスの多言語化
ホテルコンドミニアムでは、オーナー専用のコンシェルジュサービスや、定期的な運営状況の報告が一般的です。これらのサービスを海外オーナーにも同等の品質で提供するためには、リアルタイムのコミュニケーション体制が必要になります。
「今月の稼働率は〇〇%でした」という報告を英語で伝えることは簡単ですが、「なぜその数字になったのか」「今後どのような改善策を考えているのか」といった文脈を、文化的なニュアンスを含めて伝えることは、機械翻訳だけでは難しい領域です。
温泉文化を世界に伝える難しさ
別府は「世界有数の温泉地」として知られ、豊富な温泉資源に加え、地獄めぐりや湯けむりの景観など、独自の温泉文化を有しています。Rock & Steamが目指す「温泉・サウナ・アートの融合」は、この別府らしさを現代的に再解釈した滞在体験といえるでしょう。
「温泉の入り方」から始まる異文化コミュニケーション
しかし、日本の温泉文化を外国人に伝えることは、想像以上に難しい作業です。観光庁が推進する「温泉エチケット」の普及活動でも指摘されているように、「裸で入浴する」「かけ湯をしてから入る」「タオルを湯船に入れない」といった基本的なマナーは、多くの外国人にとって未知の文化です。
Rock & Steamのように全室に半露天風呂を備える施設では、客室内の案内表示や利用ガイドが重要な役割を果たします。ここで求められるのは、単にルールを列挙するのではなく、「なぜそのようなマナーが大切にされているのか」という文化的背景を伝えることです。
たとえば「かけ湯」について、英語で「Please rinse your body before entering」と書くだけでは、その行為の意味は伝わりません。「日本では、湯船のお湯は皆で共有するものとして大切にされており、身体を清めてから入ることで、他の入浴者への敬意を示します」といった説明があって初めて、外国人ゲストは日本の温泉文化を理解し、尊重することができるのです。
「ウェルネス」の文化的翻訳
Rock & Steamでは、温浴プロデューサー・笹野美紀恵氏監修によるサウナを一部客室に設置し、「温泉とサウナを組み合わせた上質なウェルネス体験」を提供するとしています。
「ウェルネス」という概念は国際的に広く使われていますが、その捉え方は文化によって異なります。北欧ではサウナは社交の場としての意味合いが強く、アメリカではフィットネスや生産性向上と結びつけられることが多いとされています。一方、日本の温泉文化には「湯治」という概念があり、心身の療養や日常からの解放といった精神的な側面が強調されます。
Rock & Steamが提供する「ウェルネス体験」を海外のゲストに伝える際には、こうした文化的な差異を意識したローカライゼーションが重要になります。単に「wellness」と訳すのではなく、日本の温泉文化が持つ独自の価値を、相手の文化的文脈に合わせて説明する必要があるのです。
アートと宿泊の融合における多言語対応
Rock & Steamのもう一つの特徴は、現代アーティストのスー・サニー・パーク氏や写真家の石川直樹氏など、国内外で活躍するアーティストの作品を館内に展示する点です。「滞在そのものが文化や芸術との出会いとなる空間」を目指すこの取り組みは、宿泊施設としての付加価値を高めるものといえます。
アート作品の多言語解説
アート作品の価値を異なる言語・文化圏のゲストに伝えることは、容易ではありません。作品のコンセプトや制作背景、アーティストのメッセージを正確に伝えるためには、アート特有の専門用語と文化的文脈の両方を理解した翻訳が必要です。
たとえば、スー・サニー・パーク氏の作品は光と空間を用いたインスタレーションで知られていますが、作品解説に含まれる抽象的な概念や詩的な表現を、異なる言語で同等の印象を与えるように翻訳することは、高度な言語スキルと芸術への理解を要します。
国際的なアーティストとの協業
海外アーティストと日本の施設が協業する際には、制作過程でのコミュニケーションも重要です。作品のコンセプト協議、設置場所の調整、技術的な要件の確認など、専門的かつ繊細なやりとりが発生します。
このようなプロジェクトでは、単なる通訳や翻訳を超えて、両者の意図を正確に橋渡しする「クリエイティブ・リエゾン」としての役割が求められることもあります。言葉を置き換えるだけでなく、文化的な背景や業界特有の慣行を踏まえた調整が必要になる場面です。
地方リゾートのグローバル展開と言語戦略
SEKIYA RESORTは、別府において120年以上の歴史を持つ宿泊事業を基盤としながら、「GALLERIA MIDOBARU」での国内外のデザイン賞受賞や、「テラス御堂原」での「旅館甲子園グランプリ」受賞など、革新的な宿づくりで評価を受けてきました。
こうした地方リゾートが国際的な評価を得て、海外からの投資家やゲストを惹きつけるためには、戦略的な多言語コミュニケーションが欠かせません。
「グローカル」な言語戦略の重要性
地方リゾートの強みは、その土地ならではの文化や自然環境にあります。別府であれば、豊富な温泉資源、湯けむりの景観、地元の食文化などが該当します。しかし、これらの魅力を海外に伝える際に、単に英語に翻訳するだけでは、その土地らしさが失われてしまう恐れがあります。
重要なのは、グローバルな言語で発信しながらも、ローカルな魅力を損なわないバランスです。たとえば、地元の食材名をそのままローマ字表記で残しつつ、その食材の特徴や由来を英語で説明する。あるいは、温泉の泉質を科学的なデータとともに紹介しつつ、地元で古くから信じられてきた効能についても触れる。こうした「グローカル」なアプローチが、海外ゲストに本物の体験を提供することにつながります。
インバウンド回復と多言語対応の現状
日本政府観光局(JNTO)によると、訪日外国人旅行者数は回復傾向にあり、地方への誘客も政策的に推進されています。しかし、観光庁の調査では、外国人旅行者が日本滞在中に困ったこととして「言語の壁」が上位に挙がることが多く、地方においてはその傾向が顕著です。
Rock & Steamのような先進的なプロジェクトが成功するためには、施設のハード面だけでなく、ソフト面での多言語対応を整備することが重要です。Webサイト、予約システム、館内案内、スタッフの語学研修、緊急時対応マニュアルなど、ゲストとの接点すべてにおいて、一貫した品質の多言語サービスを提供することが求められます。
まとめ:「所有する旅」を支える言語インフラ
SEKIYA RESORTが提案する「所有する旅」というコンセプトは、宿泊業の新たな可能性を示すものです。このようなモデルが国内外で成功するためには、言語とコミュニケーションのインフラが不可欠です。
海外オーナーへの分譲販売、国際的なアーティストとの協業、多様な文化圏からの宿泊客への対応——これらすべてにおいて、単なる翻訳を超えた「文化的な橋渡し」が求められます。
アットグローバルは、翻訳・ローカライゼーションの専門会社として、ホテル・観光業界のグローバル展開を支援してきました。言語の壁を越えて、地域の魅力を世界に届けるお手伝いをいたします。多言語対応や異文化コミュニケーションについてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考:【株式会社関屋リゾート】 【SEKIYA RESORT】別府でホテルを所有する新たな選択肢『Rock & Steam』第1期分譲販売予約受付開始(PR TIMES)



コメント