株式会社ランド(本社:大阪府大阪市北区)は、2026年7月21日、地域密着型広告サービス「街アドメディア」の提供開始を発表しました。美容室やカフェ、クリーニング店、ホテルなど、地域住民が日常的に利用する店舗を広告媒体として活用し、企業や店舗の情報を「生活動線上」で届けるという新しいアプローチです。
参考:地域住民が利用する店舗を広告媒体に「街アドメディア」の提供開始(PR TIMES)
このサービスの活用事例として、プレスリリースには「インバウンド客に向けたレンタル着物の告知——観光地のホテルのロビーにチラシを設置」という具体例が紹介されています。この一文に、翻訳・ローカライゼーションを専門とするアットグローバルは注目しました。
なぜなら、地域に根ざした広告媒体でインバウンド客にリーチするという発想は、まさに「グローバル」と「ローカル」の接点そのものだからです。しかし、その接点で「言語」がボトルネックになっているケースは少なくありません。
この記事では、「街アドメディア」のコンセプトを入口に、インバウンド向け広告における多言語対応の重要性と、地域密着型プロモーションを成功させるための言語戦略について考察します。
「生活動線上の広告」がインバウンドに届くとき
街アドメディアの特徴は、「狙ったエリアに集中展開できる」「地域住民の生活動線上で接触できる」という2点に集約されます。駅周辺や住宅地周辺など、特定のエリアに絞ってチラシやポスターを設置できるため、全国一律のマス広告とは異なるアプローチが可能です。
この仕組みは、地域住民向けの広告として優れているだけでなく、観光客・インバウンド客へのリーチにも応用できる点が見逃せません。プレスリリースで紹介されている「観光地のホテルのロビーにチラシを設置」という事例は、まさにその好例です。
訪日外国人観光客は、ホテルのロビーやコンシェルジュデスクで情報収集を行うことが多く、そこに置かれたチラシやパンフレットは、「信頼できる情報源」として認識されやすいという特徴があります。デジタル広告が溢れる中で、物理的な接点を持つアナログ媒体が持つ「信頼感」は、特にインバウンド層に対して有効に機能する場合があります。
しかし、言語の壁が立ちはだかる
ここで問題になるのが、「そのチラシ、外国人に読めますか?」という根本的な問いです。
日本語のみで作成されたチラシは、当然ながら日本語を読めない外国人観光客には内容が伝わりません。仮に英語版を作成したとしても、機械翻訳をそのまま使用した場合、不自然な表現や誤訳が含まれるリスクがあります。
観光庁が公表している「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート結果(令和5年度)」によると、訪日外国人が旅行中に困ったこととして、「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」(11.9%)や「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」(9.4%)が上位に挙げられています。
つまり、せっかく良い場所に広告を設置しても、言語対応が不十分であれば、その効果は大きく減殺されてしまうのです。
インバウンド広告の多言語化で見落とされがちな3つのポイント
では、インバウンド向けの広告物を多言語化する際に、どのような点に注意すべきでしょうか。アットグローバルがこれまでの翻訳・ローカライゼーション支援の現場で見てきた「よくある落とし穴」を3つ紹介します。
① 「翻訳」と「ローカライゼーション」は別物
多言語化というと、まず「翻訳」が思い浮かびます。しかし、単に言葉を置き換えるだけでは、ターゲットに「刺さる」広告にはなりません。
たとえば、レンタル着物のチラシに「本格的な日本文化を体験」と書いてあったとします。これを英語に直訳すると Experience authentic Japanese culture となりますが、この表現が欧米の観光客と東アジアの観光客に同じように響くかというと、必ずしもそうではありません。
欧米圏の観光客には「非日常体験」や「フォトジェニック」な要素を強調する方が効果的な場合がありますし、アジア圏の観光客には「SNS映え」や「友人・家族との思い出作り」といった切り口が響くこともあります。ターゲットの文化的背景や価値観に合わせて、メッセージそのものを最適化する——これが「ローカライゼーション」です。
② 多言語=英語だけではない
インバウンド対応というと「まずは英語」と考えがちですが、実際の訪日外国人の内訳を見ると、英語圏以外からの観光客が圧倒的に多いことがわかります。
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2024年の訪日外客数の上位は、韓国(約788万人)、中国(約638万人)、台湾(約600万人)、香港(約227万人)、アメリカ(約241万人)となっています。東アジアからの観光客が全体の大半を占めているのが実態です。
つまり、ホテルのロビーに置くチラシであれば、英語だけでなく中国語(簡体字・繁体字)、韓国語への対応も視野に入れる必要があります。特に観光地によってはターゲット層が明確に異なるため、エリア特性に応じた言語選定が重要です。
③ デザインと言語の整合性
多言語版のチラシを作成する際に見落とされがちなのが、デザインと言語の整合性です。
日本語で作成したデザインをそのまま他言語に置き換えると、文字数の違いによってレイアウトが崩れたり、フォントが適切でなかったりする問題が発生します。特に中国語や韓国語は、日本語とは文字の形状や読みやすいフォントが異なるため、言語ごとにデザインの微調整が必要になります。
また、色使いや画像の選定にも文化的な配慮が求められる場合があります。ある国では好まれる色が、別の国ではネガティブな印象を与えることもあります。こうした細部への配慮が、広告の信頼性と効果を左右します。
「グローカル」な広告戦略とは何か
街アドメディアのコンセプトである「地域密着型広告」は、まさに「ローカル」の強みを活かしたアプローチです。しかし、インバウンド客をターゲットに含める場合、そこに「グローバル」の視点を掛け合わせる必要があります。
アットグローバルでは、この「グローバル」と「ローカル」の融合を「グローカル言語戦略」と呼んでいます。具体的には、以下のような考え方です。
・地域の文脈を大切にしながら、世界に通じる言葉で伝える
・ターゲット国・地域の文化に配慮した表現を選ぶ
・単なる翻訳ではなく、メッセージの「再構築」を行う
たとえば、京都の観光地にあるホテルのロビーに設置するレンタル着物のチラシであれば、以下のような多層的なアプローチが考えられます。
まず、日本語版は地元住民や国内観光客向けに、「本格的な着付け体験」「老舗呉服店プロデュース」といった信頼性を訴求するメッセージを中心に構成します。
次に、英語版は欧米圏の観光客を想定し、「Capture your Kyoto moment in traditional kimono」のように、体験価値とフォトジェニックな要素を前面に出します。
中国語版(簡体字)は中国本土からの観光客向けに、「人気SNS映えスポット」「カップル・家族での記念撮影に最適」といった、グループ体験やSNS共有を意識した訴求が効果的かもしれません。
韓国語版は韓国からの観光客向けに、「ドラマで見た着物姿を体験」「韓服との違いを楽しむ」といった、文化比較の視点を取り入れることも一案です。
このように、同じサービスでも、言語ごとにメッセージの切り口を変えることで、それぞれのターゲットに響く広告を作ることができます。これが「グローカル言語戦略」の実践です。
地域密着型プロモーションを多言語で成功させるために
街アドメディアのような地域密着型広告サービスは、「場所の力」を活かしたプロモーションとして大きな可能性を持っています。特に、観光地のホテルや飲食店など、外国人観光客が立ち寄る場所を媒体として活用できる点は、インバウンドマーケティングにおいて非常に有効です。
しかし、その効果を最大化するためには、言語対応の質が鍵を握ります。機械翻訳の精度が向上しているとはいえ、広告という「相手の心を動かす」コミュニケーションにおいては、文化的なニュアンスや表現の温度感が重要です。
アットグローバルでは、翻訳・ローカライゼーションの専門家として、広告物・販促物の多言語制作を数多く手がけてきました。チラシやポスター、POPといった紙媒体から、デジタルサイネージ用のコンテンツまで、媒体特性に応じた最適な言語対応をご提案しています。
「地域に根ざしながら、世界に届く」——そんな広告を実現したいとお考えの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
株式会社ランドが提供を開始した「街アドメディア」は、地域住民が日常的に利用する店舗を広告媒体として活用するという、新しい地域密着型広告サービスです。特に、観光地のホテルロビーにチラシを設置してインバウンド客にリーチするという活用事例は、「グローバル」と「ローカル」の接点を象徴するものといえます。
インバウンド向け広告の効果を最大化するためには、単なる翻訳ではなく、ターゲットの文化や価値観に合わせた「ローカライゼーション」が不可欠です。英語だけでなく中国語・韓国語への対応、デザインと言語の整合性、そしてメッセージの切り口の最適化——これらを総合的に設計することで、地域密着型プロモーションは真の効果を発揮します。
アットグローバルは、翻訳・ローカライゼーションの専門企業として、「グローカル言語戦略」の視点から、企業の多言語コミュニケーションを支援しています。地域の強みを活かしながら、世界に通じる言葉で伝える——そんな広告づくりをお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。



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