夏休みの海外旅行シーズンを前に、空港の混雑が本格化しています。海外eSIMアプリ「トリファ」を運営する株式会社トリファが、過去2年以内に海外旅行経験のある500名を対象に実施した調査によると、海外旅行者の約55.8%が空港の待ち時間に不満を感じた経験があることが明らかになりました。
参考:【空港での過ごし方に関する実態調査】海外旅行者の約55.8%が空港の待ち時間に不満。「座席不足」「Wi-Fi」「電源」が三大課題に(PR TIMES)
「座席不足」「Wi-Fi」「電源」という三大課題が浮き彫りになった今回の調査。しかし、翻訳・ローカライゼーションを専門とするアットグローバルの視点から見ると、この調査結果の背景には、もうひとつ見逃せない課題が潜んでいます。それは、旅行者が異国の地で感じる「言語の不安」です。
本記事では、トリファの調査結果を入口に、空港という「旅の始まり」における多言語対応の重要性と、旅行関連サービスが取り組むべき言語戦略について考察します。
調査が明らかにした「空港待ち時間」の実態
約8割が出発1時間半以上前に空港到着
トリファの調査によると、海外旅行者の77.6%が出発の1時間半以上前に空港へ到着していることがわかりました。内訳を見ると、「1時間半以上2時間未満」が30.4%、「2時間以上3時間未満」が29.0%、「3時間以上前」が18.2%となっています。
海外旅行では、チェックイン、保安検査、出国審査など国内線にはない手続きが必要です。さらに、パスポートの確認や免税手続きなど、慣れない作業への不安から、多くの旅行者が余裕を持って空港に向かう傾向があります。
この「1時間半〜3時間」という待ち時間は、単なる空白の時間ではありません。旅行者にとっては、これから始まる異国での体験への期待と不安が交錯する、心理的に特別な時間帯なのです。
不満の三大要因は「座席」「Wi-Fi」「電源」
調査では、待ち時間に不満を感じた経験がある旅行者(n=279)に具体的な内容を尋ねています。結果は以下の通りです。
・「座れる席が少ない・混雑している」:51.3%
・「Wi-Fiがつながりにくい・遅い」:48.4%
・「電源・充電場所がない」:45.9%
これらはすべて「物理的なインフラ」に関する不満です。しかし、ここで注目したいのは、なぜ旅行者がこれほどまでにWi-Fiや電源を必要としているのかという点です。
調査リリースでも触れられているように、現代の旅行者はスマートフォンを中心に「旅程確認」「連絡」「翻訳」「決済」「現地情報収集」を行っています。つまり、Wi-Fiや電源への不満は、単なる利便性の問題ではなく、「言葉の通じない国に行く前の情報収集・準備ができない」という不安と直結しているのです。
空港は「言語の壁」と最初に向き合う場所
出国前に始まる「異言語体験」
日本の空港は、日本語話者にとっては当然ながら日本語が通じる場所です。しかし、海外旅行者の頭の中では、空港に着いた瞬間から「言語の切り替え」が始まっています。
目的地の基本的なフレーズを確認する、現地の交通機関の乗り方を調べる、ホテルの住所を翻訳アプリに入力しておく——こうした「言語の準備」は、多くの場合、空港の待ち時間に行われています。
観光庁が公表した「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート調査」(2026年度)では、訪日外国人が旅行中に困ったこととして「コミュニケーション」が継続的に上位に挙がっています。これは日本を訪れる外国人の話ですが、日本人が海外に出る際も、同じ不安を抱えていると考えられます。
「翻訳アプリがあれば大丈夫」という誤解
近年、スマートフォンの翻訳アプリは飛躍的に進化しました。Google翻訳やDeepLなど、無料で使える高精度な翻訳ツールが普及し、「言葉の壁は技術で解決できる」という認識が広がっています。
しかし、現実の旅行シーンでは、翻訳アプリだけでは対応しきれない場面が数多くあります。
・ネットワーク環境がない場所では、クラウド型の翻訳アプリは機能しない
・音声認識の精度は、騒がしい空港や駅では大幅に低下する
・文化的なニュアンス(丁寧さの度合い、タブー表現など)は、機械翻訳では十分に反映されない
・緊急時の説明(体調不良、トラブル対応など)は、正確さが命に関わる
だからこそ、旅行者は空港にいる間に「できる限りの準備」をしておきたいと考えます。Wi-Fiや電源への不満は、この「準備の時間」が奪われることへの不安の表れなのです。
旅行サービスに求められる「多言語UX」という視点
情報提供からUXデザインへ
トリファは、海外eSIMアプリという通信インフラの提供に加え、空港ラウンジを都度予約できる「ラウンジパス」サービスを展開しています。これは、調査で明らかになった「座席」「Wi-Fi」「電源」という三大課題に対する、具体的なソリューションです。
しかし、旅行関連サービスの多言語対応を考える際、単に「情報を翻訳する」だけでは不十分です。重要なのは、「ユーザーがその言語で、ストレスなくサービスを利用できるか」という「多言語UX(ユーザーエクスペリエンス)」の視点です。
たとえば、以下のような要素が多言語UXを左右します。
・UIの言語切り替え:アプリやWebサイトで、ユーザーの母語にスムーズに切り替えられるか
・エラーメッセージの翻訳:トラブル発生時に、正確かつ安心感を与える表現で案内できるか
・FAQやヘルプの多言語化:よくある質問に、各言語で即座にアクセスできるか
・カスタマーサポートの対応言語:緊急時に母語で相談できる窓口があるか
「翻訳」と「ローカライゼーション」の違い
ここで、翻訳業界でよく使われる「ローカライゼーション」という概念について説明します。
翻訳(Translation)が「ある言語のテキストを別の言語に置き換える」作業であるのに対し、ローカライゼーション(Localization)は「特定の地域・文化圏のユーザーに最適化する」作業を指します。
具体的には、以下のような調整が含まれます。
・日付・時刻の表記:「2026/7/20」を「July 20, 2026」や「20/7/2026」に変換
・通貨の表示:日本円からドルやユーロへの換算表示
・文化的なタブーへの配慮:特定の色やシンボルが持つ意味の違い
・敬語・丁寧さの度合い:言語によって異なる「適切なトーン」の調整
旅行サービスにおいては、このローカライゼーションの質が、ユーザーの信頼感と安心感を大きく左右します。特に、トラブル発生時や緊急時の案内文は、直訳では不安を煽ってしまうこともあり、各言語圏のユーザーに配慮した表現設計が求められます。
グローバル展開を見据えた言語戦略のヒント
データドリブンな多言語対応
トリファの調査のように、ユーザーの実態をデータで可視化する取り組みは、サービス改善の出発点として非常に有効です。同様に、多言語対応においても、データに基づいた優先順位付けが重要になります。
・ユーザーの言語分布:どの言語圏からのアクセス・利用が多いか
・離脱率の分析:特定の言語版で離脱が多いページはどこか
・問い合わせ内容の傾向:言語別に、どのような質問やクレームが多いか
こうしたデータを収集・分析することで、「どの言語の、どのコンテンツを優先的に改善すべきか」が明確になります。
専門パートナーとの連携
多言語対応を自社だけで完結させようとすると、品質のばらつきやリソースの分散が起きがちです。特に、専門性の高い分野(法的文書、医療情報、技術マニュアルなど)や、微妙なニュアンスが求められる分野(マーケティングコピー、カスタマーサポートなど)では、翻訳・ローカライゼーションの専門パートナーとの連携が効果的です。
アットグローバルでは、単なる翻訳作業にとどまらず、クライアントの事業目標や対象ユーザーを理解した上での言語戦略の提案を行っています。旅行業界においては、ホテル、航空会社、旅行代理店、観光施設など、多様なクライアントの多言語対応を支援してきた実績があります。
まとめ:旅の始まりに「言葉の安心」を届ける
トリファの調査は、空港という場所が旅行者にとって「期待と不安が交錯する特別な空間」であることを、データで示してくれました。座席、Wi-Fi、電源という物理的なインフラの課題は、その背景にある「異国での体験に備えたい」という旅行者の心理と密接に結びついています。
そして、この「備えたい」という気持ちの中心にあるのが、言語への不安です。言葉が通じるかどうか、困ったときに助けを求められるかどうか——この不安を軽減することが、旅行サービスの価値を高める鍵になります。
トリファが提供するeSIMサービスやラウンジパスは、旅行者の通信環境と快適な待ち時間を支えるソリューションです。そこに多言語での安心感が加わることで、サービスの価値はさらに高まるでしょう。
アットグローバルは、翻訳・ローカライゼーションの専門企業として、旅行業界をはじめとするさまざまな業界のグローバル展開を言語面から支援しています。「海外のユーザーに自社サービスを届けたい」「インバウンド対応を強化したい」「多言語でのカスタマーサポートを充実させたい」——そうした課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考:【空港での過ごし方に関する実態調査】海外旅行者の約55.8%が空港の待ち時間に不満。「座席不足」「Wi-Fi」「電源」が三大課題に(PR TIMES)



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