関西国際空港や、みずほPayPayドーム福岡で展開する「OnigiriBurger」が、徳島県認定ブランド牛「阿波黒牛」を使用した新商品を発売するというニュースが話題を呼んでいます。バンズの代わりにお米と海苔で具材を挟むという、日本ならではの発想を形にしたこのブランドは、出国前の旅行者やスポーツ観戦客に「日本の味」を届けています。
参考:徳島のブランド牛「阿波黒牛(あわくろうし)」BBQ焼肉おにぎりバーガー、空港・球場グルメに新登場!心踊る、黒の旨み。【OnigiriBurger】|PR TIMES
こうした「日本らしさ」を前面に打ち出した食ビジネスが海外のお客様に届くとき、そこには必ず言語と文化の壁が立ちはだかります。「おにぎり」とは何か、「海苔」はどんな味がするのか、「黒毛和牛」と「交雑牛」の違いは何か——日本人にとって当たり前のことが、外国人には未知の世界であることは珍しくありません。
本記事では、OnigiriBurgerの新商品発表を入口に、日本の食文化を世界に届けるための「食のローカライゼーション」について考えます。翻訳・ローカライゼーションを専門とするアットグローバルの視点から、飲食店が取り組むべき多言語対応のポイントを解説します。
「おにぎりバーガー」が示す、日本食グローバル発信の可能性
株式会社おかげさまでが展開する「OnigiriBurger」は、2023年12月に関西国際空港本店をオープンして以来、日本各地の生産者とコラボレーションを重ねてきました。京都・祇園の名店「にくの匠 三芳」、播州赤穂の牡蠣「サムライオイスター」、岡山県「安富牧場」のソフトクリーム、滋賀県の日本酒「松の司」——そして今回の徳島県認定ブランド牛「阿波黒牛」と、地域の「おいしい」を発掘し、世界への玄関口である空港で発信するというビジネスモデルを確立しています。
注目すべきは、このブランドが「MAKE FOR YOU(あなたのために)」というコンセプトを掲げ、作り立てホカホカの状態で提供することにこだわっている点です。大阪の予約困難な寿司の名店「鮓 きずな」のオーナーが全メニューを開発しており、グルテンフリーのお米とミネラル豊富な海苔、厳選された食材と調味料を使用。「究極の和の味」をハンバーガーのようにワンハンドで楽しめる形に仕上げています。
関西国際空港という立地は、出国直前の日本人旅行者と、入国直後または出国前の外国人旅行者が交差する場所です。日本人にとっては「旅の思い出としての日本食」であり、外国人にとっては「日本で最初または最後に出会う日本食」になり得ます。この接点において、言葉でどのように「おにぎりバーガー」の価値を伝えるかは、ブランドの印象を大きく左右します。
外国人観光客に「日本の味」を伝える難しさ
「おにぎり」を英語でどう説明するか
「おにぎり」という言葉は、近年では海外でも「Onigiri」としてそのまま通じるケースが増えてきました。しかし、それでも多くの外国人にとっては「Rice Ball」という説明がないと何のことかわからないのが現実です。
さらに問題なのは、「Rice Ball」という訳語が、おにぎりの本質を十分に伝えきれていない点です。おにぎりは単なる「丸めたご飯」ではなく、海苔で包む文化、中に具材を入れる文化、手で握ることで生まれる温かみなど、日本独自の食文化が凝縮されています。「OnigiriBurger」の場合、バンズの代わりにお米と海苔を使うというコンセプト自体が、日本食文化への深い理解を前提としているのです。
「阿波黒牛」をどう伝えるか——地域ブランドの翻訳課題
今回の新商品に使用されている「阿波黒牛(あわくろうし)」は、徳島県認定ブランド牛です。黒毛和牛とホルスタインの交雑種を、一般的な交雑牛より約4か月長い26か月以上の期間をかけて肥育。徳島県の豊かな自然の中で、さつまいもやコーンも与えながら丹精込めて育てられています。
この説明を英語にするとき、単純に「Awa Kuroushi Beef」と表記するだけでは、外国人にはその価値がまったく伝わりません。「Tokushima Prefecture Certified Brand Beef」という肩書きを添え、「Why is it special?(なぜ特別なのか)」を説明する必要があります。
たとえば、以下のような要素を盛り込むことが考えられます:
・Crossbred cattle(交雑種であること)
・Extended feeding period of over 26 months(26か月以上の長期肥育)
・Fed with local sweet potatoes and corn(地元のさつまいもやコーンを飼料に使用)
・Rich umami in lean meat with melt-in-your-mouth fat(赤身の旨みと口どけの良い脂のバランス)
こうした情報を、限られたメニュースペースやPOPの中でどう伝えるかは、翻訳というよりも「編集」や「ローカライゼーション」の領域です。
アレルギー・宗教・食文化への配慮
外国人観光客への食の提供において、避けて通れないのがアレルギー表示と宗教的な食事制限への対応です。
日本では食品表示法により、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目が特定原材料として表示義務の対象とされています。しかし、米国FDA(食品医薬品局)が定める主要アレルゲンは9品目で、日本の基準とは一部異なります。「日本の基準で書いたから大丈夫」とは言えないのです。
また、ハラール(イスラム教の食事規定)やコーシャ(ユダヤ教の食事規定)への対応、ベジタリアン・ヴィーガンへの配慮など、宗教的・思想的な食の制限も考慮が必要です。「BBQ焼肉」という商品名だけでは、どのような調味料が使われているか、アルコールが含まれているかなど、判断できない情報が多くあります。
「食のローカライゼーション」に必要な3つの視点
アットグローバルは、飲食店・食品メーカーの多言語対応を数多く支援してきました。その経験から、「食のローカライゼーション」に必要な3つの視点をお伝えします。
① 「翻訳」と「説明」を分ける
メニュー名をそのまま翻訳するのではなく、外国人が「どんな料理か」「なぜ特別か」をイメージできる説明を添えることが重要です。「阿波黒牛BBQ焼肉おにぎりバーガー」であれば、商品名の英語表記に加えて、2〜3行の説明文(ディスクリプション)を用意することで、注文のハードルが下がります。
② 「温度感」を翻訳する
OnigiriBurgerのコンセプト「MAKE FOR YOU(あなたのために)」は、日本語の「おもてなし」に通じる温かみのある表現です。こうしたブランドのトーンを多言語でも一貫して伝えるためには、単なる逐語訳ではなく、ターゲット言語圏の文化に合わせた表現の調整(トーン&マナーのローカライゼーション)が必要です。
③ 「現場」を想定する
空港や球場という立地では、お客様が立ち止まって長い説明を読む時間はありません。デジタルサイネージ、カウンターPOP、スタッフの接客英語など、複数のタッチポイントで一貫した情報を、短く・わかりやすく伝える設計が求められます。これは翻訳会社だけで完結する作業ではなく、店舗運営チームとの連携が不可欠です。
インバウンド4,200万人時代、飲食店に求められる言語戦略
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外客数は約4,268万人に達し、過去最高を更新しました。関西国際空港は西日本のゲートウェイとして、年間数千万人の旅行者が行き交う場所です。
こうした環境において、「日本の味」を世界に届けたいという志を持つ飲食店にとって、多言語対応は「あったら便利」ではなく「なければ機会損失」のレベルになりつつあります。
OnigiriBurgerが掲げる「日本各地の生産者がこだわり抜いた『おいしい』とのコラボレーション」というビジョンは、まさに地域の価値を世界に届けるグローカル戦略です。阿波牛の藤原・広報部のコメントにある「この出会いが『阿波黒牛』の魅力を日本全国、更には世界へ届ける大きな第一歩になると確信しています」という言葉は、地域ブランドが世界市場を見据えている証左でしょう。
しかし、その「第一歩」を確実なものにするためには、言語と文化の橋渡しをするパートナーが必要です。アットグローバルは、翻訳・ローカライゼーションの専門企業として、飲食店のメニュー多言語化、接客マニュアルの翻訳、海外展開時のブランドメッセージ策定など、「食のグローバル発信」を言語面から支援しています。
まとめ:「日本の味」を伝えるのは、言葉の力
OnigiriBurgerと阿波黒牛のコラボレーションは、日本の食文化が持つ「地域性」「こだわり」「ストーリー」を、ワンハンドで食べられる形に凝縮した好例です。しかし、その価値が外国人のお客様に正しく伝わるかどうかは、言葉の選び方ひとつで大きく変わります。
「おにぎり」を「Rice Ball」と訳すだけで終わるのか、それとも日本の食文化への入口として丁寧に説明するのか。「阿波黒牛」を「Awa Beef」と略すのか、それとも徳島の風土と生産者のこだわりを伝えるのか。その選択が、ブランドの印象と顧客体験を左右します。
アットグローバルは、単なる「言葉の置き換え」ではなく、文化と文脈を踏まえた「伝わる翻訳」を提供しています。日本の食を世界に届けたいとお考えの飲食店・食品メーカーの皆さま、ぜひお気軽にご相談ください。
参考:徳島のブランド牛「阿波黒牛(あわくろうし)」BBQ焼肉おにぎりバーガー、空港・球場グルメに新登場!心踊る、黒の旨み。【OnigiriBurger】|PR TIMES



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