大使館と領事館の違いとは?英語の由来もわかりやすく解説!

大使館と領事館の違い

あなたは海外で日本の大使館や領事館のお世話になったことってありますか?

私は10年以上前に、マレーシアでデジタルノマド的な生活をしていたことがあるのですが、その時に長期ビザを取得しようと思い立ち、在マレーシア日本領事館にパスポートの切り替えをしに行ったことがあります。

当時、領事は面談をしてくれて、いろいろと相談に乗ってくださいました。きっとお忙しかったでしょうに時間を取っていろいろと話を聞いてくれたのを覚えています。

普段の海外旅行ではお世話になることはないかもしれませんが、海外赴任する人、そして旅行する人も、その国の大使館や領事館について最低限のことを知っておいた方がいいです。

この記事では、大使館と領事館の違いについて、またそれぞれの役割とサービスについてわかりやすく解説します。

  • 大使館と領事館の主な役割と設置目的の違い
  • 大使館と領事館が提供するサービス、特にパスポートやビザの申請に関する業務内容
  • 各機関が日本国民を支援する方法と緊急時の対応策
  • 名誉領事の役割とその活動内容の理解
目次

大使館と領事館の基本的な違い

大使館とは

在ドイツ日本国大使館

写真: wikipedia 在ドイツ日本国大使館

大使館とは、ある国が他の国に置く公式な外交機関です。これはその国の外交活動において最も重要な機関とされ、通常は相手国の首都に位置しています。例えば、アメリカにある日本大使館は、首都ワシントンD.C.に設置されています。

大使館の主な役割は、二国間の外交関係を促進し、文化や経済の交流を深めることです。また、大使館は自国民への外交的な保護や支援を提供し、緊急事態が発生した場合には安全を確保するための支援を行います。

さらに、ビザの発行や旅行情報の提供などの領事業務も手掛けていますが、その主要な任務は政治的な活動です。

領事館とは

領事館とは、他国に設置される在外公館の一つで、主に自国民が海外で生活する際のサポートや様々な手続きを支援する役割を担っています。

この場合もアメリカを例にすると、アメリカの各主要都市に14個の領事館と3つの領事事務所が置かれていて、それぞれ担当のエリアをカバーしています。

領事館の業務として、具体的には、パスポートの更新、ビザの発行、出生や死亡の届け出など、日常的に必要となる公的手続きを行います。

また、領事館は大使館とは異なり、商取引や法律問題など、より実務的な支援も提供します。これらの業務は、地元の法律や規則に従って行われるため、通常、大都市や交易が盛んな地域に設置されています。

大使館 領事館 違い

大使館と領事館の違いで1番大きなものは、外交活動を行う権限があるかどうかです。大使館は自国からの依頼で、特定の情報を得たり分析します。そしてそうした情報に基づいて自国の政府が大使館にさまざまな指示を出し、外交や調整を行います。

また次に大きな違いは、大使館が各国に1つだけなのに対して、領事館は複数あることです。領事館の役割が、実務的なサービスが中心であることを考えると納得がいきますね。日本企業の工場があったり、日本人が多いエリアに作られることが多いです。

共通点は、大使館、領事館共にその国にいる日本人のために、パスポートの更新やビザの発行、出生や結婚の届け出などの行政サービスをしてくれるところです。

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役割大使館領事館
外交活動を行う権限あるない
1つの他国にある数1つだけ複数
主な業務外交関係の維持と政治的交渉自国民のための行政的サービス、商業的サポート
ビザや証明書の発行するする
相手国の情報収集や分析するする
日本の広報文化活動するする
在留日本人の命や財産の保護するする
治外法権ないない
公館の不可侵あるある
表:大使館 領事館 違い

治外法権について

昔から、「在留大使館や領事館の敷地は自国の領土の延長で、その国の法律で裁かれない」と考えている人がたくさんいますが、これは正確ではありません。現代の国際法において、大使館や領事館には絶対的な治外法権は認められていません

治外法権とは、特定の外国人が滞在する国の法律、特に裁判権に服さない権利であり、外交官や外国の元首などに適用されます。

「ウィーン条約」により、大使館や領事館の建物や敷地には「不可侵権」という権利が認められています。これにより、在留する国の警察などが無許可で侵入、捜索、逮捕などを行うことはできません。

しかし、外交官がその国で犯罪を犯し、領事館に逃げ込んだ場合でも、本国がその人の外交特権を放棄した場合は、その国での逮捕や裁判が可能になることがあります。これは二国間での交渉によって決定されます。(出典:外務省HP

領事特権とは

領事特権とは、領事官がその職務を行う上で得られる国際法で決められた特権です。例えば、職務に関連する行為について訴訟されても罪に問われなかったり、宿泊施設ではない領事館の建物部分については不可侵であったりします。

他にも情報の非公開を保つこと、一定の税金の免除などが含まれます。しかし、全権外交官、つまり自国の政府から派遣されるような高官が持つ大きな免責特権とは異なり、領事特権は限られたものと言えます。

大使館 領事館 の英語の違いとそれぞれのルーツ

大使館と領事館 英語

英語では、大使館を “Embassy” と言い、原語はフランス語の “ambassade” から来ています。この言葉は中世ラテン語の「ambactia」に由来し、さらに古いゲルマン語の語根にさかのぼることができます。

これらの語根は「使者」や「代理人」という意味を持ち、外交的な使命や任務を遂行する人々を指すのに使われていました。それが現代では「大使館」として用いられています。

一方、英語で領事館は “Consulate”になります。この言葉は、ラテン語の「consulatus」から来ています。これは「consul」(コンスル)という言葉に由来し、ローマ共和政時代の高位公職者を指す言葉です。コンスルはローマの最高官職の一つで、主に外交や軍事に関する重要な職務を担っていました。

やがてこの「consul」は外交官を指すようになり、「consulate」という言葉はその外交官が勤務する事務所やその機能を指すようになりました。

そして現代では、領事館という言葉で訳されますが、領事館が外国における自国民のサポートやビザの発行などの業務を行うことからして、ぴったりの言葉と言えます。

名誉(総)領事とは

総領事館の長が総領事、領事館の長が領事ですが、時々名誉領事という立場について聞くことがあります。これはどんな役職なのでしょうか?

名誉領事(Honorary Consul)または名誉総領事(Honorary Consul General)は、外国政府によって任命され、特定の地域でその国の利益を代表し、領事業務を行う名誉職の人物です。

名誉領事は通常、その国の市民ではない地元の著名人やビジネスマンが務めることが多く、正式な外交官ではありませんが、領事業務の一部を担当します。

例えば、Eli Gabayという方は、アメリカの弁護士で、ペンシルベニア州フィラデルフィアに拠点を置いていますが、ニカラグア共和国の名誉領事を務めています。(参照:在フィラデルフィア ニカラグア共和国名誉領事館

名誉領事にビジネスマンが任命される理由は、2国間のビジネスの橋渡しが期待されているからです。ですから、名誉領事は非常勤で、本業は別にあるケースが多く、そのため名誉領事館は名誉領事の事務所やビジネス施設内に設置されることが一般的です。

大使館と領事館の活用方法と一覧

どういう時に大使館や領事館のお世話になる?

よく映画やドラマでは、外国で怪しい人に追いかけられて自国の大使館に逃げ込む、みたいなシーンがありますが、実際にそんな使い方をすることはないでしょう。

通常、大使館や領事館にお世話になるとすれば、その国に住んでいる時や旅行中に困った時に助けを求めることが多いでしょう。例えば、パスポートの更新や紛失時の再発行、ビザの申請、緊急時の支援などがあります。

また事故に遭った時のサポートや、自然災害が発生した時の安否確認などもあり得ます。現地のトラブルに見舞われた時には、大使館が解決してくれるというよりは、通訳や弁護士などを紹介してくれて、サポートしてくれる、というイメージが正しいでしょう。

それで、こうした機関は、ある程度あなたの必要を聞いてくれますが、なんでもかんでもお願いを聞いてくれるわけではないことを理解しておきましょう。

領事館にビジネスのサポートをしてもらうには

ビジネスサポート

あまり知られていませんが、領事館は、日本の企業が現地でビジネスを行う際にさまざまな支援をしてくれます。

それで外国で新しくビジネスを始める場合、海外リサーチを行う事になると思いますが、その際に現地の管轄の領事館に問い合わせをするとよいでしょう。手順は以下の通りです。

1.領事館に連絡する

まず、サポートを求めたい国の領事館に連絡を取ります。連絡方法は、電話、メール、または領事館の公式ウェブサイトを通じて行うことができます。

2.商業部門に問い合わせる

 多くの領事館には、商業関連の問い合わせを専門に扱う部門があります。この部門に直接問い合わせることで、より具体的かつ迅速なサポートを受けることができる場合があります。

3.必要な情報を提供する

領事館に問い合わせる際には、自社の業種、目的、必要とするサポートの種類など、具体的な情報を提供することが重要です。これにより、領事館側が適切なサポートを提供しやすくなります。

4.アドバイスや情報を受け取る

領事館からは、市場情報、ビジネスマッチング、法的手続きのアドバイス、現地でのビジネスイベントへの参加支援など、様々な形でのサポートが提供されることがあります。

5.フォローアップ

提供されたサポートや情報を基に行動を起こした後、必要に応じて領事館との連絡を続け、追加のサポートや情報を求めることができます。

在留大使館・領事館の一覧

外国にそれぞれ設置されている日本の大使館や領事館の一覧をこのページに掲載することもできるのですが、もし変更された時にアップデートが遅れると、読者の皆さんに迷惑をかけるかもしれないので、ここは在留大使館・領事館の一覧(外務省のページ)をリンクしておきます。

在外公館未設置の国(2024年1月時点)

日本の大使館も領事館もない国があります。国交が樹立されていなかったり、政治的な理由があったりと状況はさまざまです。

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エリア国名
アジアブータン
大洋州クック、ツバル、ナウル、ニウエ
中南米アンティグア・バーブーダ、ガイアナ、グレナダ、スリナム、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセント、セントルシア、ドミニカ、バハマ、ベリーズ(注)
欧州アンドラ、コソボ(注)、サンマリノ、マルタ(注)、モナコ、モンテネグロ、リヒテンシュタイン
アフリカエスワティニ、エリトリア(注)、カーボベルデ、ガンビア、ギニアビサウ、コモロ、コンゴ共和国、サントメ・プリンシペ、シエラレオネ、赤道ギニア、ソマリア、チャド、中央アフリカ、トーゴ、ニジェール、ブルンジ、リベリア、レソト
(注)兼館ではあるが、兼勤駐在官事務所を設置している国(計4公館)

参照:外務省「日本国の在外公館未設置の国・地域に渡航する際の注意」

こうした国にどうしても行く必要がある場合、その国をカバーしてくれている近隣の国の大使館がどこなのかを事前に確認しておきましょう。

大使館や領事館に入場するには

大使館や領事館に入るためには、通常、事前の予約や適切な理由が必要です。セキュリティが非常に厳重であるため、パスポートや身分証明書の提示が求められることが一般的です。

また、ビザ申請や領事業務のための訪問の際には、予約はもちろんのこと、申請に必要な書類をしっかりそろえて行く必要があります。

緊急時に大使館のサポートが必要な場合でも、可能であれば事前に連絡を取り、指示に従うことが安全でスムーズな対応につながります。

いざという時のために、その国を訪れる際には大使館や領事館の電話番号を携帯電話に登録しておきましょう。

大使館 領事館 違いまとめ

  • 大使館はある国が他国に設置する外交機関である
  • 領事館は在外公館の一つであり、在住自国民の支援を行う
  • 大使館の主な役割は外交関係の維持や政治的交渉
  • 領事館の職務は実務的で、パスポート更新やビザ発行などを担当
  • 大使館は通常、受け入れ国の首都に位置する
  • 領事館は商取引や法律問題の支援も行う
  • 英語では大使館を “Embassy”、領事館を “Consulate” と呼ぶ
  • 大使館は文化交流や情報収集の活動も行う
  • 名誉領事は非常勤で、特定の都市や地域で限定的な業務を行う
  • 日本に大使館がない国もあり、緊急時は最も近い国の大使館がサポートを提供
  • 大使館への入場には事前予約や身分証明の提示が必要
  • 領事特権には官公署の不可侵性や文書の秘密保持が含まれる
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