日本語の条件表現をマスターしよう⑥ 「たら」を上手に使う

日本語の条件表現「と」「ば」「なら」「たら」について考えています。前回までで「と」「ば」「なら」について考えています。「と」「ば」に比べて、「なら」は独特の用法があるため注意が必要だということでした。

今回は最後の一つ、「たら」について考えます。

「たら」の特徴

条件の種類

「たら」は偶発的で単発の条件を表します。ですので恒常条件には使われません。仮定条件か確定条件に使われます。

仮定条件「雨が降ったら、とても困る。」

確定条件「こんなに雨が降ったら、作物がだめになる。」

現実と非現実

現実的な仮定でも非現実的な仮定でも使うことができます。また、実現しなかった事を想定する「反実仮想」にも使われます。

「昨日、晴れていたら、行ったのに。」(実際には晴れていなかった)

時間と焦点

結果を強調する意味合いが強いので、焦点は後件にあります。

条件の用法においては後件が時間的に後になります。ただ、発見の用法においては後件が前になる場合があります。

条件用法(後件が後)「ベルが鳴ったら、鉛筆を置いてください。」

発見用法(後件が前)「気が付いたら、夜の10時になっていた。」

モダリティ

「たら」の特徴の一つとして文末表現の自由度が高いことがあげられます。命令、意志、希望、依頼の場合にも使えますし、感情を表すのにも使えます。

依頼のモダリティ「メールを受信したら、教えてください」

希望のモダリティ「教えてくれたら、よかったのに」

レジスター

表現の自由度が高いことから話し言葉として使われる場合が多く、レジスターは低めです。

前件に丁寧語を使うことができます。

「メールが届きましたら、手続きは完了です。」

「たら」のその他の用法

自由度の高さからか「たら」は条件の用法以外でも使われます。例えば先述した発見の用法、動作の連続、前置き表現、過去の習慣などがあります。

動作の連続「昼食をとったら、すぐ仕事をします。」

前置き表現「どちらかと言ったら、お茶よりコーヒーが好きだ。」

過去の習慣「毎年この季節になったら、旅行に行ったものだ。」

「たら」のまとめ

条件用法における「たら」は偶発的で単発の状況で使われます。文法の自由度が高いため会話で使われることが多く、レジスターが下がり気味になります。こうした特徴をよく理解した上で控えめに用いるのがよさそうです。

さて、「と」「ば」「なら」「たら」の4つの条件表現を概観してきました。それぞれが持つニュアンスの違いを理解し、用いる状況や場面も考えて選ぶ必要があります。

次回、シリーズの最後として、実際の翻訳の現場で考慮する情報をまとめてみたいと思います。

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