【ロシア語翻訳の落とし穴】翻訳者が語る!ロシア語翻訳で注意するべき7つのこと

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ロシア語はロシア連邦の公用語です。ロシア語はヨーロッパ(東ヨーロッパ・北アジア・中央アジア・コーカサス)の中で最も多くの人々が話している言語です。ここではロシア語の特徴と、ロシア人とのビジネスにおいて役立つ情報などをお伝えします。

株式会社アットグローバルのロシア語翻訳チームが監修

本記事は翻訳会社の株式会社アットグローバルのロシア語翻訳チームの監修の元、ストラテ編集部が記事を作成しています。翻訳者の意見を取り入れた内容になっています。

ロシア語の特徴

1.「ロシア語アルファベット」を使用している

「ロシア語アルファベット」とは「キリル文字」を使用したアルファベットのことで、文字数は33文字あります。ロシア語は基本的に「子音+母音」を組み合わせて文字が作られます。

ロシア語の「母音」
ロシア語の「母音」は5つですが、母音の表記文字は10個あります。
母音は「硬母音」と「軟母音」の2つに分かれています。
硬母音  А,Э,Ы,О,У
軟母音  Я,Е,И,Ё,Ю

ロシア語の「子音」
ロシア語の「子音」は21文字あります。
子音は「無声子音」と「有声子音」の2種類があります。
無声子音  П,Т,К,Ф,С,Ш,Х,Ц,Ч,Щ
有声子音  Б,Д,Г,В,З,Ж,Л,Р,М,Н,Й

2. ロシア語の発音は「ローマ字読み」できる

ロシア語の単語は「子音+母音」の組み合わせで、基本的に「ローマ字読み」が出来ますが、日本語にない発音や発音しない記号などの例外もあります。

日本語にない発音例
「Р」 ー 「ル」(巻き舌)と発音する。
「Л」 ー   英語の「L」に近い音で「ル」と発音する。
「Ш」ー 「シー」(舌を浮かせて)と発音する。
     (似た文字の「Щ」は、日本語の「シ」に近い発音)

発音しない記号
「軟音記号」の「Ь」( ミャーフキー・ズナーク)…基本的には子音字の後で用いられ前の子音が軟子音であることを示しています。ただし、この文字の後に軟母音字が続く場合には、「子音字と母音字を分離する役割」があります。つまり子音字と母音字を別々に発音する必要があります。 премье́р(首相)と、 приме́р(例)といった違いがあります。

「硬音記号」の 「Ъ」(トゥビョールディ・ズナーク)…これも発音はせず、子音字と軟母音字の間に入って、両者を分離します。この前後は別々に発音しないといけません。съесть(食べる)とсесть(すわる)といった違いがあります。

3.ロシア語の名詞には、6つの「格」がある

ロシア語の名詞は、「主格・前置格・与格・対格・生格(属格)・造格(具格)」という6つの「格」に変化させる必要があります。日本語の「てにをは」の役割と似ていますが、ロシア語には日本語の「てにをは」に相当する語はないので、名詞の語尾を「格変化」させます。この「格変化」のルールが非常に複雑なので、ロシア語の習得はとても難しいと言われています。

例)писáтел-ь(作家)の場合

主格 писáтел-ь
対格 писáтел-я
属格(生格) писáтел-я
与格 писáтел-ю
前置詞格(前置格) о писáтел-е
具格(造格) писáтел-ем

4. ロシア語の「名詞」には3つの「性」がある

ロシア語の名詞には「男性形・女性形・中性形」の3つの「性」があります。主語になる言葉の「性」に合わせて名詞を格変化をさせます。

男性形 ー 語尾が「Й,Ь」で終わるもの
女性形 ー 語尾が「А,Я」で終わるもの
中性形 ー 語尾が「О,Ё」で終わるもの

5.  ロシア語の「動詞」は変化する

ロシア語の動詞は、「完了体・不完了体」の2つのタイプがあります。「完了体」は動作の完了を表し、「不完了体」は進行中の動作や反復的動作を表します。

また、ロシア語の動詞は「人称変化」もあり、主語の人称によっても動詞が変化します(全ての動詞ではない)。動詞を過去形にする場合も、動詞を変化させます。

「人称変化」の例
Я люблю (私は愛している)
Ты любишь(あなたは愛している)
Он любит  (彼は愛している)
Мы любим(わたしたちは愛している)
Они любят (彼らは愛している)

日本語との違い

1.「アルファベット表記」だが発音は英語とは異なる

上記でも述べたように、ロシア語はキリル文字を使ったアルファベット表記をします。英語と同じアルファベットを使っていますが、発音は異なります。例えば、英語のP(ピー)はロシア語では(巻き舌の)「ル」です。英語のH(エイチ)は「ヌ」に近い音となります。英語のЕ(イー)は「イェ」という発音になります。Nが逆様になった「И」や、Еに点々がついた「Ё(イョー)」という文字もあります。

2. ロシア語「動詞」の表現が豊かである

ロシア語は表現が豊かな言語です。例えば、日本語の「会社へ行く」という文章は、ロシア語の「行く」(「идти」)だけで表現するのではなく、それが「乗り物で行く」のか「歩いて行く」のか「ちょっと立ち寄る」のか「会社の中に入る」のか詳細を説明するために「動詞」を変化させてニュアンスの違いを伝えます。ですので、 ロシア語翻訳を依頼する際には、状況のより詳しい説明が必要となります。豊かな動詞を使い分けることでより正確な意味を表すロシア語に翻訳することが出来ます。

3. ロシア語は「名詞」に「性」がある

上記でも取り上げましたが、ロシア語の名詞には「性」があります。これは日本語にはない概念です。ロシア語では「男性形」(語尾が子音,Й,Ьで終わるもの)、「女性形」(語尾がА,Я,Ьで終わるもの)、「中性形」(語尾がО,Е,МЯで終わるもの)の3つの性があり、その性によって単語が変化します。

日本語からロシア語は自動翻訳できるのか?

現状、英語からロシア語、日本語からロシア語の自動翻訳の質は高くありません。ビジネス文章や法律関係の文書を自動翻訳することはお勧めしません。単語レベルであればある程度正確に訳すことができますが、長文になると意味が全く伝わらない誤訳になってしまうます。自動翻訳ではロシア語特有の「格変化」が間違っていたり、「男性形・女性形・中性形」また「単数・複数」による文字の変化にまだ正確に対応することが出来ていません。自動翻訳の訳文は、単に単語を並べているだけで、文法が間違っていることがほとんどです。

ロシア語翻訳をする、依頼する際に気をつけておくべきこと

1.「納期厳守」であることを強調する

ロシアでは「納期厳守」であることをしっかりと伝えておかないと、期限ギリギリになってようやく行動を起こすというケースが多いです。ですから、余裕をもって納期を設定し、必ず期限を守るべきであることを強調する必要があります。時間厳守の日本人の感覚とは違い、約束の時間には遅刻することが多く、遅れた際には言い訳をする傾向も見られます。

2. ロシア語の文法に精通したネイティブのチェックを入れる

日本語からロシア語に翻訳する場合に、ロシア語ネイティブでも文法を間違えてしまうほど、ロシア語はとても複雑な言語です。ですから、必ずロシア語の文法に精通した、プロのネイティブにのチェックを入れる必要があります。

3. ロシア語の文字数を確認する

日本語原稿(A4用紙1枚)をロシア語に翻訳すると、同じようには(A4用紙1枚)収まりません。ロシア語は状況を説明するために沢山の単語を使うので、文字数が多くなってしまうからです。もし、A4用紙1枚に納めたいのであれば、日本語の文字数が少なめの原稿を用意するか、DTPで調整する必要があります。

日本語からロシア語の翻訳料金の相場

日本語からロシア語  8円~14円/1文字(分野によって変わる)
ロシア語から日本語  15円~21円/1文字(分野によって変わる)
*翻訳会社によっては、ネイティブチェックをするかしないかによって値段が異なります。

日本とロシアの商習慣の違い

1. 「前払金」を支払う習慣がある

ロシアでは「前払金」を顧客に請求します。前払金の金額は、顧客に対する信頼度によって変わります。何度か取り引きをしている顧客(信頼度が高い)には50%、初めての顧客(信頼度が低い)には60~70%の金額を請求します。支払いが確認されてから仕事に取りかかり、残りの金額は納品後に請求されます。

2. 事業年度について

日本では通常、事業年度は4月1日から翌年3月31日ですが、ロシアは暦年と同じです。

3. 紙面上の契約よりも個人的信頼関係を重視する

ロシアでは、トラブルを避けるために「契約書」を交わす事もありますが、紙面上の約束は守られないことが多々あります。ロシアでは紙面上の約束よりも、顔と顔を合わせて築いた個人的な信頼関係の方が重視されます。オンラインでビジネスを始める機会が増えている現在でも、まずは直接会って知り合う事を望んでいます。

ロシア人の仕事する上での価値観

1. 「サービスを提供する」という意識は向上しつつある

社会主義の時代は国民にお金が支給されましたので、仕事を頑張る必要性を感じていませんでした。販売員であれば、お茶を飲んでおしゃべりしているだけでも給料がもらえたのです。そういった感覚が旧ソ連の国々にはまだ残っており、お客様にサービスを提供するという意識が低い人たちもいます。ですが、今やソ連が崩壊して30年近く経過して社会主義時代を知らない世代が今やビジネスの中心的存在になっています。ビジネスにおいてお客様にサービスを提供するという意識や概念は確実に向上しています。(「お客様は神様」になっていくかどうかは分かりませんが)

ロシア人の仕事上の価値観は人によって様々です。世界に目を向け、社会主義時代のやり方では通用しないことを理解している人たちは、ビジネス成功のために「責任感」を持って仕事をしています。その反面、いまだに「いい加減」な仕事しかしない人たちもいます。ですので、ビジネスに関しては責任感のある信頼できる人材を確保することが大切です。

2. ロシア人は自由に意見を言い合う

ロシア人は、知らない人とはすぐに打ち解けられないのですが、一度深く知りあうと人間関係をとても大切にします。ロシア人とビジネスをする際には、まずお互いの信頼関係を構築することが必要です。ロシア人は自分の意見を自由に言い合います。一見喧嘩しているようにも見えますが、自由に意見を言い合う事でお互いへの理解を深めます。そして、意見を言ったあとは後腐れがありません。日本人は相手を「忖度」して意見を強く主張しませんので、随分と国民性に違いがあります。ロシア人とビジネスをしていく上では、こちら側の要求や意見をしっかりと伝えてゆくことが必要です。

まとめ

ロシア語は文法がとても複雑で難解な言語です。ロシア語のネイティブであっても文法を間違えてしまうこともあるほどです。ですが、ヨーロッパで一番多くの人が話している言語でもありますから、ビジネスでロシア語に翻訳する機会も多いことと思われます。今のところ、ロシア語翻訳に関しては自動翻訳を使用するのは難しい状況です。ビジネスにおいてロシア語翻訳が必要とされる際は、専門の翻訳会社に依頼してください。翻訳の株式会社アットグローバルは皆様のお役に立てるよう励んでおります。ぜひご利用下さい。

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