翻訳者が選ぶロシア語翻訳ツールアプリ10選
経済大国・資源大国として成長を遂げているロシア。 地理的には日本と近いとはいえ、言葉の壁は厚いです。非常に難解と言われているロシア語。ここではロシア語翻訳の際に利用できるツールと注意点をお伝えします。
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ロシア語翻訳ツールを使う際の気をつけるポイント
ロシア語の翻訳サイトでは日本語の「微妙なニュアンス」を汲み取れません。正確なロシア語に翻訳するためには、日本語の文章をロシア語に翻訳しやすく変える必要があります。誰が・何を・どのように、また過去形・現在進行形であるのかなど、具体的で明確な文章に変えなければならないということです。なぜでしょうか?ここではその説明をいたします。
1.「時制」が変わってしまうことがある
例えば、日本語で「風邪をひきました」という文章は過去形でもありますが、「現在進行形」でもあります。この文章を機械翻訳でロシア語に翻訳すると、「風邪をひいていました」と「過去形」に訳出されてしまいます。機械翻訳では、日本語の微妙なニュアンスを正確に判断することができません。日本語が過去形であると判断したら、ロシア語も過去形に訳出されてしまいます。
Yandexの翻訳サイトの翻訳例を見てみましょう。
例:日本語「風邪をひきました」(過去形または現在進行形)
→ ロシア語「у меня была простуда(風邪をひいていました)」(過去形)
では、「風邪をひいています」という現在進行形の文章に変えてみると、どうでしょう?
今度は正確な現在進行形のロシア語に翻訳することが出来ました。
ですから、ロシア語の機械翻訳を使用する際は、翻訳する日本語の文章を(現在か過去か)具体的で明確にしておく必要があることが分かります。このようなロシア語の翻訳例は、他の翻訳サイトでも発生しますので注意が必要です。
2.「男性形・女性形」の判断を間違うことがある
ロシア語翻訳の際は「主語」が男性なのか、女性なのかをはっきりさせる必要があります。例えば、「私は風邪をひいてしまいました」という文章では、風邪をひいた人の性別は分かりません。主語の「私」が男性なのか、または女性なのかを明確にしなければなりません。
Yandex翻訳サイトの翻訳例を見てみましょう。
例文:「私は風邪をひいてしまいました。」
機械翻訳では、主語の「私」が「女性」であると判断されてしまいました。女性が風邪をひいたときの表現「была」が使われています。このようにロシア語機械翻訳では、「主語」が男性なのか、女性なのかを明確にしなければなりません。この点も要注意です。
3.「丁寧語」のニュアンスが伝わらない
日本語の丁寧語を使った文章は、ロシア語翻訳では正確なニュアンスが伝わらないことがあります。例えば「一緒に行ってくれますか?」という文章は、ロシア語の機械翻訳では「君はわたしと行くの?」と訳出されてしまいます。丁寧なお願いをしているニュアンスが、上から目線で相手に尋ねる文章に変わってしまいます。機械翻訳ではこういったニュアンスの違いを読み取る点で限界があります。
では、丁寧にお願いしている文章に翻訳するためにはどうしたら良いのでしょう? 例えば、「風邪をひいています。薬を買いに行きたいです。一緒に薬局まで行ってもらえますか?」と、もっと具体的な文章に変えるとどうでしょうか?
このように内容を具体的な文章に変えると、ロシア語の訳文も「Вы(あなた)」(目上の人・敬意を示す丁寧な表現)という語が使用された文章に変わりました。
ですから、正確なロシア語に翻訳するためには、具体的な説明を加えた日本語の文章にしておくことが必要です。そうすることによって、伝えたい気持ちとそのニュアンスを正しく翻訳することが出来ます。
ロシア語の特徴
1.主格・前置格・与格・対格・生格・造格がある
ロシア語は「格変化」が複雑です。名詞の語尾を変化させなければならず、加えて名詞には男性形・女性形・中性形の区別があります。また主語になる言葉の性に合わせて、その後に続く語を変化させなければなりません。
男性形(語尾がЙ,Ьで終わるもの)
女性形(語尾がА,Яで終わるもの)
中性形(語尾がО,Ёで終わるもの)
ロシア語の動詞は完了体と未完了体があり、同じ動詞でも語尾が変化します。また人称変化もあり、主語の人称によって動詞が変化します。動詞を過去形にする場合も変化が必要です。ロシア語の格変化には法則がありますが、例外も多くとても難解です。
2.男言葉と女言葉がある
ロシア語にも男言葉・女言葉の違いがあります。動詞の語尾が「a」で終わっていると女言葉になります。
例:日本語「社長」→ ロシア語「понял」男言葉 /「поняла」女言葉
もし社長が「女性」である場合、機械翻訳にかける際は具体的に社長が女性であるという情報を入力しておかなければなりません。文章の中の名詞が男性形である場合、社長は男性であると判断されてしまうことがあります。この点も注意が必要です。
3. 単語の中の1つの母音を強く発音する
ロシア語は単語の中の一つの母音を強く発音する「ウダレーニエ」という規則があります。例えば、「понял(社長)」(発音:ポーニャル)では、一つ目の母音「o」を強調して発音します。一方、女言葉の「поняла(社長)」(発音:パニャラー)では一番最後の「a」を強く発音し、最初の「о」は(オ)ではなく(ア)と発音します。ウダレーニエがどこにつくかによって発音が異なります。すべての単語に同じ法則が適用できるわけではなく例外的な発音もありますので非常に複雑です。
ロシア語翻訳おすすめアプリ3選
1.Google翻訳
こちらはとても使いやすいアプリです。ロシア語をダウンロードしておけばオフラインでも翻訳できます。長文は得意としていませんが、1つの文章程度であれば正確に翻訳することが出来ます。カメラを使った翻訳機能が充実しています。カメラをかざすとリアルタイムで翻訳可能なリアルタイム翻訳があり、何が書いてあるのか全体を把握する際に役立ちます。さらにカメラで撮影した写真をスキャンして文字を認識し翻訳する事もできます。
2.Microsoft 翻訳
とても見やすくストレスフリーで使えるアプリです。翻訳の質は、単語や短いフレーズであれば、正確で自然な翻訳が可能です。履歴ボタンで過去の翻訳を見ることもできます。言語をダウンロードしておけばオフラインでも使用できます。会話機能がついており、両者の携帯電話にこのアプリを入れておけば、リアルタイムで会話を翻訳する事ができますので、ロシア人との商談や会話の際に役立ちます。
3.ロシア語翻訳/辞書(GreenLıfe Apps)
インターフェイスが英語なので、英語が堪能な方には使いやすいアプリです。こちらのアプリは、日本語からロシア語への翻訳、ロシア語から日本語への翻訳両方において翻訳の精度は高いです。学習機能や辞書などの機能もあります。残念なことに日本語−ロシア語の辞書はないのですが、英語–ロシア語の辞書はダウンロードすることが出来ます。Google翻訳やMicrosoft翻訳ほどの拡張機能はありませんが、正確な翻訳が可能なアプリであると言えます。
ロシア語翻訳おすすめWEB サイト4選
いくつかのロシア語翻訳サイトで翻訳文にどのような違いが生じるかを比較してみましょう。
例文は、「風邪をひきました。薬を買いに行きたいです。一緒に来てくれますか?」です。あえて主語の「わたし/あなた」は使わず、日本語での自然な会話文にしてみます。ロシア語では主語が「誰か/何か」が重要で、この主語によってその後の言葉が変化していきます。この「格変化」を機械翻訳で正確に翻訳することができるのか検証してみます。
1.Google翻訳
https://translate.google.com
とても自然な訳になっています。「あなた」という主語を省略しましたが、「Ты(君は)」と主語が訳出されています。「Ты」は近しい間柄で使う表現です。それほど親しくない人に丁寧にお願いする場合は「Вы」を使います。今回Google翻訳では、この状況は近しい間柄の人との会話と判断したようです。
Google翻訳はAI機能がしっかりと働いています。言語を自動で認識し、手書き機能や読み上げ機能もあるので便利です。画面も大きく、2画面に分かれており見やすくなっています。翻訳文が長文になると主語の判断が難しく、誤訳が発生する傾向があります。ですが、短いセンテンスに区切って翻訳することで、正確なロシア語翻訳が可能です。
2.Bing Microsoft 翻訳
https://www.bing.com/translator
Google翻訳に負けず劣らず、自然な翻訳文となっています。主語も間違いなく訳出しており、優秀なサイトと言えます。特に最後の文は相手に丁寧にお願いする表現に訳出されました。他のサイトと比べ翻訳センスが良いように感じます。少し画面が小さめですが、使用に支障はありません。音声翻訳の機能もあり便利です。こちらのサイトも長文の翻訳はあまりお勧め出来ません。短い文章で翻訳する事をお勧めします。
3.Excite翻訳
https://www.excite.co.jp/world/
こちらの翻訳サイトでは、2000文字まで一度に翻訳することが出来ます。長文を翻訳したい場合に役に立つ翻訳サイトです。翻訳の質は、Google翻訳と同程度と考えて良いと思われます。このサイトには再翻訳機能がついています。すでに翻訳した訳文をソース言語に再翻訳することによって、さらに正確なロシア語の文章に仕上げることが出来ます。
再翻訳した訳文は、正確なロシア語となりました。特に最後の一文は「一緒に来ると」と再翻訳していますが、ロシア語でもまさにそのように訳されています。
4. Yandex翻訳
https://ceviri.yandex.com
Yandexはロシア版のyahooとも言えるサイトです。こちらのサイトでは「わたしは風邪をひいていました」という過去形で翻訳されています。風邪をひいたのは過去の事なので日本語の直訳としては正解なのですが、この日本語の表現は現在進行形をも表していますので、正確なニュアンスは訳出されていません。ですが、日本語の言葉を直訳するという点では正確ですので、正確なロシア語に翻訳するために日本語の文章を変えることが必要となります。
ロシア語翻訳おすすめツール3選
1. Papago
(App: Android / ios)
キーボードからの入力・音声入力・会話翻訳・画像翻訳の機能があります。とてもシンプルで使いやすいアプリで、翻訳の質は比較的良く、iPadや携帯電話に入れておくと便利に利用できます。写真に撮った文章(画像)をスキャンして、翻訳してくれる機能はとても役に立ちます。
2. Imtranslator 翻訳サイト
http://imtranslator.net/compare/japanese/to-russian
3つの翻訳サイトでの翻訳文を同時に見ることが出来ます。例えばgoogle翻訳、MS翻訳などの表現の違いや、正確性などを比較することが出来ます。さらに、再翻訳の機能を使用して以前の訳文との違いを確認することも可能です。インタフェースが英語ですが、それほど不便さを感じることはないと思われます。良い機械翻訳ツールと言えるでしょう。
3. Yandex Translate / Yandex LLC
(App: Android / ios)
インタフェースはロシア語ですが、全くロシア語が分からない場合でもソースとターゲットのどちらかを日本語に設定すれば、直感的に使用できるアプリです。(日本語は「Японский 」)日本語からロシア語への翻訳の質は高いと言えます。手入力・音声入力・画像からの翻訳など、他の大手の翻訳アプリにある機能は付いています。最初の日本語への設定が出来れば使える翻訳ツールです。
翻訳者が選ぶロシア語翻訳ランキング1~3位
1位:Yandex Translate / Yandex LLC
( App: Android / ios)
本場ロシアのアプリなので、ロシア語への翻訳の質は高いです。一般的に他の翻訳ツールはいろいろな便利な機能が付属していることが多いのですが、翻訳に関しては機能の便利さよりも翻訳の品質が高いことが一番重要です。その点でYandexのアプリもしくはサイトは優秀であると言えます。
2位:Imtranslator 翻訳サイト
翻訳する際に同時に2つの翻訳サイトを確認できるので便利です。それぞれの訳文から良い部分を切り取って使うこともできますし、翻訳の作業時間を短縮する事が可能です。翻訳そのものに当てる時間を短く出来る分、他の作業(スタイルの修正など)に時間をかけることが出来ます。とても効率的に作業ができるアプリと言えます。
3位:Google翻訳 App/翻訳サイト
大きな2画面で翻訳文を読みやすいですし、翻訳をボタン一つ(アプリの場合長押し)で翻訳文をコピーすることが出来るので、機械翻訳をコピーして貼り付けるという作業に向いています。長文の翻訳には向いていませんが、短い文に区切って翻訳するのであれば正確な翻訳が可能です。大手サイトの安定感があるのでお勧めできる翻訳サイト(アプリ)です。
まとめ
ロシア語で翻訳を機械翻訳ツールを使用して行なうときには、正確な翻訳のために日本語の文章を具体的にする、主語の性を明確にしたりするなどの様々な工夫をしなければなりません。ロシア語は非常に難解な言語ですので、正確さが求められる文書の翻訳には機械翻訳だけでは対応できないことが多々あります。ビジネス文書の翻訳は、株式会社アットグローバルなど専門の翻訳会社にお願いしましょう。