難解な単語「credit」を解説②:ビジネス翻訳の舞台裏

はじめに
前の記事で、creditの翻訳の難しさは分野によって意味が変わる事、そして日本語の「クレジット」と英語のcreditの意味が必ずしも一致しない事を取り上げました。
今回は、実際に現代英語で使われる文例を通して、creditという語の意味の広がりを追ってみましょう。
「信じる」
前回取り上げたように、creditの語源はラテン語の「信じる」から来ていました。
ですから、「信用、信頼、信望」といった概念はcreditの元になる意味と言えます。「名誉、功績、功績の認知」もこれに近い考えです。著作権や制作者、情報源の記載も、「功績」から派生した概念と捉えることができそうです。
大学の単位は、その大学を卒業するために信用を積み上げるものであると考えると、creditのこのメインの概念にあったものと言えます。
英語では名詞としても動詞としても使われます。
I give credit to his story.
彼の話を信用する。
Thomas Edison is credited with the invention of light bulb.
トーマス・エジソンは電球の発明の功績がある。(電球を発明したのはトーマス・エジソンである。)
「貸す」
“credit”は「信用」から範囲を広げて、「信用貸し」「信用販売」という考えを持つようになりました。「クレジットカード」や「政府の借款」はここに含まれる言葉です。
ただ、日本語でも英語でも、実際にお金を借りる事をクレジットとはあまり言いません。実際にお金を借りる場合、日本語ではキャッシング、もしくはローンと言います。英語ではcash advanceもしくはloanが使われることが多いです。
政府の借款のことを日本語では「クレジット」と呼びますが、英語では”loan”が使われるのでこのあたりも翻訳には注意が必要になります。例えば「対中円借款」は”Yen loan to China”です。
信用販売の一形態である掛売は英語でcredit saleと呼ばれ、これは英語でcreditが「貸す」意味に使われる一例です。
意味 | 日本語 | 英語 |
---|---|---|
クレジットカード | クレジットカード | credit card |
政府間の借款 | クレジット | loan |
個人・法人向けの融資 | ローン | loan |
用途自由な現金の借入 | キャッシング(カードローン) | cash advance |
分割払い(月賦) | 分割払い(月賦) | pay by installments |
月ごとの後払い | 掛売 | credit sale |
このようにまとめてみると、“credit”は「お金を貸す」という概念ではありますが、具体的な取引には別の言葉が使われることが多い印象です。
ここまでのまとめ
“credit”の持つ3つの大きな意味のうち2つを考えてきました。日本語の「クレジット」の持つイメージと、実際に使われている英単語に違いがあることがわかりました。大事な文書での翻訳ミスは大変なことになりかねないので、注意が必要ですね。さて、3つの意味の最後のひとつは「お金の移動元」ですが、こちらは主に経理や会計といった分野で使われるため、さらに難解になります。こちらは次回、実際にお金の移動を追いながら考えていきましょう。