日本語の条件表現をマスターしよう④ 「ば」を上手に使う
日本語の条件表現「と」「ば」「なら」「たら」について考えています。このうち「と」の使いかたについて前回取り上げました。
「と」は恒常条件のニュアンスが強く、前件から後件まで順当に物事が進む場合に使われる表現でした。今回は「ば」について考えていきます。
「ば」の特徴
では前回と同じようにそれぞれの要素から「ば」を使うのがふさわしい場合を考えてみましょう。
条件の種類
前件が仮に成立した場合、それを条件として後件が成立する表現(仮定条件)。
「雨が降れば、試合は中止される。」
前件を条件として、後件が常に成立する表現(恒常条件)。
「雨が降れば、地面が濡れる。」
前件が既に成立しているものとして、後件を説明する表現(確定条件)。
「これだけ雨が降れば、水不足にはならない。」
「ば」は仮定条件のニュアンスが強めです。未成立の出来事に対しての仮定、もしくは原因や理由を説明するといった意味合いが強く出ます。
現実と非現実
非現実的な事や、現実かどうかわからない事にも使うことができます。
○「明日槍が降れば、行かない。」(非現実的な仮定)
○「現地で雨が降っていれば、タクシーに乗る。」(現実かわからない仮定)
逆に、未成立の事柄を仮定するという性質上、現実的な事や確定済の事柄では使えない場合があります。
×「枕を変えれば、眠れるようになった。」
時間と焦点
物事の理由や根拠、きっかけを強調する表現ですので焦点は前件にあります。前件に対して後件は時間的に後のことになります。こう見ると「と」との差があまりないように見えますが、以下の2文で微妙にニュアンスが変わることがわかります。
「この問題が解決すると、プロジェクトは軌道に乗る」
「この問題が解決すれば、プロジェクトは軌道に乗る」
上の二つの例文を比較してみると、「ば」を使用したほうが問題の解決が重要だというニュアンスが表せます。
モダリティ
前件の述語が動作の場合、後件に命令、意志、希望、依頼は使えません。
×「メールを受信すれば、教えてください。」
前件の述語が状態の場合は上記のモダリティを使うことができます。
○「寒ければ、窓を閉めてください。」
レジスター
レジスターは中程度です。書き言葉として使ってもほぼ違和感はありません。
○「ここをクリックすれば、ホームページが開きます。」
前件に丁寧語を使うことはできません。
×「メールが届きませば、手続きは完了です。」
「ば」のまとめ
仮定色が強い文脈、原因や理由を説明する文脈では、「ば」がニュアンスをうまく表現できます。
また、後件にネガティブな内容が来る場合にはあまり使われません。
○「食べ過ぎると、具合が悪くなります。」
×「食べ過ぎれば、具合が悪くなります。」
「と」と「ば」は似ている表現ですが、恒常条件が強い場合は「と」、仮定条件が強い場合は「ば」と、うまく使い分けることができれば表したいニュアンスを一文字で表すことができますね。