日本語の条件表現をマスターしよう③ 「と」を上手に使う
日本語の条件表現「と」「ば」「なら」「たら」について考えています。これらの使い分けには様々な要素が関わってくることを前回取り上げました。
今回からはこれらの4つの表現の持つ性質を1つずつ掘り下げていきます。今回は「と」について考えていきましょう。
「と」の特徴
それでは、これまでに取り上げた要素から、どのような場合に「と」を使うのがふさわしいのかを考えてみましょう。
条件の種類
前件が仮に成立した場合、それを条件として後件が成立する表現(仮定条件)。
「雨が降ると、とても困る。」
前件を条件として、後件が常に成立する表現(恒常条件)。
「雨が降ると、地面が濡れる。」
前件が既に成立しているものとして、後件を説明する表現(確定条件)。
「こんなに雨が降ると、作物がダメになる」
「と」は恒常条件の意味合いが強くなる表現です。仮定条件、確定条件の場合でも、いつも同じ結果になる、至極順当な結果である、というニュアンスが含まれます。
現実と非現実
上記のように「結果が至極順当である」という考えが含まれるため、非現実的な仮定の場合や、限定的な仮定の場合に「と」は使えません。
×「明日槍が降ると、行かない。」(非現実的な仮定)
×「明日雨が降ると、行かない。」(限定的な仮定)
時間と焦点
時間的な順番は前件が先になり、逆では使えません。前件から後件の移行は比較的早く、場合によってはほぼ同時に起こります。
「ドアを開けると、ベルが鳴る。」
また、前件が起これば順当に後件が起きるので、焦点は前件にあります。
モダリティ
後件がモダリティを持つ場合は使えません。
×「メールを受信すると、教えてください。」
レジスター
レジスターは高く、会話より文章で使われる表現です。汎用性が高く、書面やホームページの文章など広い場面で使うことができます。
○「ここをクリックすると、ホームページが開きます。」
前件に丁寧語を使うことが可能です。
○「メールが届きますと、手続きは完了です。」
「と」のまとめ
「と」の用法を全体的にみると、前件から後件に順当に移行する、また前件のすぐ後に後件が発生するという特徴があります。どの条件表現がよいか迷った場合、それが恒常条件であれば「と」を選ぶのが一番無難であると言えるでしょう。