どうやって訳文チェックする?プロの翻訳者に聞いてみた

「なんだかこの文章おかしいぞ?」翻訳した文章がおかしい事に気が付かずに世に出てしまった、という事例を見た事がありませんか?

翻訳文書に限らず、人間が作った文章には"タイポ"がつきものです。また、本当に読みやすい文章にするには推敲が必要です。今回は日本語の読みやすさをどのようにチェックしているのか、プロの翻訳家に聞いてみました。

デジタルツールによるチェック

私たちが普段使っている文書作成ソフトウェアにも、ある程度の日本語チェック機能が搭載されています。

Microsoft Word

例えば、Microsoft Wordでは30年以上前から日本語校正機能が搭載されています。リアルタイムで表記ゆれや文体ゆれを指摘してくれ、その精度も年々向上しています。Google Docsにも日本語校正機能が搭載されていますが、指摘内容はWordよりもずっと少ないです。

Microsoft Wordの日本語校正機能

JustSystems Just Right! Pro

日本語校正に特化したツールとして有名なのがJust Right!です。西暦和暦違いや、同じ助詞の連続、回りくどい表現など、かなり細かくチェックしてくれます。明らかな間違いではないものの、読みにくい表現までチェックしてくれますので、翻訳業界でも出版業界でも最もよく使われています。

また、社内で日本語スタイルが指定されているかもしれません。公用文にはいくつかの公開された日本語スタイルが存在します。そうしたスタイルに則っているかどうかもチェックしてくれます。

Just Right!の日本語校正機能

このように、デジタルツールを使った機械的なチェックにより手作業に比べて効率的に校正作業が行えるようになりました。

しかし、翻訳者はこのようなツールを使った機械的な校正だけでは不十分だと言います。

デジタルツールの落とし穴

言語は大変複雑で、「大丈夫、Just Right! でチェックしたから」と思っていると足下をすくわれます。

今のところJust Right! での検出率は、タイポでさえ五分五分です。機械的にすべて検出できるほど日本語は単純ではありません。Just Right! のようなデジタルツールは最初の基本チェックくらいの気持ちで使ったほうがよいと思います。

翻訳者

そこで、翻訳者が校正で必ずやっている作業があります。

「素読み」の大切さ

プロの翻訳家が校正で必ず行っているのが「素読み」です。「素読み」というと、印刷業界では原稿を見ずにゲラ刷りをチェックすることですが、翻訳業界では「原文を見ずに訳文をチェックする」ことを素読みと呼びます。これにより打ち間違いやスタイルミスを見つけ、読みにくい箇所を発見できるのです。

もちろん翻訳ツール上で原文と隣り合わせになった訳文も突き合わせてチェックしますが、それはあくまでも翻訳抜けや、数字のチェックをするためです。日本語校正という面では、原文が気になったり、そもそも文書表示が翻訳作業用に細かく区切られているために、素読みには適していません。

柔らかくなった大根に竹串がすっと入るように、1回読んだだけでスッと入ってくる訳文を書く事が翻訳家には求められます。ちょっと頭を使って読まなければならない文は、必ず改善の余地があります。

プロの翻訳家は素読みをとても大切にしているようです。

編集部では日本語をもっと読みやすくするための記事を、今後連載する予定です。[翻訳]>[日本語]のカテゴリに掲載し、月一回のメールマガジンでお知らせいたしますので、ぜひご登録ください。

まとめ

どんなに上手な翻訳家でもミスはしてしまうものです。ミスの発見や読みやすい日本語文書にブラッシュアップするにも、校正作業は欠かせません。今後AIの発達によりこのあたりの技術がどうなっていくのか気になりますね。でも今の所、デジタルツールが発達し効率化やミスの削減はできても、人間が読む文章は人間による素読みが不可欠のようです。

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