【インバウンド獲得の切り札?】音楽フェスが地方に与える経済効果とは

2022年8月18日

はじめに

音楽フェスは国民的な娯楽となりました。地方で行われるため宿泊・交通・外食等の経済効果も非常に高く、インバウンド獲得や地域活性化の観点でも注目されています。

最近では地域密着型・小規模のフェスも増え、地方自治体が挑戦するハードルも低くなっています。

では、音楽の力で地域を盛り上げるにはどうしたらよいのでしょうか。

この記事では、音楽フェスと地域活性化の関係・将来性について考察し、地域密着の音楽イベントを行いたいと思っている自治体にヒントとなるような情報をお届けします。

フェスの成功例を見ながら、地域が連携してイベントを盛り上げることの大切さ、オーバーツーリズムを起こさないためにできることなどを考えてみましょう。

音楽フェスの力と地域経済への効果

音楽フェスとは、ロック・フェスティバルとも言われます。

多数のロックバンドが参加する大規模な音楽コンサートのことです。

俗にロックフェスと略すことが多く、もっと縮めて「フェス」と呼ぶこともあります。

集客力を増大するために、多くのバンドが出演する所が特徴で、音楽ジャンルもロックだけに限定せず、ポピュラー音楽全体を対象とするものが多いです。

音楽の力|高価なチケットが即完売する理由

日本で初めてロックフェスが開かれたのは、1969年の「全日本フォークジャンボリー」でした。

そして今のロックフェスの先駆けとなったのが1997年に開催された「フジロックフェスティバル」。その後ブームとなり、今では夏の風物詩のような国民的娯楽へと変化してきました。

毎年、お気に入りのロックフェスに参加するのが恒例行事という人も増えてきました。

一番高額だと言われるフジロックのチケットは3日通し券だと5万円近くしますが、出演者発表と同時に争奪戦となる人気ぶりです。

すでにブランド化されていること、リピーターが多いこと、出演者が豪華で満足度が高いことなどが「高くても売れる」要因と思われます。

フジロックのリピーターは、アーティストの演奏も楽しみにしていますが、それ以上に「フジロックという空間」にいることを楽しみにしています。ですから、三日間のイベントが終わって帰る時に、翌年の分のホテルを予約していく人も多いそうです。

経済波及効果大!町おこしに最適

音楽フェスは町おこしにも最適です。

特に、地方や観光資源が乏しい地域では効果的と言えます。観光地ではない所でも、音楽フェスを目的に全国から多くの人が集まり、地域の活性化に貢献してくれるからです。

その効果の一つが、定期開催することで地域の知名度が上がることです。知名度が上がればそれだけ集客力が上がり、交通機関の利用者や、宿泊施設の利用者が増えます。

さらに、ロックフェスに参加した人たちの発信力も大きな力になります。上手にアピールすることで、参加者を通して地元の特産品にも注目を集めることができるでしょう。

このようにして、経済的な消費と雇用が生まれ、大きな経済効果が期待できます。

音楽フェス成功例と経済効果

では、具体的にはどのくらいの経済効果があるのでしょうか?

大規模ロックフェスと地域密着型フェスの実際の経済効果について調べてみると、これからイベントの開催を考えておられる皆さんにヒントとなるかもしれません。

実際に開催され、成功したいくつかのフェスの具体的な数字を見てみましょう。

ロッキンジャパン:77億円超の試算

一つ目に取り上げるのは、毎年、茨城県ひたちなか市海浜公園で夏に開かれていたロッキンジャパンです。

有名アーティストがたくさん参加するこの音楽フェス、開催時期には各地から泊りがけで大勢のファンが集まります。仕事のために水戸へ通っていた娘は、その時期になると大きなスーツケースを持った人がいっぱいで、電車が満員で座れないとぼやいていたほどです。水戸駅周辺のホテルや駅ビルも、いつもとは比べ物にならないくらいに賑わっていました。

昨年は中止になってしまいましたが、そのために生じた経済損失が試算されました。1日1万人の観客として、過去の実際のデータから算出すると、チケット代、交通費、宿泊代、会場内飲食代、事前準備消費などを含めて、毎年77億円越えの経済効果をもたらしていたことがわかりました。

フジロック:経済波及効果は151億超

フジロック参加者の消費はチケット代だけではありません。1日券利用者以外はほぼ宿泊しているので、地元のホテルは高い稼働率を期待できます。会場となる苗場スキー場は、7月と言えば閑散期です。その時期にホテルを満室にできるのは大きな利点です。

宿泊客は多い人で3泊4日、4泊5日という人もいます。滞在期間が長ければ、当然、そこで飲食をしますし、お土産の購入もあります。地元のレストラン、食堂、ショップはフジロック開催期間の経済効果に大いに期待するはずです。

先ほども少し触れましたが、フジロックは常連客も多く、リピーターであるほど消費する金額も増える傾向があることから、継続して経済効果が期待できるという訳です。

宮古アイランドロックフェス:4億超

ロッキンジャパン、フジロックのような大規模フェスができなくても、地元密着型で利益を上げているフェスがあります。2005年から宮古島で開かれていた宮古アイランドロックフェスです。

コロナの影響で無期限延期になっていますが、2016年の開催時には4億円を超える経済効果がありました。

地元で支出される宿泊費、交通費、飲食代、会場設営費などに加えて、そのために発生する雇用や産業からも間接的な消費が生まれることにより、4億円を超える経済効果が生まれたと計算することができます。

成功するフェスの特徴は?

この記事をご覧になっている地方自治体や観光協会の関係者の中には、「ぜひ自分たちの街でも音楽フェスを開催しよう」と思われた方もおられることでしょう。

実際に計画する前にぜひ考慮しておきたいポイントを3つご紹介いたします。

地域住民の理解と連携

まず、地域住民の理解と連携は不可欠です。フジロックが開催される苗場スキー場がある湯沢町の例について考えてみましょう。

1999年にフジロックが来ることが決定した時、多くの反対の声があったそうです。その背景には、以前に町の野球場を利用して行われた音楽フェスの評判が悪かったことがありました。その主な要因の一つがマナーの悪さです。

しかし、開催者と町がよく連携し、地域住民の理解を得るために努力した結果、その問題を乗り越えることができました。今では地域ぐるみでフジロックを大切にしようという意識が浸透したそうです。

理解が得られればボランティア等も増え、地域全体で歓迎することができ、訪問者の満足度にも繋がります。

オーバーツーリズムを避ける

オーバーツーリズムとは、観光地に対して多すぎる観光客が訪れるために起こる問題です。

過疎化に悩む地域の場合、集客に成功しても宿泊先がないという問題が発生します。また、交通渋滞や人混みのために地域住民の生活に支障をきたすこともあります。

そんな問題が発生したら、せっかく集客できてもトラブルばかりで、継続してイベントを行うことができなくなります。

よく計画を立ててオーバーツーリズムを避けましょう。地域のキャパシティを考えたチケット数にする、分散して受け入れる、限定的に交通の便を増やす等の方法を実行して成功している自治体もあります。

デメリットを抑える対策も十分考慮し、経済効果や地域の活性化というメリットを十分生かせるアイディアを考えていきましょう。

外国人観光客へのクリーンなおもてなし

フジロックは「世界一クリーンなフェス」を掲げています。年々、インバウンドの観客も増えているため、多言語サイト・動画を使ってマナー向上を呼びかけています。

2018年の公式サイトでは、「OSAHO(お作法)」という日本語のマナーを強調する動画を公開し、日本らしさとマナーを守ることの大切さを訴えました。

外国人客の反応も良好です。音楽イベントらしく、音楽にのせたメッセージは外国人にもわかりやすく、また周辺住民も安心しておもてなしできるため、双方にとって良い効果となっています。

外国人観光客増加によるマナー低下を心配するよりも、外国人に協力してもらい一緒に良いフェスを作るにはどうすれば良いかを考え、多言語対応を進めることが成功の秘訣といえます。

まとめ

音楽フェスは、今や夏の風物詩となりました。コロナの影響で中止された年もありましたが、少しずつ再開されるようになってきています。

その成果はチケットの完売ということだけでなく、周辺の宿泊施設・レストランや交通機関への経済波及効果も大きいことがわかっています。

音楽フェスは人口減少に悩む地域を活性化させる秘策となるかもしれません。

参加する人も、迎える地域の人たちも双方が楽しみにできる、そんなイベントにできるといいですね。

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