「ブルーツーリズム」とは?インバウンドにも繋げたい漁村活性化の成功事例・支援策を紹介

海 女性

はじめに

都会の喧騒から離れ、島や漁村などでの体験を通じて心身を解放させるブルーツーリズム。注目が集まっているこの体験型ツアーに、島国である日本が力を入れない理由がありません。政府は今後ブルーツーリズムに積極的に支援を進めていくことが予想されるので、漁村や浜辺を持つ地方自治体もこの波に乗り、ブルーツーリズムを推進していくべきです。そしてインバウンド需要にも繋げていきたいところです。

そこで、この記事では「ブルーツーリズムって何?」という疑問から、「どうやって漁村を盛り上げるのか?」という疑問まで、ブルーツーリズムに関する情報をまとめました。

ブルーツーリズムとは?推進支援策も紹介

「ブルーツーリズム」とは、島の沿岸部や漁村に滞在し、現地での生活を体験することで見も心もリフレッシュさせる旅行プランのことを指します。

従来の観光名所を巡るようなツアーではなく、現地の生活や習慣などを体験することでリフレッシュすることを目的としたツアーです。近年話題のSDGsの観点からも注目され、日常から離れた体験がしたい、またはエコ意識が高い旅行客に人気があります。

ブルーツーリズムの目的

ブルーツーリズムの目的は、旅行客の心身をリフレッシュするだけではありません。沿岸部や地域の漁村がブルーツーリズムを通し旅行客との交流で地域に誇りを持ったり、普段は都市に住んでいる旅行客とのコミュニケーションを行ったりすることも目的のひとつです。

また、ブルーツーリズムは、新しい産業の創出や海への意識の向上にも役に立ちます。たとえば浜辺という場所が持つ「海水浴をするだけの場所」という固定観念を、「生物の観察を行う場所」や「地引網を行う場所」などと認識を変えてくれるものでもあります。

推進支援事業の具体策

政府もブルーツーリズムを支援しています。観光庁では、ALPS処理水の海洋放出による風評への対策として、岩手県や宮城県、福島県や茨城県でブルーツーリズムを推進する地域を公募しています(2022年7月25日現在)。具体的には、海に焦点をあてたプロモーションの強化や、海の魅力を体験する取り組みを行っている地方自治体、またブルーフラッグ認証(ビーチやマリーナ、観光船舶対象とした環境認証)の取得に向けた取り組みを支援するものです。

この観光庁の支援により、対象地域以外でも海を活用したレジャーへの注目が集まるでしょう。他の沿岸地域でも、ブルーツーリズムに挑戦する良い機会です。

水産庁「浜プラン」との連携

水産庁は浜の活力再生のため、「浜プラン」の策定、そして実施を沿岸地域に促しています。浜ブランとは、「漁村地域の活性化を目指し、漁業者が主体となって計画、そして実行する取り組み」のことです。この浜プランは漁業関係者が主に取り組むものとされていますが、海に関わる地域産業に携わる人すべてが一体となって動くことで、より効果的に地域活性化が見込めます。

このように、観光庁・水産庁などが沿岸の地域活性化の支援をしています。国を挙げてブルーツーリズムを推進していく流れができているのです。

ブルーツーリズムに対する外国人の評価

外国人は、「日本の自然」を感じることができるブルーツーリズムを好む傾向があります。日本の観光名所を巡るのも良いですが、現地ならではの自然を体験することができるブルーツーリズムも、外国人にとって魅力的なのです。実際の口コミを見て、外国人のためのブルーツーリズムを考えましょう。

沖縄県:万座毛

沖縄県恩納村の万座毛は、透き通った青い海が非常に美しい名勝地です。石灰岩の絶壁が象の鼻のような奇岩を構成し、ブルーツーリズムのプログラムに組み込むにはうってつけの名所です。万座毛を訪れた外国人の口コミを紹介します。

We drove here and fell in love with this place. You should visit if you can the view is fantastic. Best time to go at around 5pm when the sun set.
(和訳:車で来て、この場所に恋しました。もしこの素晴らしい景色を見れる機会があるなら、ぜひ訪れるべきです。おすすめの時間帯は、日が沈む午後5時頃です)

The hotel we chose was very close to this beautiful site so we were able to spend 30 mins to an hour enjoying the view and capturing some great shots!(和訳:私たちのホテルはこの万座毛にとても近いので、ゆっくり30分~1時間は景色を楽しみました。素晴らしい写真も撮れました!)

このように、万座毛は外国人観光客に人気のスポットです。自然そのものを感じられるツアーが人気で、沖縄県内でも雄大な自然を感じられる万座毛の英語口コミ評価が高いのが特徴です。(参考・口コミ出典:「トリップアドバイザー:万座毛」)

万座毛に限らず、沖縄県はその海の美しさから家族連れやマリンスポーツ好きにアピールできます。

鹿児島県

桜島で有名な鹿児島県も、ブルーツーリズムに取り組んでいる地域です。内海の錦江湾内は通年で波が穏やかであり、海や水辺の体験ツアーに最適なのでしょう。「ブルーツーリズム鹿児島」(https://www.blue-tourism-kagoshima.com/all-activity)では、台湾から鹿児島を訪れた若い女性の体験レポート「桜島が近い!海でお手軽に遊んじゃいましょう」が掲載されており、SUP体験を錦江湾で行い、日本の海を楽しんでいる様子が見られます。

さぁ、次はSUP体験です!
最初は水に落ちるのが怖かったのですが、このカヤックはかなり安定しています
(「桜島が近い!海でお手軽に遊んじゃいましょう」より抜粋)

鹿児島県はブルーツーリズムに力を入れています。SUP体験だけではなく、クルージングや釣り、ダイビングや錦江湾の生物観察ツアーなど、様々な自然体験プランを揃えて旅行客を迎えているのです。自然体験はファミリー向けという印象が強いかもしれませんが、ダイビングやSUP体験のようなものは、若い女性観光客にもアピールできます。

では、ブルーツーリズム成功のためにどんな取り組みを行えばいいのでしょうか。成功事例を見てみましょう。

ブルーツーリズム成功事例

実際のブルーツーリズム成功事例を紹介します。

ふくしま浜通り:動画で浜の魅力をPR

福島県浜通りは太平洋に面したエリアです。東日本大震災で大きな影響を受けたエリアですが、ブルーツーリズムに着目し、風評被害を乗り越えて成功させた事例です。浜通りを相馬エリア、双葉エリア、いわきエリアと分けて、旅行客が何を求めているのかによって行くべきエリアを分かりやすく示しています。またYouTubeでブルーツーリズムをアピールする動画(https://www.youtube.com/watch?v=IkekmoHELWg)を投稿するなど、県をあげてブルーツーリズムに取り組んでいます。

北海道標津町:サケを用いた体験が話題

北海道表津町は、日本最東端に位置する漁村です。この地域は、特産品である鮭に注力してブルーツーリズムを成功させた事例です。サーモンフィッシングや秋サケの加工体験、郷土料理作りなど、漁村生活を体験できる体験プログラムが人気です。水産物を地域全体で守っていく「地域HACCP」を導入することで、町全体がひとつになってブルーツーリズムに力を入れています。

茨城県大洗町:漁村の「かあちゃん食堂」

茨城県大洗町は昔からアンコウで有名な地域です。しかしアンコウだけに注力するのではなく、食堂「かあちゃんの店」の取り組みにより、水産庁長官賞を受賞した事例です。「かあちゃんの店」は大洗町の漁協組合女性部で作られた食堂で、市場価値の低い魚に付加価値を付けて価値を上げることを目指し作られました。中小企業診断士による勉強会や水産試験場による衛生管理指導を経て、平成22年にオープンした後、メディアに取り上げられる度に人気が出て、今では地域を代表する店となっています。こちらもブルーツーリズムに成功した事例といえるでしょう。

【自治体】ブルーツーリズム挑戦のために必要なこと

ブルーツーリズムを成功させるには、地域との連携や情報発信が不可欠です。行政が地域に押し付けるようなかたちでブルーツーリズムを推しても成功しませんし、いくらブルーツーリズムに取り組んでも情報を発信しなければ誰にも届きません。先にあげたブルーツーリズム成功事例を見て、成功させるためには何が必要なのか、心構えを見ておきましょう。

住民の負担にならないシステムを

ブルーツーリズムが住民の負担になってはいけません。ブルーツーリズムはあくまでもビジネスであり、旅行客に金銭を求めないおもてなしではないのです。金銭を求めないボランティア精神は、いつか必ず住民の疲弊を招きます。持続的なブルーツーリズムを成功させるには、その地域の住民に負担にならないシステム作りが大切です。漁村体験など、漁業者から道具を借りるような体験でも貸出料を取るようするなどの取り組みが必要です。

利益を上げて地域に還元

ブルーツーリズムはビジネスです。ビジネスである以上、利益を上げることを目標にしなければいけません。漁村や地域などの協力を得て試行錯誤するものなので、その利益は地域に還元すべきです。この利益で、漁業者は漁船などの仕事道具を新しくすることができます。そしてそれは漁村をより発展させることになり、まわりまわってブルーツーリズムの成功につながるのです。

「ここでしかできない」ポイントを情報発信

安定して旅行客を迎え入れるためには、「ここでしかできない」体験を用意することが必要です。新規旅行客を次々と受け入れるよりも、リピーターを増やすほうがブルーツーリズムの成功につながります。では、リピーターを増やすにはどうしたいいのか。それは、その地域、その漁村でしか体験できない「売りポイント」を見つけることが重要です。

また、地域全体を巻き込んで情報発信をすることも大切です。売りポイントが見つかり、「ならばそれを推していこう」となったとき、リーダーシップを取るのは行政が適任です。行政が地域の情報をまとめて、動画やSNSでアピールするのが良いでしょう。動画やSNSは「この地域に行けばこんな体験ができる!」とわかりやすく伝えられる手段なので、活用しない手はありません。

まとめ

ブルーツーリズムは地域活性化に効果的な取り組みです。漁村や沿岸部全体が一体となり旅行客を招くことで、地域に新しい風を通すことができます。外国人旅行客の意見に、地域に新しい魅力を見出すことができるかもしれません。長期的な地域活性化のために、ブルーツーリズムを計画してはいかがでしょうか。

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