日本版DMOに挑戦しよう!

DMO,阿寒

DMOとは、地域と連携して観光地づくりを行う官民協同の営利法人のことです。Destination Management Organization(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)の略称で、行政、商工業、農林業者、交通業者、飲食店、宿泊施設、地域住民など、広範囲で多様な関係者が連携します。ハワイ、スイスの成功例を手本とし、「稼げる観光」を目指しています。観光庁は、明確なコンセプトと市場調査に基づき、経営的な観点を持つ法人を積極的に登録認定しています。2018年12月現在、全国で102件が登録されています。

日本版DMOの特色

観光庁は、2020年までに世界水準のDMOを全国で100形成するという目標を掲げています。

世界水準とはどんなものなのでしょうか。例えば、あのハワイもDMOです。ハワイ・ツーリズム・オーソリティーは、州政府の管轄で、独立した公的な法人です。ハワイ文化に関連するイベントを次々と打ち出し、徹底した市場調査によるマーケティングを行っています。

スイスのツェルマットは、住民の観光業に対する意識が高く、観光局と地域共同体が協同してDMOを運営しています。会員企業が自主財源でホテルやレストランを経営しています。

日本のDMOの場合、観光資源とは、名所のほかに、自然、食、芸術芸能、風習なども含みます。日本版DMOは、温泉や自然、スポーツをテーマにしたものが多く、対象区域の大きさによって、広域連携DMO、地域連携DMO、地域DMOに3つに分かれます。観光庁ホームページのDMO登録法人一覧を見ると、個性的な法人がずらりと並んでいます。 

事例

最近、話題となった全国各地のDMOをいくつかご紹介します。

阿寒観光協会まちづくり推進機構

アイヌ民族の古式舞踊とデジタルアート技術を融合した公演を年間で企画するなど、アートイベントなどの体験型観光で外国人観光客を集めています。

秋田犬ツーリズム

世界的に有名な秋田犬のふるさと大館市を中心に、秋田犬とのふれあい体験、現役マタギと語りながらの山歩き、きりたんぽ作りなど多彩な観光プログラムで人気を集めています。

大田原ツーリズム

農山村で余暇を過ごすグリーンツーリズムで認定されました。水田での有機栽培体験、天然酵母のパンづくり、子供向けの農家民泊体験プログラムなど、環境問題を考えるテーマが多くなっています。

下呂温泉観光協会

戦略的マーケティングや先進的施策によって日本の地域DMOを引っ張っている存在です。地域をけん引し、東日本大震災以来落ち込んだ観光客を110万人台まで回復させたことで話題になりました。

採算面には課題が残っています

最近、社会からDMOの「稼ぐ力」に期待が寄せられていますが、まだ日本版DMOの歴史は浅く、運営面では模索が続いています。国の補助金や交付金を受ける性質上、採算面の課題はまだ大きいようです。日本投資政策銀行のレポート「観光DMO等活動優良事例集」を見ても、「低営利は仕方がない」という見解となっています。

そんな中、JTB総合研究所は収益面で注目されている法人について分析しています(https://www.tourism.jp/tourism-database/column/2017/02/japanese-dmo-operation)。

あまみ大島観光物産連盟は、ホームページを全面リニューアルし、観光客が体験型コンテンツなどをWEB上で直接予約・購入できる仕組みを導入し、収入源としているそうです。

特定非営利法人ORGAN(長良川DMO)は、スイスのツェルマットのように、参加企業から会費を集める仕組みを導入したり、長良川流域の特産品をwebや実店舗で売ったりする計画を立てました。

隠れテーマは、地域への還元、郷土愛

日本版DMOの隠れた大きなテーマは、地域の活性化、地域への還元といえます。DMO活動をきっかけに、それまで職場から寝に帰るだけだった地元の魅力に目覚める住民も多いようです。日本版DMOに登録されるには、しっかりした経営面での事業計画を立てつつ、郷土愛、地域への還元をこころがけた、バランスの良い企画を出すと、認定されやすいかもしれません。

日本版DMOになるための手続きは、観光庁ホームページに詳しく書かれています。登録の要件は5つです。
(1)DMOを中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意形成
(2)データの継続的な収集、戦略の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確立
(3)関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り、プロモーションの実施
(4)法人格の取得、責任者の明確化、データ収集・分析等の専門人材の確保
(5)安定的な運営資金の確保

地方自治体の観光課、観光業の方々、ホテルや飲食店の経営者の方で、日本版DMOへの登録を目指す方は、観光庁ホームページの「日本版DMOになるには」をぜひご覧ください。

おわりに

観光立国を目指す日本のDMOは、立ち上げの段階から、経営を考える段階に移行しつつあるようです。日本が世界に誇る「おもてなし」の文化に、世界レベルの経営マインド、鋭いビジネス感覚によるマーケティングとプロモーションの技術が備われば、ハワイを超える世界有数の観光地になるかもしれません。

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