「和コンセプト」と「外国語」が鍵!成功する日本版DMOとは?

DMO

観光立国を目指し、「稼げる観光」による地域DMO(Destination Management Organization)のスタートから約4年が経過しました。グルメ、温泉、自然、スポーツなど多様なテーマで全国の法人が、官民協同でインバウンド需要を掘り起こそうとしています。

外国人が、日本の観光のどこに魅力を感じるのか。それは、日本人が普段は見過ごしている、どうということはない、昭和の日本情緒だったりするのです。日本版DMOが世界レベルになるためには、和のコンセプトを前面に打ち出しつつ、ホームページやメニューの英訳、海外でのマーケティング調査やプロモーションなど、外国語による調査・発信をすることが必要になってくるでしょう。

欧米富裕層が好む日本とは? 秋田犬ツーリズムが成功した理由

日本の食のレベルはもはや世界一といえるでしょう。日本版DMOも、グルメをテーマとしたものが非常に多いです。そんななかで、秋田犬ツーリズムは、頭ひとつ飛びぬける結果となりました。世界的に人気がある秋田犬をテーマにし、観光地としてほとんど知られていない状態だった大館市が、日本版DMOのトップランナーのひとつとなったのです。欧米の富裕層が好む日本を演出したからだといえるのではないでしょうか。

ロシアのフィギュアスケート選手、アリーナ・ザギトワ選手への秋田犬贈呈は、大きな話題になりました。欧米の若手富裕層で、「秋田犬、大好き」という人は多いです。ニューヨークやロンドン、パリに住む彼ら彼女たちは、ショッピングやグルメ三昧というよりも、体験型の観光を好みます。毎年、海外旅行に行く経済的な余裕があり、京都や東京、北海道はもう行ってしまった、次はどこにしようか、と考えているセンスの良い知的な欧米観光客に、Magewappa Craft Lesson(大館曲げわっぱづくり)は人気です。日本の工芸は、欧米でも大人気なのです。

秋田犬ツーリズムの英語ホームページには、日本の工芸を体験し、かわいい秋田犬を抱っこする、という欧米キャリアウーマンの理想の休日が描かれています。近年、欧米女性のハネムーンの行き先として人気があるのは、京都とバリ。それぐらい、「和」は憧れの的なのです。

クールジャパンを海外にプロモーションする場合、アニメの女性キャラクターを使用することが多いですが、実は、日本人にとってはなんということはない昭和の茶屋、居酒屋のちょうちんが「クール!」だったりするようです。日本版DMOが運営面で自立し、高い収益をあげていくためには、地に足ついた、ふだんの日本こそかっこいいのだ、という視点も必要になっていくのではないでしょうか。

せとうちDMOの外国語対策

インバウンド需要を調査し、海外に向けてプロモーションするには、英語が不可欠です。広島県、兵庫県、岡山県、山口県、香川県、徳島県、愛媛県という7つの県にまたがる広域組織である「せとうちDMO」は、マーケティング調査を、英国の旅行専門マーケティング会社ブラックダイヤモンドに依頼しました。瀬戸内地域の2014年の外国人延べ宿泊数は154万人でしたが、2017年はその2倍超の約340万人に延びています。英語を駆使したマーケティングの成果といえるでしょう。

せとうちDMOは、英語と中国語にも対応した「瀬戸内Finder」という自社メディアで、瀬戸内エリアの魅力を発信しています。瀬戸内Finderの英語版を見ると、道後温泉の温泉宿「どうごや」がフィーチャーされています。これも、日本人からするとごく普通の、畳や床の間、ぼんぼり、といった風景がアピールのポイントとなっています。そこに現代アートが飾られ、作務衣を来た主人がお出迎えする・・・。これもまた、欧米、あるいは、上海やシンガポールの富裕層が夢見る、かっこいい、ぐっとくる日本の情景なのです。

せとうちDMOは、宿泊施設や体験型コンテンツの予約もできる海外向けサイト「SETOUCHI TRIP」も運営しています。動画配信などのデジタルプロモーションを組み合わせ、予約の成立状況や動画の視聴結果などを分析し、インバウンド需要のマーケティングデータを蓄積しています。対応言語は、英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語、タイ語となっています。

SETOUCHI TRIPには、英語で旅のエッセイやレポートが書かれています。本格イタリアンで有名な鳴門の隠れ家リゾートホテル「モアナコースト」の滞在記を読むと、海外富裕層がうっとりしそうな一文が書かれています。

“コンシェルジュが、丁寧に、わたしの荷物を部屋の中に置いてくれた。彼は「桜の季節が最もすばらしく、当ホテルが有名なのはそのためなのです、海と桜が真近に同時に眺められるのはとても珍しいもので。でも、桜の季節に部屋を予約するのはとても難しいですね、そうですね、6か月前にはご予約いただかないと・・・」”

世界水準のDMOは、ただ外国語に翻訳すればいいというのではなく、こういった「上質な」英語の旅エッセイを掲載したブログサイトも持つ必要があるのかもしれません。

おわりに

島国の日本人の多くは、海外で長期間生活することは少なく、長年の欧米崇拝から、外国人から見た「日本のかっこよさ」になかなか気づきません。アニメやハイテク、グルメといった従来のクールジャパンからそろそろ脱却し、落ち着いた日本観光を自信をもって打ち出して、日本版DMOを盛り上げていってはいかがでしょうか。

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