海外進出企業はコロナの影響をどれくらい受けたか

はじめに

海外に進出している日本企業はたくさんあります。しかし、コロナの流行により良くも悪くも影響を受けてしまいました。

海外への渡航制限、海外での雇用の問題、輸出入の制限など様々な変化により、撤退や縮小を余儀なくされた企業もあれば、この状況が追い風となった企業などいろいろです。

ここでは、海外進出企業がコロナの影響をどれくらい受けたのか、どんな分野に成長の見込みがあるか、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が82カ国・地域を対象に調査した結果から考えてみることにしましょう。

参照資料:JETRO 2021年度海外進出日系企業実態調査

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2021/c439b74323dc4bee/survey.pdf

黒字・赤字を見込んだ企業の割合

2021年の営業利益見通しのデータを見てみましょう。黒字を見込んでいたのは約6割の企業にとどまりました。一方、赤字を見込んでいた企業は約2割です。

黒字を見込んだ企業の割合は、過去最低だった前年を上回ってはいますが、過去10年間で2番目に低い割合です。これではとても力強い状態とは言えません。

コロナが海外進出企業に与えた影響は、思った以上に大きかったようです。

出典:JETRO

業種別に違いがあったか

では、黒字割合が高かったのはどのような業種でしょうか?

銀行、精密機器、販売会社、電気・ガス等の会社があげられます。外出を自粛し、自宅での生活を余儀なくされる状況の中で、日常生活と密接な関係のある分野は比較的影響は少なかったことがわかります。

これもコロナの影響だと思われますが、医薬品も黒字割合が高い業種の1つです。

反対に赤字割合が高かったのが、ホテル・旅行業界です。また、外食産業もコロナ禍の行動制限の影響を大きく受けました。

制限が少しずつ緩和されているとはいえ、感染拡大が繰り返されるたびに振り回されてきました。

建設業もコロナの影響を如実に受けています。受注した工事の延期や、海外から輸入している建築資材がストップしたり、価格が高騰したりしていることも要因です。

出典:JETRO

今、事業拡大の意欲はどうか

様々な業種が新型コロナウィルスの影響を受けてきましたが、今後の事業拡大に向けた意欲はどうなっているでしょうか。

今後の事業展開に関して、「拡大を図る」と考える企業は確かに減少しましたが、可能性や意欲は衰えていません。

例えば、医療機器、医薬品などの分野は、かつて経験したことのない感染症の拡大による世界の動向から、次に何ができるかを考えている企業が多いことでしょう。今回の感染症の流行から学んだ点を今後に活用するよう新たに練られた事業プランに期待できます。

また、食品、農水産加工品や日用品の分野も事業展開に高い意欲を持っていることがわかります。行動制限が課された時、人々が必要とする物は何か、家にいても便利においしく食を楽しむための工夫について、新しいアイディアが出されたことでしょう。

確かに、家で食事をする回数が増えると手間をかけずにおいしく食べられるメニューへの需要が高まります。スーパーに並ぶ新商品を改めて見てみると、以前なら特に外食の時に食べていたものを自宅で簡単に楽しめるいろいろな種類の加工品があり、そうしたニーズへの対応の早さに驚かされます。

これからもこうした食品の開発に力を入れてくれるのでは、と期待しています。

逆に、アパレル業界の事業展開の意欲は低い位置に留まっていることが下の表から読み取れます。

以前は、多くの企業が比較的安い価格で海外で生産していましたが、その体制はコロナ禍によって大きな影響を受けました。国内外を問わず自由に行き来ができずに十分な打ち合わせができなかったり、ロックダウンなどの影響で人手を確保できなかったりという要因があったものと思われます。一時期に比べれば状況は好転してきているとはいえ、まだ明るい判断材料が得られていない様子です。

そして最も打撃の大きかった航空業界、ホテルや旅行業界は、拡大見込みが一番低いとされています。

多くの人が、早く外国と安心して行き来できる日が来ることを期待していますが、もうしばらく辛抱する必要がありそうです。

出典:JETRO

ECとデジタルマーケティングの成長見込みは大きい

今後の事業展開を促進するために注目されているのが、ECとデジタルマーケティングです。販売先の拡大やマーケティングの強化に非常にメリットがあると考えられています。

以前からオンラインショッピングは活用されてきましたが、コロナ感染症の拡大が追い風となり、さらに多くのユーザーが利用するようになりました。自宅にいながらにして、密にならずに商品を選べることは大きな利点です。また、おうち時間が増えたことで、PCやスマホを使って買い物をする人が増えてきました。実際に商品を手に取ることができなくても、購買意欲をそそるような工夫もされてきました。

事業者側としては、実際に店舗を構えるコストをかけずに海外からでも注文が受けられるので、非常に大きなメリットがあるといえます。

この分野で大きな成功を収めている中国のように、さらに多くの顧客を獲得することに力を注ぐ企業も増えてきました。この点で、デジタルマーケティングの活用も進んでいます。

様々なデジタルデバイスやデジタルメディア、そしてデジタルデータを活用して、既存の顧客、また顧客になる見込みのある人一人一人に適したアプローチをすることで、販売事業を拡大させることができます。また、新しいビジネスモデルの創出にもつながると考える企業の割合も高いことがわかります。

出典:JETRO

まとめ

コロナは日本企業の海外進出にも大きな影響を与えるものとなりました。旅行業界やサービス業は大きな打撃を受けましたが、あきらめてしまったわけではありません。

事業を拡大する意欲を持つ企業もあります。そこで、海外向けのデジタルマーケティングに前向きな企業も多いのです。

わたしたち消費者一人一人も、企業と共に、コロナと共存するための知恵を絞っていく必要があります。

今後も海外の動向は絶えず変化していくことが予想されます。どんな新しいツールが現れるか、期待しながら注視していきましょう。

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