【2021年に過去最高】今が熱い!ベトナムのスタートアップへの投資事情

ベトナム,ベトナム語

はじめに

2016年、ベトナム政府は、2020年までに企業数を100万社に引き上げる目標を掲げ、東南アジア全域ではスタートアップ企業への投資を活発化しています。特に近年、ベトナムのスタートアップ企業への投資が大きく伸びています。JETROによると2021年のベトナムスタートアップへの投資が過去最高を記録したそうです。

ベトナムではどんなスタートアップに投資が集中しているのか。とても興味が湧きますよね。今回の記事では、成長著しいベトナムで投資動向が今どんな分野に向いているのかを紹介しています。今後、ベトナムのスタートアップ企業に日本企業がどのように向き合い投資していけばよいのかのヒントとなるはずです。

投資動向のポイント

2021年のベトナムスタートアップへの投資件数は165件、総額14億4,200万ドルに及び、コロナ禍で低迷した前年2020年に比べ、件数で57.1%増、金額は3.2倍もの伸びを記録しています。
電子商取引(EC)サイトのセンド(Sendo)やティキ(Tiki)などへの大型投資があった2019年よりも8億7,400万ドルもの増加。コロナの影響をもろともしない成果をたたき出したと言えるでしょう。

2021年には、2社のユニコーンが誕生し、ベトナムでのユニコーンは合計4社となりました。
投資分野におけるベトナムの特徴としては、フィンテック領域となる「電子決済」や「小売り」が上位を占め、近年、不動産やロジスティクスを抜いて「オンラインゲーム」が3位に浮上したことでしょう。
2021年の大型案件がこの上位3分野から5社出ており、1案件1億ドルを超える額となっています。

他方、2020年に108社だったベトナムで活動する投資ファンドは、2021年には173社となり60%の増加。国別で多いのは、シンガポール、ベトナム、米国の順です。
ベトナムに拠点を置く日本の投資ファンドは、2020年の7社から2021年の11社に増加しました。しかし、ベトナムの投資分野における日本の存在は残念ながら大きいとはいえないようです。

コロナウイルスによる市場への影響はいずれの国においても大きいと言わざるを得ませんが、この間にベトナムをはじめ新興国のデジタルトランスフォーメーションが促進されたことも事実です。

出典:JETRO

ベトナムはユニコーン企業を10社にすることを目標に

ユニコーンとは

ユニコーン企業とは、創業10年以内評価額が10億ドル以上で、未上場のベンチャー企業のことを言い表す造語です。
大きなツノを持つ幻の生きもの「ユニコーン」の猛獣のイメージを、創業から短期の間に大きな成果を出す希少な企業に重ね合わせてユニコーン企業と呼んでいます。
生き残りが難しいスタートアップ企業のうちでも、10年という短期間で大きな利益を出し、企業価値となる評価額を10億ドル以上にするのは至難の業です。
このユニコーン企業はアメリカや中国で多く輩出されていますが、日本も含め他の国々ではなかなか増えていかないのが現状です。

ベトナムのユニコーン企業

ECビジネス関連が急成長を遂げているベトナム。
2018年時点でベンチャー企業は3000社ほどまでに急増し、GDP成長率は過去10年間で最高を記録しています。

ベトナムにおけるユニコーン企業としては、オンラインゲームのVNG、電子決済のVNPAYが存在していましたが、2021年に2社増えて4社となりました。2020年時点でベトナム政府は、自国ユニコーンを10年で10社にすることを目標にして、さらなる急成長を目指しているようです。

現金やキャッシュカード決済が未だ主流のベトナムでは、新たな市場となるモバイル決済分野へ政府が支援策を講じており、バーコード決済や電子ウォレットなどの事業は、今後成長が見込まれる分野です。

2021年に誕生したユニコーン2社について

ベトナムには評価額が数億ドルの企業が数十社ほどあります。
ベトナムには優秀なITエンジニアが多く、ITスタートアップ企業のなかでベトナムで最も参入数が多いのはデジタル決済サービスです。
2021年のベトナムスタートアップへの投資動向などをまとめた「Vietnam Innovation & Tech Investment Report 2021」によると、2021年にベトナムで誕生したユニコーン企業は、電子決済を手掛けるモモ(MoMo)と、人気ブロックチェーンゲーム「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)」を手掛けるスカイメイビス(SkyMavis)の2社です。

それぞれがどのようなサービスを提供している会社かを見てみましょう。

モモ(MoMo)

Momoはベトナム最大のモバイル決済アプリです。運営企業は2007年設立の「M_service JSC」で、決済事業に特化した企業です。

国民所得が増加傾向にあるベトナムでは、ほとんどの地域でスマートフォンが利用できるようになっており、その普及率は6割を超えています。

そのような状況下、MoMoは、国際クレジットカード会社をほぼ網羅し、27の銀行と60,000のパートナーと連携して、全国の120,000の店舗・レストランが加盟する巨大ネットワークを構築しています。

立ち上げ当初Momoは、電話代のチャージや送金などのみの機能アプリでしたが、現在は完全なエコシステムを所有。
支払いや送金、ショッピングだけでなく、交通機関や旅行、エンターテインメント、金融、保険、eコマース、公共サービス、ボランティアなど、ユーザーのほぼすべてのニーズを満たすアプリに成長しています。
Momoのユーザー数は2,500万人超となり、現在、ベトナムでは誰もが知るeウォレットです。

アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)

アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)は、ホーチミン市でブロックチェーンやゲーム開発事業を手掛けるスカイメイビス(SkyMavis)が提供するブロックチェーンゲームです。
2018年設立のSky Mavisは、現在、従業員約40人を抱え、ベトナム最大規模のゲーム開発会社として成長を遂げ、世界で最も収益を上げているオンラインゲームを提供しています。

Axie Infinityの特徴は、ブロックチェーン・テクノロジーに基づいて開発されている点です。このゲーム内では、ユーザー同士がイーサリアム・Ethereum等の仮想通貨を収集して売買し合うことを可能にしています。

Axie Infinityゲームの売上は10億ドルに達し、ゲーム内取引額は22億ドル。Axie Infinityには1日約200万人のユーザーが訪れる巨大プラットフォームに成長しています。

コロナでも負けないベトナム

ベトナム計画投資省副大臣、チャン・ズイ・ドン氏は同レポートの発表式で、「新型コロナウイルスの流行は社会や経済に大きな影響を与えたが、同時にデジタルトランスフォーメーションを促す触媒にもなっている」と述べました。

国策として投資環境改善に取り組んできたベトナム。

人権や環境保護、イノベーションなどの視点からも安心できる投資であることをアピールし、日本などからの支援を求めています。

ベトナムは、イノベーションによる収益が現在GDPの9%を占めていますが、今後、ベトナムのGDPに占めるデジタル経済の割合目標を30%と設定。大胆な目標ではあるものの、スタートアップへの投資を見据え、さまざまな措置を講じるなどして達成可能な目標であることをアピールしています。

デジタル経済開発への取り組みをはじめ、ベトナムのデジタルトランスフォーメーションへの歩みは着々と実現に近づいているようです。

まとめ

コロナ禍以来、一時的に落ち込んだベトナムの小売業とサービス業の売上高は次第にプラス成長に好転し、貿易収支も黒字を維持していることなどから、ベトナム経済は着実に回復を示しています。
現在のベトナム全地域での高いスマートフォン普及率を踏まえても、その勢いは明らかです。

過去数年、ベトナム政府がけん引し、スタートアップ(ジョイントベンチャー)を含むベトナム全域での経済動向は、デジタル経済開発の実現のために尽力する方向にシフトしてきました。
その成果は、小売業やサービス業に関わらず、デジタルの分野でも著しいものです。

副首相のブー・ドゥック・ダム氏は、ベトナムは2025年までに下位中所得国を脱し、2030年までに上位中所得国に、2045年までに高所得国の仲間に入るであろうとコメントしたようです。
野心的な目標にも感じますが、望ましい結果を収めている現状をみると、改めてリノベーションへの決意の強さを感じますし、スタートアップの志の強さも感じますね。

競争に打ち勝つ投資先としてベトナムが選ばれるのも納得出来るのではないでしょうか。

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