EVまで作るベトナム初の自動車メーカー ビンファストが凄い

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ベトナム発の自動車メーカー「ビンファスト」をご存じでしょうか。日本ではまだ知名度がほとんどありませんが、実はここ数年で世界的に名を上げてきている注目メーカーです。すでに東南アジアではトップのメーカーとして君臨し、アメリカにも進出することが決まっています。

現在、脱炭素の取り組みによってガソリン車から電気自動車へのシフトが行われている影響で、自動車業界の勢力図は不安定になっています。そんな中、ビンファストはEVに非常に力を入れており、高性能のEV車種を続々と発表しています。

もしかしたら、今後のEV市場における台風の目となるかもしれません。

そこで、本記事ではベトナム発の自動車メーカー「ビンファスト」についてご紹介していきます。

ビンファスト(VinFast)について

「ビンファスト(VinFast)」は2017年に創設されたベトナム初の自動車メーカーです。ベトナム最大のコングロマリット「Vingroup JSC」の傘下企業として創立されました。

ビングループの莫大な資金力を背景としたスタートダッシュを成功させ、創業してから5年しかたっていないにもかかわらずベトナム国内での販売台数とシェアを急速に伸ばし、早くも東南アジアトップの自動車メーカーに上り詰めています。

2018年にはイタリア最大のカロッツェリア(自動車の車体デザイン業者)である「ピニンファリーナ」とモデル生産契約を締結し、BMWから獲得した知的財産権をベースに車体開発を開始。拠点となるハイフォン市に355ヘクタールに及ぶ生産ラインを確保しました。さらには同年のフランスパリで開催されたパリモーターショーに出展を果たし、SUVやセダンなどのプロトタイプモデルを発表しました。

2021年のベトナム国内の販売台数は35,723台で、前年比21%増(2020年は29,485台)となりました。また、シェアは8.7%で、前年度の7.5%から1.2%の増加となっています。

ビンファストは2025年までに年間生産台数50万台という目標を掲げていますが、夢物語ではないと思わせる勢いが同社にはあります。事実、現在でもすでに自動車で25万台、電動スクーターで50万台の年間生産力を有します。

そんなビンファストが今、新たなターゲットとしているのがアメリカ市場です。2021年に行われたロサンゼルスオートショーに出展し注目を集めたかと思うと、翌年には2400億円を投資してノースカロライナ州に電気自動車(EV)を生産する工場を建設することを明らかにしました。年間15万台の生産を見込む規模で、2024年7月からの稼働を目標としています。

車体デザインはヨーロッパの有名デザイナーを起用し、エンジンはヨーロッパやアメリカの一流どころからOEMを受けるビンファストの車は欧米人にも受け入れやすく、今後は東南アジアだけでなく欧米でも存在感を増していくことが予想されます。

安価で高品質な日本車がアメリカ市場を席巻し、人気ブランドとして確立していったのと同じような軌跡をたどり、ライバルへと成長していくのか。今後の動向をぜひ注目してみてください。

VinFast Lux A2.0 を見てみよう

「Lux(ルクス)」はビンファスト社初の独自ブランド自動車で、フランスで行われたパリモーターショーで一般公開されました。

タイプはセダンタイプ(A2.0)とSUVタイプ(SA2.0)の2種類。ピニンファリーナが提示した20種類の車体デザインの中でどれが良いかインターネットを通じて人気投票を行い、その中から最も多くの支持を受けたデザインを採用していることから、ベトナム人好みの車体デザインとなっています。

グリルラインを構成するヘッドライトはLED。中央に刻まれた「V」のマークは、ベトナムとビンファストの頭文字「V」を象ったもので、ベトナムという国への誇りが込められています。車内には大型ディスプレイが備え付けられており、カーボンパネルとレザーで構成された高級感のあるインテリアとなっています。

「Lux A2.0」の車体は全長4,973mm、全幅1,900mm、全高1,464mm。BMWの技術が用いられたFR駆動で、2.0リットル直列4気筒ガソリンターボエンジン「2.0L BMW N20B20」に8速ATが組み込まれています。ただし、オプションで4WDも選択可能です。

エンジンパフォーマンスは最大出力130kW(176馬力)・最大トルク300Nmのものと、最大出力170kW(231馬力)・最大トルク350Nmの2ラインナップ。前者は時速100㎞到達までに8.9秒、ハイパフォーマンス版である後者は7.1秒で到達する高い走行性能を持ちます。

安全性も高く、2019年に行われた「ASEAN NCAP(東南アジア新車評価プログラム)」の衝突実験では、正面衝撃側面衝撃など様々な項目で高得点を獲得し、最高評価である5つ星評価を受けています。

VinFast SA 2.0 を見てみよう

SUVタイプ「Lux SA2.0」は、基本的に形が違うだけで性能は「Lux A2.0」とほとんど変わりませんが、いくつかの違いがあります。

一つは「ROM (Roll Over Mitigation)」が搭載されていること。これは急旋回の時に車が横転するのを抑制する機能です。また、下り坂で自動的に速度を抑えて走行する制御技術「HDC(Hill Descent Control)」も搭載。

エンジンパフォーマンスについては最大出力130kW(176馬力)・最大トルク300Nmの一つだけとなっています。また、こちらも「Lux A2.0」と同様に4WDの選択が可能です。

ボディサイズは全長4,940mm、幅1,960mm、高さ1,773mmとなっており、一目見て重厚さが感じられます。また、内装も非常に優れており、モダンで高級感のあるインテリアが目を引きます。

出典:wikipedia

現在、SUVは世界的に人気の高い車種です。もともと欧米では非常に人気が高い車種でしたが、近年はセダンが好まれてきた国でもSUVに注目が集まっています。たとえば、中国はセダンが圧倒的に人気の国でしたが、最近はSUVの人気が高まっています。

さらにEVのニューモデルも投入

欧米を中心に進められている脱炭素の取り組みを受け、ビンファストでは現在EVに力を入れています。EV車といえばバッテリーに大きなコストがかかるため、価格を抑えづらいというデメリットがありますが、ビンファストではバッテリーを「リース」にし、車のユーザーが月額のリース料金を支払う形にすることで車の本体価格を抑えることに成功しています。

アメリカのラスベガスで行われた「CES 2022」では、5つのEV車種(VF5~VF9)を一般公開。5車種はセグメントごとに合わせたものとなっており、「VF5」がセグメントA、「VF6」がセグメントB、「VF7」がセグメントC、「VF8」がセグメントD、「VF9」がセグメントEとなっています。

これらのうち、「VF8」および「VF9」 はロサンゼルスモーターショー2021 年で発表された「VFe35」「VFe36」をそれぞれ改名したもので、自動運転機能も搭載されています。

ビンファストCEOのレ・ティ・トゥ・トゥイ氏は2022 年末までに完全にEVに特化することを示唆しています。事実、一度に5モデルも打ち出しているところからも、同社がEVに非常に力を入れていることが窺えます。今後はさらにEVに注力していくと考えられます。

まとめ

これまで、自動車業界は歴史ある巨大自動車メーカーたちが独占してきました。しかし、テスラモーターズや今回ご紹介したビンファストなどの登場によって、自動車業界は新たなる時代に突入しはじめています。

発展途上国発の自動車メーカーといえば「安かろう悪かろう」のイメージを持つ方もおられると思いますが、ビンファストは「安くて良いもの」を作り続けています。

自動車業界において絶対的な王者に君臨するトヨタですが、ベトナムのビンファストはもしかしたら今後数年で強力なライバルになるかもしれません。テスラ同様、今後も目が離せないメーカーです。ぜひ、皆さんも今後数年を注目してみてください。

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