観光庁が「第2のふるさと」プロジェクトで目指す「何度でも訪れる旅」とは

ウィズコロナ時代を生き抜くための取り組み

はじめに

コロナ禍の影響で旅のスタイルが変化し、2022年に観光庁が目指すのは「リピート観光客の獲得」による地域活性化です。観光需要の掘り起こしと地域創生に向けた「第2のふるさとづくりプロジェクト」を立ち上げ、地方の一定の地域に繰り返し足を運んでもらう旅を提唱します。

人の移動が多様化した現代にあって、なぜ今、観光にはリピート客が必要なのか。またプロジェクトの詳細から、地方が目指す観光の形を探ります。

モデルとなる事業、途中経過を紹介しつつ、「稼げる地域」となるために必要なポイントについて紹介します。

「第2のふるさとづくりプロジェクト」とは

地域づくりに必要な取組みを支援する観光庁が、新たな旅のスタイルとして「第2のふるさとづくりプロジェクト」を企画・推進しています。
このプロジェクトは、モデル実証の取組として、全国から募集した提案の中から19の地域に絞って実際に検証していくものです。
コロナ禍でも、密を避けつつ自然環境に触れる旅がしたいとのニーズが高まっている背景を踏まえ、国内における未開の観光を発掘し新しい需要を官民一体となって掘り起こしていこうとする試みです。

では、なぜこのプロジェクトが始まったのでしょうか。以下に説明していきます。

コロナ禍で国内観光の形が変化

この観光庁が推進する「第2のふるさとづくりプロジェクト」は、「何度も地域に通う旅、帰る旅」とネーミングした新たな旅のスタイルを提案するものです

コロナ禍が長引くなか、インバウンド需要の回復がすぐに期待できない状況で、国内観光需要の掘り起こしが必須となっていますが、密を避け自然環境を活用した旅のあり方が模索されているのです。

そんななか、働き方や住まい方が大きく変化している今、特にふるさとを持たない都会に住む人々などが「第2のふるさと」を求めてそこに住み、そこに帰るための地域おこしを企図する取組みに注目が集まっています。

「第2のふるさと」となる地方でも稼げることを実証できれば、国内の多くの場所で「第2のふるさとづくりプロジェクト」が実現できるはずです。

プロジェクトの概要

「第2のふるさとづくりプロジェクト」では、まず、モデル実証地域が決められます。全国から集められた案の中から有識者が19の地域を選定し、実際の「第2のふるさと」として検証していきます。

今回の第2のふるさとづくりを推進するにあたっては、広範な支援が用意されており、モデル事業に選ばれない事業に対しても支援が受けられる仕組みが用意されています。
官公庁のみならず、関係省庁との連携により、各地域での地元企業や団体、住民をも巻き込み、「情報交換の場」(コンソーシアム等)を立ち上げることも検討中。

発案された事業への取組みに対し、観光庁や地方運輸局から助言をしながらブラッシュアップしたり、メディア等への情報発信機会を提供したりするなどのバックアップをすることです。

モデル事業に選ばれたのはどんな企業でしょうか。具体的に見てみましょう。

プロジェクト公募の結果|モデルに採択された19の事業

国内旅行の現状としては、観光レジャーの伸び悩みが顕著に見られます。

しかし、と同時に、出張や知人・友人に会うために訪れる人たちに対し何ができるのかといった、新たな市場開拓にも期待が高まるところでしょう。

実証モデルに採択された19の事業は、北海道から沖縄まで、日本全国から応募された事業が取り上げられています。

例えば、福島県磐梯町からは、農泊就労体験×DX戦略×バケーションで第2のふるさとを創出するプロジェクトが、熊本県南阿蘇村からは、ラーケーション阿蘇(Learning Vacation Aso=LVA)のファン構築事業と銘打って、学びと遊びの融合を目指します。

「第2のふるさとづくりプロジェクト」中間取りまとめから、選ばれた事業の傾向を見て、観光庁が目指すものを読み解いてみましょう。

「ヤド・マチ・アシ」の新しいニーズ

今回選出された事業の中には、旅行者の潜在需要を掘り起こすような案もたくさん見られます。
「何度も地域に通う旅、帰る旅」の実現を目指す案として、自然豊かな地域に実際に足を運び資源に触れその地域との関係性を深める。
より強い結びつきを意識できるようになれば、自然発生的に第2のふるさととして頻繁に来訪したり、長期的に滞在したりする可能性が高まるといった新しいリピーターの発掘を目指すものです。

コロナ禍となる前後では、滞在環境と移動環境が大きく変化していることが特徴です。

滞在環境は地域の起点としての宿を「ナカ」と「ソト」を分けて考えます。
宿ナカの「ヤド」は、既存宿泊施設を改修したり、空き家を活用したりして快適な施設と柔軟なサービスを目指します。
宿ソトの「マチ」は、地域住民と交流する場の確保、そしてその場が地域との関係をより密接なものにするものであることなどが条件です。

移動手段となる「アシ」に関しても、公共交通機関を整備していくことのみならず、レンタカーやタクシーなどを含め新たなモビリティを模索することも視野に入れた新しい移動の仕方を地域から発していくことが大切でしょう。
このようなニーズに対応する事業が今回選ばれているようです。

「通いたくなる」滞在の提供がポイント

第2のふるさととしてリピーターを呼び込むためには、滞在する良さに加え、「通いたくなる」場所となることがポイントです。
そのためには、「ヤド」の存在は地域の人々が集う起点となると同時に、地域のゲートウェイ・ハブの役割を担うものとします。

来訪者にとっては、「さりげなさ」や「緩やかさ」を帯びたヤド・マチと触れ合うことで安心できる場所として居心地の良さを感じられるふるさとにならなければなりません。

それは地域と来訪者のフラットな関係の上に成り立つもの。
来訪者と地位住民双方が互いに「相思相愛」の関係になることにより、来訪者が「帰りたくなり」「通いたくなる」という目線にたてば、地元の魅力をアピールすることが可能になるでしょう。

今回も、来訪者にとって魅力的な滞在を提供する事業が選ばれています。

地元を「稼げる地域」にするためにできること

今回は19の事業が「第2のふるさとづくりプロジェクト」に選出されましたが、たとえプロジェクトに選ばれなくても、地元を「第2のふるさと」にしてもらうために各地方自治体ができることはあるはずです。

新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、リモートワークが浸透し都会に集中する人々が地方に分散することを可能にする状況の変化と、田舎に憧れを持つ若者の増加などに見られる他者とのリアルな繋がりや交流を創出する可能性は急激に高まっています。

地域を活性化し創生するうえでは、地域住民が、外からの人・モノ・金を柔軟に受け入れる姿勢を持ち、自身の地元を「稼げる地域」にしていく気概と共通認識を持つことです。

地方には磨けば光る資源がたくさん眠っています。

コロナ禍にも負けず、地方の観光の力を引き出す方法を考えましょう。

「ヤド・マチ」の視点でできること

「初来訪、再来訪を促す要素・仕組み」として、個人的に来訪することのほか、リモートワークやワーケーション、企業研修など、組織需要も含めた取り込みによって地域を訪れるきっかけができて、来訪を増やすことができます。

その後リピートしたいと思えるかについては、「ヤド・マチ」の視点がとても重要になってきます。

来訪した際の居心地の良さを追及し他にはない、特別な場所と感じてもらうためのその地域でしかできない体験を提供することなどが求められます。
また、受け入れ側の地域住民にとっても、メリットが実感できる仕組みを構築することなどが求められるでしょう。

「アシ」の視点でできること

滞在する地域内での移動手段「アシ」が充実していることは、再来訪のカギを握る重要なポイントです。
車や公共交通機関だけでなく、バイクや電動アシスト付き自転車が気軽にレンタルできるなど、利用しやすさを重視した新たなモビリティを柔軟に活用する必要があります。

例えば、地方でMaaSが本格的に実現すると、地域課題であった過疎地で高齢者が交通弱者となり孤立することや、地方で赤字となりがちな公共交通路線への対策が可能となります。
利用者減とコスト増の難題を解決して事業を継続していくことができるのです。
地方版MaaSが交通インフラの問題を解決するでしょう。

また、サブスクによる定期的な来訪者との関りを持ち、親近感や愛着を持ってもらうことや、第2のふるさとを忘れないでもらうために工夫する視点が重要でしょう。

まとめ

コロナの影響で価値観や生活が大きく変化し、観光旅行もモノからコトへと消費が変化し、「体験」を重視する方が増えました。また、「ふるさと」を持たない若者も多いため、旅行によりふるさとを「体験」したい、と思う方もいるようです。

ニーズが変化した今こそ、地元の持つ魅力を最大限に活かして「第2のふるさと」プロジェクトにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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