海外から注目の「錦鯉」発祥の地新潟が「世界錦鯉サミット」でブランド確立を狙う

はじめに

2022年11月に新潟県で「世界錦鯉サミット」が開催されることが決定し、新潟が新たに注目を集めると予想されています。この記事では、錦鯉が世界的に評価されていること、ブランド化することのメリット、さらに新潟県が錦鯉を通じて取り組む過疎化対策についても取り上げます。地方創生のヒントを学びましょう!

錦鯉に外国人が魅了されるワケ

錦鯉は、新潟県発祥のとても美しい魚です。日本人にとっては手が届きにくいイメージがあるかもしれませんが、近年、欧米やアジアを中心に世界約50か国に熱心な愛好家が増えています。外国人は錦鯉のどのような点に魅了されるのでしょうか?一つは色の美しさ、個体ごとに異なる模様、優雅な曲線美、そしてゆったりと泳ぐ姿などがあります。

「泳ぐ宝石」錦鯉は豊かさの象徴

高級な錦鯉は1千万円以上の高値が付くこともあり、「泳ぐ宝石」とも言われています。また、大きな特徴の一つとして、年齢に応じて色や柄が変化していくことがあります。そのことから、将来高値になることを予想して購入したり、模様の変化を楽しんだりと尽きない魅力があります。欧米では、錦鯉が泳ぐ池(fish pond)を自宅の庭に造ることがブームとなっており、錦鯉を眺めてストレスを解消したり、家族との時間を楽しんだりする方が多くいます。一方、中国や東南アジアでは錦鯉は豊かさの象徴として富裕層に所有されています。

海外輸送方法の進歩

錦鯉の輸出が活発化した要因の一つに、輸送方法の進歩があります。従来の方法では、温度変化に弱い鯉を空輸で届けることが難しかったのですが、様々な技術開発によって安全に輸送することができるようになりました。例えば、以前は輸送時に段ボールの容器を使用していましたが、夏場になると容器内の水温が上がり、鯉の体調が悪化するリスクがありました。その問題を解決したのが、近年導入された発砲スチロール製の容器です。断熱性が高いため、水温の上昇を抑えることができ、年間を通して海外へ輸出できるようになりました。こうして日本から直接鯉を購入できるようになったことも人気の高まりの要因かもしれません。

新潟で錦鯉をブランド化することの意味

「世界錦鯉サミット」の目的には、輸出促進、錦鯉を通した国際交流、同時に開催される「クールジャパンEXPO in NIIGATA」との連携などがあります。それに加えて、錦鯉のブランド化も大きな目的として掲げられています。錦鯉は今や新潟を代表するコンテンツであり、新潟県が日本全体の輸出の半分を占めています。錦鯉の約8割は海外向けに販売されており、市場規模は、購入してそのまま現地の業者に飼育を委託する場合(委託飼育)も含めると100億円にもなります。養鯉業者や新潟県の自治体は、この商機を逃さないために、またアフターコロナにおけるインバウンド需要に繋げるためにもブランド化を進めています。

ブランド化で「日本の錦鯉」の価値を確立させる

錦鯉の世界的な需要の高まりとともに、中国をはじめ世界各地で錦鯉の生産が加速しています。これを受けて、産地証明や種類の基準など、国際的なルールを整える必要が出てきました。サミットでは、国際基準や産地証明発行システムなどについても話し合われます。ブランド化によって「日本の錦鯉」を日本文化の象徴として定着させ、その地位を確固たるものにする狙いがあります。

新潟を「錦鯉ファンが訪れたい街」に

今まで、新潟県の山古志地域周辺を訪れる海外からの訪問者は錦鯉のバイヤーばかりでした。しかし今回の「世界錦鯉サミット」の開催によって、「錦鯉発祥の地」として新潟県の認知度を高め、バイヤーのみならず世界中の錦鯉ファンからも注目が集まると予想されます。その関心の高まりを継続的な地域活性化につなげるために、錦鯉の養殖所を観光コースの中に入れ、人気のある観光名所にすることも目指しています。

「錦鯉」が観光業界の課題解決に

錦鯉のターゲットは富裕層

日本旅行における外国人富裕層の旅行消費額は、米・英・仏・独・豪5か国の市場と比較するとまだ規模が小さく、これから大きな市場となる可能性を秘めています。観光業界ではこれをチャンスと捉え、オンライン商談会や、旅行会社を招へいするファムトリップ、B to Cプロモーションなどの様々な取り組みを行っています。JNTO(日本政府観光局)によると、近年、富裕旅行者の価値観は多様化しており、海外旅行をステイタスシンボルとして位置づける従来層だけでなく、自分にとって価値ある体験や持続可能性などを重視する新しい層が現れています。錦鯉のターゲットが富裕層であることから、新潟県は富裕層の誘致に適した場所だと考えられます。また、錦鯉は富の象徴としてだけでなく、文化や自然体験としての価値を提供できるコンテンツになるでしょう。

SIT観光の目的としても最適

観光業界では、訪日観光客向けに様々なSIT観光(特別な目的に絞った旅行)に力を入れています。その中には、アニメやアート、大自然の中でのサイクリングなど日本ならではの文化や景観を活かしたものもあります。新潟県小千谷市では、「観光×錦鯉」による文化体験ツーリズムを企画しています。小千谷市ではバイヤーだけでなく、錦鯉に興味のある一般の観光客誘致につなげるために、他の地域とも連携したモデルコース作りをしています。観光コースを提案する際に「錦鯉」という新たな観光資源を加えることで、参加しやすくする狙いがあります。

錦鯉とNFT|長岡市の地方創生成功例

新潟県長岡市では、地方創生のためにSNS等を通じた魅力の発信、教育旅行の誘致、地域ブランドを活用した観光事業の推進など様々な取り組みを行っています。中でも、中越大震災で深刻な被害を受け、人口が約800人にまで減少してしまった旧山古志(やまこし)村域がこの状況を打開するために行ったユニークな取り組みが話題となりました。それが錦鯉をモチーフにしたNFT(偽造不可能なデジタルデータ)の発行です。

地域特性×最新技術で過疎地を救う

山古志住民会議が発行したNFTは錦鯉をシンボルにしたデジタルアートであり、地域の「電子住民票」を兼ねています。NFTを購入したデジタル住民から、山古志地域存続のためのアイデアやプランを募り、メンバーからの意見の集約や投票などをもとにした地域づくりを目指しています。

将来的には、デジタル住民が現実の山古志地域でも楽しめるようなまちづくりをする計画です。この例が示すように、地方の過疎化が進む日本で必要なのは、定住人口にとらわれずに世界の人口をシェアし、地方から世界に目を向ける柔軟な視点ではないでしょうか。その地域の特徴をとらえ、それを活かし、最新技術を取り入れた地域活性化への取り組みは、今後日本各地へ広まっていくかもしれません。

まとめ

錦鯉は熱心な海外の愛好家が増え続けており、今後のインバウンド需要においても大きな役割を果たしていくはずです。さらに富裕層をターゲットとしたSIT観光・過疎地対策という面でも可能性があり、注目すべきコンテンツです。日本が古くから持っている文化・芸術・地方に眠っている力を活かし、世界へ向けて魅力的なアプローチをしていきましょう!

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