ナイトタイムエコノミー海外の先進事例とは?

2019年7月4日ナイトライフ

外国人観光客は、旅行中、夜もめいっぱい、健全にはじけて楽しみたい、と考えます。日本のすてきな夜の観光は、日本経済の活性化にもつながると、日本政府もナイトタイムエコノミーの推進に積極的に取り組んでいます。今回のコラムでは、観光庁の分析をもとに、インバウンド関連の自治体や業者の皆様の参考になるような、海外の先進例と成功の理由、そして、そこから見えてくる日本のナイトエコノミーのヒントについてご紹介します。

ナイトタイムエコノミーとは

観光庁が今年3月に発表した「ナイトタイムエコノミー推進に向けたナレッジ集」によると、ナイトタイムエコノミーとは、18時から翌日朝6時までの経済活動を指します。宿泊、飲食、体験消費、交通などの分野で経済波及効果をもたらします。ナイトタイムエコノミーの先進都市ロンドンのナイトタイムエコノミー経済規模は約3.7兆円、ニューヨークで約2.1兆円の市場となっています。ナイトタイムエコノミーは、雇用の創出にも大きく貢献しています。観光庁のナレッジ集はこちらです。https://www.mlit.go.jp/common/001279567.pdf

どのような外国人観光客がナイトライフを好むのでしょうか。ナレッジ集によると、「大都市の刺激や、エンターテインメントを求める人たち。現地の人との交流を通じてその瞬間を楽しみたいと考える人たち」だそうです。旅行先では、それなりに贅沢に消費する傾向にあるといいます。深夜3時を過ぎてもナイトクラブなどでアクティブに活動しており、夜間の公共交通機関を積極的に利用したいと思っています。

2月や3月のオフシーズンにも来日します。訪日時に参考にする情報源は、「現地に旅行したことがある友人や知人の話」「ポータルサイトの検索」「個人のブログ」「Youtube」などで、マスメディアの発信より、口コミを情報源としています。ナイトタイム体験を求める理由は、「興奮したいから」「同伴者に誘われたから」「現地の人と交流したかったから」。

エンターテインメントショー、音楽ライブ、バーなどを好むメインの層に加えて、潜在的ターゲット層も楽しめる自然体験や文化体験コンテンツを夜間に充実させることで、さらなる夜間消費の拡大が期待できる、と観光庁では分析しています。

ナイトタイムエコノミーの海外先進事例

20時以降に開演するエンターテインメントショーやライブ、美術館や博物館などの文化施設を夜間活用したもの、官民連携した街全体での夜間イベントをご紹介します。

ショーやライブ、バー(シドニー)

The Rocks Pub Tour(シドニー)は、2時間30分のウォーキングツアーでシドニーの歴史を探り、歴史あるパブをガイド付きではしごします。クラフトビールやサイダー、ワインを楽しみします。イギリスの植民地だった時代のオーストラリアについて学べます。

美術館、博物館 (ニューヨーク)

メトロポリタン美術館(ニューヨーク)は、金曜と土曜は21時まで開いています。有料のコンサートやイベントも夜間に開かれ、レストランで夕食も楽しめます。この季節、屋上で夜のカクテルタイムを楽しめるのが、ニューヨーカーの自慢です。

グルメ・ショッピング (ソウル)

Doota Mall(ソウル)は、東大門を代表するファッションビルで、明け方まで営業している店も多くなっています。

自然資源の夜間活用 (ロンドン)

Thames Dinner Cruise(ロンドン)では、全面ガラス張りのクルーズ船で、ビッグベンやタワーブリッジなど、ライトアップされたロンドン各所の夜景をロマンチックに楽しめます。人生の特別な夜を過ごす人たちで連日にぎわっています。

官民協力イベント (シドニー)

Vivid Sydney(シドニー)は、毎年5月末、冬の到来と共に始まる南半球最大級の光と音のビッグイベントです。光の「ビビッド・ライト」、音の「ビビッド・ミュージック」、アイデアの「ビビッド・アイデア」の3つの分野から成っていて、オペラハウスを中心とするシドニー市内と郊外の一部を舞台に、世界のアーティストによる作品やアイデアが一同に会する芸術的な祭典です。

観光庁は、日本に導入する場合、「日本の固有の文化をアピールしつつ、従業員や地元の住民との交流などで親近感を感じてもらい、最先端テクノロジーや建築などを体験できる最先端のものが望ましい」としています。具体的には、ポップカルチャー、日本食、お祭り、クルーズ、バー・パブ・カフェ、アトラクションなどです。

ナイトタイムエコノミーに必要な環境整備とは

夜間に営業するための規制緩和が必要です。オーストラリアのニューサウスウェールズ州では、小規模のバー営業許可のライセンスについて規制緩和し、通常は正午から午前2時までの営業のところを、申請によって午前5時まで営業可能になっています。行政側は、コミュニケーションが取れている優良業者については、柔軟に対応しているようです。

安価な交通網の整備も不可欠です。24時間運行するニューヨークの地下鉄は本当に便利で、かつてのような危険さもかなり軽減しています。2016年8月には、ロンドンでも地下鉄の24時間運行が始まりました。観光庁では、深夜運行の採算性の確保の観点から、夜間交通による受益者(ナイトクラブ、飲食店など)からの拠出によるシャトルバスなどを提案しています。

夜間の活動は、セキュリティーが気になります。イギリスでは、「パープルフラッグ」という夜間でも安心して外出できる街を認定する制度を設けています。 犯罪対策をはじめ、アルコール提供のガイドライン、泥酔対策、交通整備、地域で提供されるサービスや利用者の多様性などの認定基準が含まれています。初めて訪れる観光客であっても、抵抗感なく楽しめる工夫がなされています。

観光庁では、日本にもセキュリティーの強化が必要で、「地域内の安心・安全確保のための民間事業者、地域住民、警察、公共団体、防犯ボランティア団体等による連携された取組が必要である」と指摘しています。客引き防止、条例の周知・啓発、条例違反者への指導などです。

文化的理解も必要

あまり休まずに働くのが美徳とされてきた日本人の価値観もありますが、時には、ナイトタイムを、人生を楽しむ、という文化を作っていくことも必要かもしれません。観光庁では、「地元住民の理解不足を解消するために、多様なステークホルダー(行政・民間・住民)が議論できる場を整備すること」を提唱しています。また、日本の労働人口減少により、労働者確保が困難となっていますが、「夜間に働くことへのイメージ向上を目指すことも重要」とも指摘しています。セルフレジの導入など、テクノロジーを活用した労働の代替も提案しています。雇用主の教育、夜間労働者への割増賃金も不可欠としています。

次回は、ナイトタイムエコノミーの日本での実際の取り組み、成功例を紹介します。

ナイトタイムエコノミー日本の先進事例|地方の事例も紹介

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