どこまで進んだ?日本の「キャッシュレス決済」

はじめに
最近、スーパー、コンビニ、郵便局といった日常生活に密着した場所での「キャッシュレス決済」が進んでいます。テレビCMでもよく目にするようになりましたね。近くのコンビニでの買い物なら、現金を持たずにスマホだけで買い物ができるようになってきました。
とはいえ、まだまだ「現金払い」のみの対応が多いのが日本の現状です。現金に対する信頼がかなり高いと言えます。一方で、他の先進国と比べるとかなり遅れを取っていると言えます。
では、日本のキャッシュレス決済がどの程度浸透しているのか、リサーチ資料から見てみることにしましょう。
参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「キャリア決済を中心としたキャッシュレス決済の動向整理」
2020年のキャッシュレス決済普及率
コロナ禍のため、消費支出は落ち込んでいますが、キャッシュレス決済比率は29.7%まで伸びました。といっても諸外国に比べれば、日本は「キャッシュレス後進国」です。
世界で一番普及しているのが韓国で96.4%、イギリスが68.6%、中国が65.8%ですから、大きな差があります。
日本のキャッシュレス決済の中で、1番使用されているのはクレジットカード決済で、約25%を占めています。クレジットカードを利用して、上手にポイントを貯めたり、特典を利用する人が多いのでしょう。
残りは電子マネーやQRコード決済、デビットカード支払いですが、まだまだ利用者が少ないのが現状です。QR決済のためのQRコードや、告知のためのポスターは増えてきましたし、スマホを使って決済している姿も以前より見かけるようになりました。でも、スーパーで買い物客の様子を見ていると、お財布から現金を出して支払う人がまだまだ多いという印象です。
ネットショッピングではどうか
コロナ禍でキャッシュレス決済と同じように伸びたのが、ネットショッピングです。では、決済手段はどうなっているのでしょうか。


この表を見ると、クレジットカード支払いが75%と大多数であることがわかります。次いで、コンビニ支払い、代引き、銀行振り込みとなっていて、いまだに現金払いを好む傾向にあることがわかります。かなり少ないですが、現金書留で支払うという人もいるんですね。
電子マネー支払いは前年より増えたとはいえ、まだ少数派に近いポジションです。
日本でキャッシュレス決済が浸透しないわけ
日本では、なぜキャッシュレス化が遅れているのでしょうか?消費者側の心理的な要因と、事業者側の負担が要因のようです。
・消費者側の原因
まず、現金払いを不便に感じていないことがあげられます。どこにでも銀行やATMがあり、簡単に現金を手にすることができます。外国に比べて治安も良いので、現金を持ち歩くリスクや偽札の心配がほとんどないことで、現金を持ち歩くことに抵抗がないのでしょう。
現金で支払えば、手元の残金がはっきり見えるので安心だという考えの人もいます。確かに、クレジットカードや電子マネーは、きちんと管理しないと使いすぎてしまうかもしれませんね。
また、キャッシュレス決済に移行するための手間が面倒だと考える人もいます。スマホのアプリを使えばそれほど難しくないのですが、スマホすら使いこなせないと思っている人もいます。特に、高齢者はデジタルツールに対する苦手意識が高いかもしれません。
セキュリティーの信用の低さも大きな要因です。不正に使われるのではないか、情報が漏洩するのではないかという不安です。犯罪に利用されるリスクより、現金を持ち歩くリスクの方が少ないと思ってしまうのでしょう。
・事業者側の原因
事業者側からすると、キャッシュレス決済の利用者が少なければ、店舗側でもキャッシュレス決済を導入する必要性を感じないという原因があります。
事業者側の一番大きな要因は、コストの問題です。まず、クレジットカードでも電子マネーでも、決済の際には専用端末が必要です。決して安価ではありませんし、ランニングコストもかかります。
また、キャッシュレス決済の支払い時に発生する、手数料の負担がネックだと感じる事業者もいます。地元の小さな小売店にとっては、かなりの負担です。
また、お店にとっては、商品を売ってすぐに入金があるほうが助かるというところもあるかもしれません。
海外に追いつこう!
世界のキャッシュレス化にはかなり遅れを取っていますが、コロナウイルス感染症による巣ごもり生活や、非接触型の生活様式を送るようになってから、日本でもキャッシュレス化のメリットが注目されてきました。
現金支払いに比べ、キャッシュレス決済はレジでの接触時間も減らせますし、現金を介してのウイルスの拡大を心配しなくてすみます。とても効果のある感染症対策です。このようなメリットに注目して、キャッシュレス決済を導入する店舗も着実に増加しています。
経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」によると、日本のキャッシュレス決済比率を2025年までに40%にするという目標が掲げられています。将来的には世界最高水準の80%を目標にしています。
海外では日常生活にかかる支払いを、ほとんどキャッシュレスで行っている国もあります。数年前、中国で見た光景ですが、おばあさんが店番をしているような小さなコンビニでもQR決済が普通でした。道端でパンを買う時も、キャッシュレスで買えました。小さな市場の中にある野菜を売っているお店でもキャッシュレスOKです。一緒に買い物をした友だちは「中国のお金は汚いからキャッシュレスが安心だし、便利だよ」と言っていました。
外国人にとってキャッシュレス決済は、とても一般的です。日本に来てキャッシュレス決済が使えれば、外国人旅行者のストレスもかなり軽減されます。今はインバウンド需要が落ち込んでいますが、外国人の入国制限が緩和されることを見据えて、キャッシュレス決済の導入を進めておくことができるでしょう。
まとめ
先進国であり観光大国である日本ですが、キャッシュレス化が進んでいるとは言い難い状況です。日本政府がキャッシュレス化に力を入れている理由の一つに、インバウンド対策があげられています。
「現金」を持ち歩けるほど「安全な国」であることは嬉しいことですが、海外から来る人たちのことを考えるとキャッシュレス化を徹底する必要があります。
キャッシュレス決済に慣れてくると、とても便利なのですが、突然「現金払いのみ」という場面に出くわすと困ってしまいます。財布の中に現金が少ししか入っていなかったり、小銭がなかったりするとパニックです。近くにATMがあっても、かえって面倒で買い物をあきらめることもあります。
テレビCMなどでも、キャッシュレス決済導入を勧めるものが増えています。以前は「現金払いのみ」だったお店でも、キャッシュレス決済を導入する所がかなり増えました。スマホを勉強して、○○ペイでの支払いにチャレンジする高齢の方も増えています。
日本でのキャッシュレス決済の周知も進んできました。もう少しすると、日本でもキャッシュレス決済がごく普通の時代が来るに違いありません。
今後の発展に期待しましょう。