各国のアフターコロナの観光戦略(後編)
はじめに
日本でもコロナウイルスのワクチン接種が始まっています。少しずつですが、アフターコロナへと回復に向かっています。
世界の「観光立国」となった日本ですが、今後のインバウンド需要はどうなっているのでしょう? 各国の日本への関心度など、観光業界に役立つ情報をお伝えします。今回は、シリーズの後編です。
アメリカ人観光客の日本への関心は?
あるアメリカのアジア向け旅行会社が行ったアンケートでは、「今後数年の間に休暇を使っていく可能性のある国は?」の質問に、「日本にいく可能性がとても高い」または「可能性がある」と回答した人は、なんと82%もいます。このパーセンテージは第1位です。(ちなみに、2位はヨーロッパ74%、3位はシンガポール28%)今、アメリカ人の約8割、ほとんどの人が日本旅行に興味を持っています。
また、「次の海外旅行では、より長く滞在する」また「例年どおり」という人が94%、「旅行の予算を増やす」また「例年どおり」と回答した人は97%でした。アメリカ人は、コロナの状況が回復したら海外旅行に出かけたいと願っているようですね。
毎年、アメリカ人の「日本滞在日数」と「旅行消費額」は高い傾向が見られます。インバウンドが復活したときの反動が期待できそうです。今から、訪日アメリカ旅行者を迎えるための準備を始めておきましょう。
中国のアフターコロナの観光動向
中国では、コロナウイルスの流行に厳格な体制が取られました。コロナの封じ込めに成功後、2020年7月より、省をまたいだ「国内旅行ツアー」が段階的に再開されました。2020年10月の「国慶節」の大型連休では、6億人が国内旅行と帰省のために大移動しました。国外旅行が禁止されていましたので、国内で旅行を楽しむことになりました。
各地方政府は、さまざまなサービス(無料のチケット、割引チケットなど)を提供して、国内観光業の回復に力を注ぎました。航空会社も週末限定の「定額乗り放題キャンペーン」を行い、航空会社と観光業界の景気回復に貢献しました。
毎年、日本を訪れる外国人旅行客は、中国人が第1位です。特に日本でのお買い物が大好きで、旅行消費額もトップです。デパートやドラッグストアなどにおいて、中国人は重要なお客様となっています。このコロナ禍で状況は低迷していますが、今後の見込みはどうでしょうか?
中国人も、アフターコロナに行きたい国は日本です。中国人の日本旅行人気は衰えていないようです。
中国のオンライン旅行会社は、日本旅行の再開に向けて力を入れ始めています。山梨県や横浜市は、ライブ配信による観光PRを行っています。熊本県も、オンライン日本旅行の企画を行っています。日中両方で、アフターコロナの観光業の回復に期待をかけているようです。
中国人の日本旅行人気は不動です。コロナ感染対策が徹底されていること、安心して旅行ができることをアピールすることも大切です。日本の観光業の経済回復のためにも、大勢の中国人旅行客を呼び込みましょう。
フランスの動向
年間9000万人の観光客が訪れる「観光大国」フランスも、コロナウイルスの流行により観光業界は大きな打撃を受けました。
夏のバカンスシーズンは、フランス政府が「この夏私が旅するフランス」キャンペーンを行なって国内旅行を促し、国内の観光業の回復をはかりました。このキャンペーンで、フランス人の53%(コロナ前の8割弱)が国内で夏のバカンスを楽しみました。
そのため、海外への観光客は大幅減少しましたが、国内需要があったために、当初予想されていた経済の落ち込みを回避することができました。フランスでも日本の「GoToキャンペーン」のような、旅行小切手の発行や各種補助金などの施策がとられました。
コロナ禍の今は、「密」にならない田園や山間部への旅行に人気が高まっています。そのため、パリ市街地の観光客が減り、前年比マイナス60%となってしまいました。パリでは、パリの観光業界を支えてきた外国人旅行者が減り、その影響を大きく受けています。
2020年12月の民間調査によれば、回答者の37%が「2021年のバケーションには旅行に行きたい」と答えている一方、「コロナ禍収束まで旅行をしない」と答えた人が38%もいました。フランス人の多くは、今後の旅行に関しては、慎重な姿勢をみせています。
フランスの観光業の回復は先行き不透明で、まだしばらく時間がかかりそうです。
まとめ
アフターコロナのとらえ方や考え方は、国によってそれぞれ違っています。状況が変わったら日本旅行に行きたいと積極的な人たちもいれば、コロナの流行で海外旅行を慎重に捉えている人たちもいます。それぞれの国の傾向を把握して、今後のインバウンド需要に備えましょう。
いずれにしても、アフターコロナは日本のインバウンドは徐々に回復してゆくでしょう。また、世界各地から大勢の外国人旅行者が訪れると思われます。その時に備えて、観光地PR・多言語対策・Wi-Fi整備・キャッシュレス決済など、出来ることを始めておきましょう。