中国と日本の賃金格差について
はじめに
近年、日本の賃金はそれほど上がっていませんが、中国では経済成長とともに「人件費」が高騰しています。ある業種では、日本の平均賃金をはるかに超えており、「日中逆転現象」が起きています。今や、日本が「下請け」になっている業種もあるんです。
ここでは、興味深い中国の「給料」についての現状、中国に進出している日本企業の今後の見通しなどをご紹介します。
中国の平均給与
「36kr Japan」の情報によると、中国大手求人サイト「前程无忧51job」で、中国で就職人気の高い27都市の平均給与ランキング（2021年第1四半期）が発表されました。その中で平均給与の高い都市トップ10は、以下の通りです。
トップ3都市の平均給与は、1万元を超えています。北京1万1187元（約18万4585円）、上海1万814元（約17万8431円）、深セン1万247元（約16万9075円）です。4位以下は1万元には達していません。
平均給与の都市差は大きく、ランキング27位のハルピンは6299元（約10万3933円）で、1位の北京の約半分となっています。調査対象となった27都市は、すべて中国の中では大都市なのですが、1位と27位の都市では、賃金の格差がかなりあります。
では、どの「業種」の給与が高いのでしょうか。下のグラフを見ていただくと分かりますが、
「金融」「インターネット・Eコマース」「通信」「半導体」「専門サービス」の分野で、給与が高騰しています。
アニメ業界では日中逆転現象も
「Sankei.Biz」では、中国のアニメ業界の平均月収が高くなり、中国と日本で大きく逆転していると報告されています。
近年中国のアニメ業界は、設備投資・人材育成に力を入れてきました。中国の大手動画配信サイトは日本のアニメ制作会社へ投資を行い、アニメ制作のノウハウを蓄積してきました。また、中国人学生にアニメ制作を学ぶための支援を行ってきました。
このような中国アニメ業界の努力の結果、優秀な中国人アニメーターが生まれました。今や中国のアニメーターは「専門職」とされ、高待遇を受けています。
中国でのアニメーターの収入は、広州の例ですが、平均月収が3万元（日本で52万円）を超えています。日本のアニメーターの平均月収は、17万5,000円ほどです。これほどの格差が生まれてしまっているため、最近では日本の企業が中国のアニメ制作会社の下請けを行うという、日中逆転現象が起きています。
高い人件費のため中国を離れる企業も
世界的なコンサルティングファームの「アーンスト・アンド・ヤング」のレポートによると、中国人の月額賃金は、2008年は204＄だったのが、2018年では490＄にまで上がったということです。10年間で、2.4倍も上昇しました。
一方、他の東南アジア諸国の月額賃金も上昇はしているのですが、中国ほどの伸びは見られません。2018年時点で、フィリピンは234＄、ベトナムは最も低くて217＄です。
出典：EYJapan
中国のここ10年間の経済成長は、目覚ましいものがあります。それと同時に、人件費・生産コストも高くなりました。そのため、中国に進出していた外資企業が、東南アジアなどコストの低い国に移動しています。「JETRO（ジェトロ）」が行った調査では、中国で生産を行っていた日系企業は多くが撤退し、次の候補地を「ベトナム」としているとのことです。
ベトナムが候補地No.1であるのは、人件費やコストが低いこと、輸出品目が似ているなど中国との類似点が大きいことがあげられます。また、ベトナムが外資企業に対して税制優遇していることや、ベトナムと中国は陸続きで近いことなど、移転する条件としてベストと判断されているからです。下の表からも分かるように、アジア各国の中で、中国はインドネシアやフリピンとは類似性が低く、タイやベトナムとは類似性が高いことが分かります。
まとめ
「世界の工場＝中国」という時代は、過去のものとなりました。中国は年々経済力を増しており、ある業界においては、日中逆転現象が起きています。
今後、多くの外資系企業が、中国からコストの低い国に移動していくでしょう。日本の多くの企業が進出を始めているのが「ベトナム」です。ベトナムは外資企業を積極的に受け入れていますので、今後もさらにベトナム進出する企業が増えると思われます。
とはいえ、中国と日本との関わりは深いので、今後も「中国向けマーケティング」の需要は高いといえるでしょう。
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