東南アジアの文化遺産ルートを紹介するハンドブック

はじめに

世界中で海外への旅行が制限されていますが、ワクチン接種が進んでいますので、近い将来、再び自由に海外旅行を楽しめるようになるでしょう。そのときに向けて“予習”してみるのはいかがですか?

ここでは、タイ政府が制作した「東南アジアの文化遺産を巡るツアーのハンドブック」から、東南アジアの文化について、その一部を紹介します。

インドシナを流れるメコン

インドシナを流れるメコン」と題したガイドブックです。周辺マップ、見逃せない観光スポット、博物館、文化施設、美食の楽しみ、工芸品・デザイン・織物など、イベントハイライトなどが紹介されています。ぜひ参考にしてください。

出典:国際機関日本アセアンセンター

メコン川の歴史

メコン川はミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムの5カ国を流れる東南アジアで最も重要な川です。全長4,345km、アジアでは7番目、世界で12番目に長い川です。チベット高原の険しい山あいから南シナ海に至るまで、非常に広大な地域を流れています。

13世紀、イタリア人商人で冒険家のマルコポーロが、欧州人として最初にメコン川を発見したと言われています。その後、フランスがメコン川を利用して中国に進行しようとしたことがきっかけとなり、メコン川沿岸一帯は交易の中心地として発展していきます。今でも、メコン川流域の建築物には、フランス帝国時代の影響が色濃く残っています。

メコン川沿いの観光スポット

ラオスの首都ビエンチャンでは、フランスの影響を受けたコロニアル様式の古い家が建ち並ぶ、美しい街並みを見ることができます。パリの凱旋門を模した「パトゥーサイ」は、ひと際目を引く存在となっています。また、そこからメコン川を400 km上流にさかのぼった古都ルアンパバーンは、旧王宮を擁し、ユネスコの世界遺産に指定されています。プーシーの丘からは、ルアンパバーンの素晴らしい景色を一望することができます。

タイのノンカイはのどかな町ですが、メコン川を一望できるリバーフロントの絶景が人気の観光スポットとなっています。ナコンパノムの美しい街並みも人気があります。メコン川対岸にラオスのターケークを臨むナコンパノムには、数々のコロニアル様式の建築物が建てられています。ナコンパノムのマーケットの中心には、1960年代の様式を代表した「時計塔」が立っています。夜になると、屋台が立ち並ぶ賑やかなエリアです。

メコン川沿いのグルメ

農業を支えてきた “命の川” であるメコン川流域では、数々のグルメが楽しめます。

お勧め料理は、ラオスのサラダ「ラープ」です。ラープは、ひき肉や鶏肉または魚に、オニオン・エシャロット・チリ・コリアンダー・ミントなどを使ったスパイシーなサラダです。また、タイの「ソムタム」と呼ばれる、青パパイヤを使ったサラダもお勧めです。カンボジアの、スパイスと酸味のバランスが絶妙なスープ「ソムロームチュー」や、ココナッツミルク・ターメリック・ガーリック・チリ・パームシュガーを魚に混ぜバナナの葉に包んで蒸した「アモック」は、外せない料理です。

ベトナムでは、米粉のパンケーキ「バインセオ」が人気です。また、「フーティウ(またはクイティウ)」という、ガーリックオイル・オイスターソース・しょう油・砂糖を煮詰めてあめ色に焦がしたところに細いビーフンをからめ、魚醤風味の豚骨スープと一緒に食べる料理も有名です。また、ベトナム南部の名物料理「ネムヌン」もお勧めです。これは、串に刺したバーベキューポークをライスペーパーで巻き、きゅうり・青バナナ・スターフルーツ・ハーブをのせた料理です。

メコン川沿いの工芸品

メコン川沿いのタイ東北部イサーン地方、ラオス、カンボジアの主な工芸品は、綿や絹の織物です。他には、竹・ラタン・粘土などの天然素材を使った工芸品も有名です。カンボジアで作られる「クロマー」は、格子やラインの模様と色の組み合わせが美しい綿のスカーフです。

これらの工芸品は、バンコクのショッピングモールなどで販売されています。メコン川沿いにオープンしたナコンパノムのサンツリーアート&カルチャーマーケットでは、ミミズ農法を用いたオーガニック農場の様子や、村人による伝統的なタイのクラフトアートを見ることができます。

プラナカン・カラフルな文化

プラナカンの歴史

プラナカン」とは、15世紀後半、中国南部から移動してきた中華系移民のことをいいます。中華系移民の人たちは現地の人と結婚し、中国の文化と現地の文化が融合したコミュニティーを形成してゆきました。そして、プラナカンの商人たちは東南アジア全体に広がり、さまざまなアジアの文化と融合しながら独自の生活様式を生み出してゆきました。プラナカンの文化は、とても“カラフル”です。色鮮やかな日用品やファッションは、外国人に人気を博しています。

プラナカンの商人は、マレーシア、シンガポール、ジャワ島、フィリピン、ボルネオ島、インドネシア、タイにまでコミュニティを広げてゆきました。現在ASEAN諸国のプラナカン人口は、800万人〜900万人と推定されています。

プラナカン文化あふれるスポット

タイのタクアパーにあるオールドタウンには、典型的な中華系マレーの建築様式・ヨーロッパ様式・タイのディテールが融合した伝統的な建築物が並んでいます。これらは、プラナカン文化の生きた博物館と呼ばれています。プラナカンが最も多く住むプーケットのオールドタウンでは、大々的な修復が行われ、家々の外観、デザインショップ、飲食店、カフェ、ホテルが色鮮やかに生まれ変わり、写真映えするオシャレな街並みが広がっています。

プラナカンのグルメ

出典:国際機関日本アセアンセンター

プラナカンの料理は「ニョニャ料理」と呼ばれ、中国南部、インド、ジャワ島、スマトラ島などの伝統的な料理がミックスされたものです。ニョニャ料理の代表的な前菜「ニョニャパイティー(またはクエパイティー)」は、揚げた帽子型の薄い皮に、クズイモ、干しエビ、生の小さいエビ、錦糸卵、エシャロット、千切りにした人参、生の赤唐辛子を詰め、自家製チリソースをかけたものです。

プーケット島の「ムーホン」は、豚バラ肉をブラウンシュガー、醤油、ガーリック、黒コショウで煮込んで作ります。中国から来てプーケット料理となった「ホッケンミー」は、卵麺に小エビやイカ、スライスした豚肉、野菜などを混ぜ、ゆで卵が添えられた汁がけ麺です。

ペナン島で有名な、酸味と辛みが強いスープ「ラクサ」や、ココナッツ風味で香ばしいカレー「カピタンチキン」は人気があります。シンガポールのカトンラクサでは、地元のレストランで香り高いカレースープや、キム・チュー・クエ・チャンの自家製焼き菓子の名物が味わえます。タイのソンクラー、ナンガム通りでは、お菓子やデザートが勢ぞろい。クラッカーのような「トンムアン」や、しょうが汁に入った豆腐のデザート「タオフアイ」など、中華菓子がたくさん売られています。

プラナカンの工芸品

伝統的なニョニャスタイルの「バティック」は、ジャワ島を中心としたインドネシアで作られています。刺繍やレースが施された「ババシャツ」は、プーケットのタランロードやペナン、シンガポールの土産物店や布製品を扱う店で手に入ります。

プラナカンのアンティーク品は、シンガポールのイーストコースト・ロードを始め、トレイル沿いの大きな都市で見つけることができます。プラナカンの家々を飾るカラフルなタイルは、シンガポールのテロック・アヤ・ストリートにあるPeranakan Tiles Galleryがおすすめです。

ハンドメイドのカラフルなビーズの「ニョニャサンダル」と、「ニョニャクバヤ」という美しい刺繍のブラウスを扱っているのは、ペナンのジョージタウンにあるジェンホテル、アルメニアンストリートにあるペナン・ニョニャ・カルチャーのショップです。

伝説のゴールデンチークルート

ゴールデンチークとは、ミャンマーを産地とする、品質の高い希少なチーク材のことです。優れた風合いと、耐久性を持っています。ゴールデンチークの発展は、東南アジアの交易の歴史と密接な関連があります。

ゴールデンチークの歴史

チーク材は、19世紀の初頭から、東南アジアの交易において最も価値ある木材として評価されてきました。チーク材の耐久性の高さから、造船木材に最適とされ、アラブ商人がミャンマー南部で造船を始めました。第二次イギリス・ビルマ戦争でビルマがイギリスに敗北した後、チーク材の取引はもっと盛んに行われるようになりました。無秩序な取引を制限し、チーク林の破壊に歯止めをかけるため、シャム(現在のタイ)国王ラーマ5世は1897年にRoyal Forestを立ち上げ、チーク材ビジネスの一元管理と伐採権の付与、税金の徴収を担うようになりました。

タイのプレーやランパーン、チェンマイ、ミャンマーのバゴーでは、巧みな職人技術で繊細な彫刻が施された、チーク材の建築物が今でも残されています。

ゴールデンチークルート沿いの魅力的なスポット

出典:国際機関日本アセアンセンター

タークの旧市街ワット・シタララムには、ヨーロッパ様式の木造建築物が残されています。シャム時代の建物の大半は、チーク材が使用されています。まるで、シャム王国時代のような雰囲気が残っています。以前は知事公邸として使われていた建物は、今は博物館として使用されています。

出典:国際機関日本アセアンセンター

プレーは小さな町ですが、チーク材の取引で繁栄しました。今でも、チーク材を使った豪華で美しい邸宅が当時のまま保存されています。20件以上のチーク材建築遺産が残されていて、東南アジア最大級ですので見る価値があります。

ゴールデンチークルート上のグルメ

名物料理は、ミャンマーモーラミャインの伝統料理「ティンヤン・ワックスライス」です。ご飯に、ロウで香りづけした水をかけ、氷を乗せた料理で、マンゴーサラダなどを添えて食べます。また、麺の上にオニオン、トマト、ターメリックで漬け込んだチキンのカレーをのせた「パン・テー・カウ・スェー」も、インドの影響を受けた名物料理です。

タイ北部の名物料理「ケーンオム」は、野菜と肉をカレーペーストで煮込み、シュリンプペーストで香りづけをしたスープです。また、ランナーの「カオソーイ」というライスヌードルも有名です。これは、ターメリックを混ぜた濃厚なスープに、ココナッツミルクが入ったまろやかな味わいです。また、豚バラ肉にジンジャー、タマリンドペースト、酢漬けニンニク、チリなどを混ぜ合わせたスパイシーで甘辛い「ケーンハンレー」も名物料理です。

ラオスでは、青パパイヤサラダ「タムマークフン」が有名です。生のナスに、パームシュガー、ライム、ガーリック、トマト、干しエビ、チリなどをすりつぶし混ぜ合わせたサラダです。また「ラオスソーセージ」も名物料理の1つです。レモングラス、ガランガル、カフィアライムの葉、エシャロット、コリアンダー、チリ、 魚醤を混ぜ込んだ豚肉のソーセージに、もち米を添えて食べます。

ゴールデンチークルート沿いの工芸品

700年以上の歴史を持つタイの3大焼き物の1つ、チェンマイの「セラドン焼き」があります。窯元の「バーンセラドン」で作られていて、セラドン焼きを作る工程を見学することもできます。ランパーンの伝統工芸品も歴史が長く、「チキンボウル」が作られたことで有名になりました。ランパーンのシンボルの雄鶏は、デザインを現代風にアレンジして描かれています。

ナーン県の「シン」も伝統工芸品です。シンとは、綿や絹で作られた服のことです。青く染めた布にピンクと白の縞模様が入った「パシンマン」は普段使いの服で、絹と綿の混合布に金と銀のラメが入った「シンポン」は、上流階級や支配階級の人々が来ていた高級な服でした。

モーラミャインの沖に浮かぶオグレ島は、手工芸品で有名です。チークなどの木材を使った楽器、伝統的なモン族の織物、帽子などの竹製品などを作っており、工房を見学することもでます。

まとめ

東南アジア一帯の文化に根付いた、歴史的建造物、手工芸品、農産物などは、今も私たちを魅了する秀逸なものばかりです。ここでは、東南アジアの美味しいもの、写真に撮りたい美しい街並み、のんびりと旅行するのに最適な注目のスポットやモノをご紹介しました。アフターコロナには、うってつけの観光になるでしょう。ぜひ、行ってみてください。

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