化粧品から見える日本人女性と中国人女性の価値観の違い

中国,化粧品

なぜ中国人女性はハイブランド化粧品を好むのか

私の知り合いの中国人女性(60代)は、「資生堂」のスキンケアのラインナップを全部購入して肌の手入れに励んでいたのですが、その様子を見て、中国人の「資生堂」ブランドに対する信頼の高さに驚いたことがあります。同じく知り合いのショップ経営者の中国人(40代)に、「お店に日本の化粧品を置くとしたら何がいい?」と聞いたところ、いろいろな商品を挙げていましたが「SK-II」と言っていました。「資生堂」も「SK-II」も、中国国内の一般的な化粧品と比べるとかなりの高額です。では、なぜ中国人にこんなに人気が高いのでしょうか?いくつかの要因がありそうです。検証してみたいと思います。

中国人はとにかく「メイドインジャパン」に信頼を持っている

中国人の女性に「値段が高いのに、なぜ日本ブランド化粧品を買うの?」と尋ねると、「高くても日本の製品は品質が良いから」と、大体の人が答えます。「高いものは良いものだ」と信じている人がまだまだ大勢いるのです。でもなぜ中国人女性は自国の化粧品を購入したがらないのでしょうか。聞いてみると、「中国製は質が悪いから」「日本ブランドに見せかけた偽物が多いから」という答えが返ってきます。なるほど。確かに、中国にもたくさんの自国の化粧品は売られているのですが、安いものは「これ使って大丈夫?」と疑問に感じる怪しげな商品であったり、外国ブランドに似せた「偽物ブランド」であったりするので、本物で信頼できる「メイドインジャパン」の化粧品を手に入れたいのです。

実は中国の百貨店には日本を含む海外メーカーの商品も並んでいるのですが、できれば、現地に行って実際に購入したいという気持ちがあります。というのも、にわかには想像し難いのですが、正規の店舗であっても偽物が売られているのが現状だからです(ちなみに、中国でキャッシュレス化が急激に普及した原因のひとつは「偽札の横行」がです。それだけあらゆる分野に偽物が氾濫しています)。それで多少値が張っても、ちょっと無理をしてでも、正真正銘の「本物」が買いたいのです。「本物」であること-そこに価値を見出しています。こうしたことが、化粧品購入金額の高さの要因の一つでしょう。

中国人と日本人の化粧品にかける金額の比較

上記は、株式会社VALUESという調査会社が公開した「日中女性の美容に関する支出金額・ブランドイメージを調査」というレポートに掲載されたグラフです。中国人は化粧品にかける金額がとても高いことがわかります。理由の一つとは、先に述べたように、単価の高い海外ブランドの化粧品を買う傾向が高いためです。

さらに、中国版Amazon「淘宝(タオバオ) 」や、中国版Instagram「小紅書(RED)」といった「越境EC」の登場により、旅行に行かなくても簡単に海外製品を購入できるようになりました。中国版Twitter「微博(Weibo)」や「小紅書(RED)」などによる、海外の化粧品に関する情報量が増えたため、若い世代の女性が(ハイブランドに限らず)海外の化粧品をたくさん購入するようになったからともいえるでしょう。もちろん、中国の経済発展と共に、個々の中国人の経済力が成長したことは言うまでもありません。中国の新世代が社会人になり、社会の消費を担うようになってきたためでもあります(こちらの記事もご覧ください)。

では、美意識の高い日本人女性の化粧品にかける金額が、(中国人に比べると)低いのはなぜでしょうか?

日本は豊富な化粧品ブランドがあるから、選択肢が多い

日本人女性も「資生堂」や「SK-II」の良さを知っていますし、他のハイブランド化粧品も購入しているのですが、その他にもたくさんの化粧品ブランドがあるので、自分に合ったブランドを選ぶことができるのです。しかも、お手頃な値段で質の良い化粧品がたくさんあるので、「絶対にブランド品でないとダメだ」と感じることはありません。むしろ、ハイブランドを買って、効果がいまいちで後悔することのほうを避けたいのです。そのため、日本人女性たちもネットで「口コミサイト」をチェックして他の人たちの評価を見て、何を買うか買わないかを判断しています。お得感を重視しているのでしょう。

中国人と日本人の日本化粧品ブランドイメージの違い

面白い分析結果がありました。こちらです。

中国人女性は、「国際的・革新的・先進的」なイメージの商品を好むようです。良い意味で「夢を追っている」ともいえます。今の自分から脱却して「変わりたい」欲求が強いのでしょう。

それに比べると日本人は、「信頼・安心・親近感がある・手ごろな値段」の商品を好む傾向があります。効果が高いのならハイブランド化粧品も購入しますが、安価で質が良く、安心して使える商品の方を選ぶ傾向が強いようです。「値段と質が釣り合っている商品」というのが、日本人女性の重要視するポイントなのでしょう。

中国人は「知名度」の高い日本の化粧品を購入する

当然のことですが、自分が知らない高い化粧品を買いたいと思う人はいません。中国人に売れている化粧品というのは、中国人にとって「知名度」が高いものなのです。先ほども例に挙げましたが、「資生堂」「SK-II」、KOSEの「雪肌精」などは、ほとんどの中国人が知っていると言って過言ではないブランドや商品です。これは企業による宣伝努力の成果ともいえます。中国人が利用するSNSでもたくさんの情報を拡散しています。資生堂が、中国版Twetter「微博(Weibo)」でどのように宣伝広告しているかを見てみましょう。

資生堂は、三人の有名中国人を「イメージキャラクター」として起用しました。

こちらの方は「范丞丞(ファン・チョンチョン)」という売れっ子歌手で、「微博」のアカウントには1,000万人のファンがいます。

こちらは有名な女優「唐嫣(ティファニー・タン)」さんです。彼女の「微博」には、なんと7,000万人ものファンがいます。

もう一人、こちらの方は「黄轩(ホアン・シュアン)」さんという俳優です。この方の「微博」にも、1,000万人のファンがいます。

このように、今の中国で影響力のある有名人を起用し、中華圏で7億人が利用している「微博(Weibo)」を使って情報発信をしてもらうことで、「資生堂」のブランドイメージアップと、商品の知名度の向上を図っています。

しかし、中国人の若い女性の流行には変化が見られている

必ずしも中国人の間で、大手の日本ブランド化粧品だけが売れているというわけではありません。比較的若い人たちはSNSを通して、日本の化粧品流行情報を得ることができるので、購入する商品の種類の幅が広がっています。安くても質の良い「プチプラ商品」の存在を知り始めています。ドラッグストアやLOFTなどで買える、オーガニックや無添加といった「自然派」の商品も人気が高まっています。中国版Twetter「小紅書(RED)」ではたくさんの商品が紹介されており、欲しい場合はサイト上で購入できるようになっています。

おわりに

中国人に人気の高い商品というのは、「信頼できる良品」だと認知されている「知名度」が高い商品です。多少値段が高くても「本物のブランド化粧品」を買いたいと考えます。そして、今はまだ「高い商品は良い商品」「ブランド品はステイタス」と考えている人たちの割合が多いようです。

それで、商品の「知名度」をあげてゆくためには、「情報をたくさん発信すること」「SNSでの口コミ情報の拡散」が鍵と言えます。

とはいえ、今はブランド化粧品の人気が高くても、「無添加」とか「オーガニック」といった「自然派化粧品」などの注目度が、今後はいっそう高くなるでしょう。中国人消費者の嗜好は急速に変化しつつあり、「高価格=高品質」「有名ブランド=高価値」という一辺倒な見方から、「少量生産ならではの高品質」「価格と質のバランス」「自分しか知らない」など、さまざまなニーズが生まれてきています。中国人消費者ニーズを敏感に察知し、きめ細かく対応していく必要もありそうです。

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