中国の最新住宅事情2021年版(前編)
はじめに
コロナの影響をいち早く脱したと言われている中国。コロナ前も不動産バブルが続いていましたが、コロナ後も景気は好調のようです。
ここでは、現在の中国の住宅ブームとその事情についてお伝えします。
中国の最新住宅事情
中国大手の住宅情報サイトで、「1級都市」とされている大都市(北京・上海・広州・深セン)で調査が行われました。回答が得られた人たちのデータから、中国の実情を見てみましょう。
最近の大都市の家賃の高騰は激しく、家賃またはローンの支払いが生活を圧迫しています。回答が得られた若い世代の人たち(18~44歳)の3割は、家賃(ローン)の割合が月収の40%に達しています。これは、かなり高い割合と言えます。念願のマイホームを手に入れても、夫婦共働きでローンを支払い、生活費はギリギリといったところでしょう。余裕のある生活を送っているとはいえません。
中国では回答者の約6割が、すでに不動産を所有しています。その他の人たちも、近い将来に不動産購入を検討しています。不動産購入を検討している人は、日本円で1700万~3400万円ほどの住宅の購入を考えている人たちが多く、中には日本円で8000万円以上の住宅購入を検討している人たちもいます。
東京の都心も相当に家賃が高騰していますので、似たような状況といえるかもしれません。実際、多くの若い夫婦が共働きで「ペアローン」でマンションを購入しています。マイホームを購入する経済力はあるのですが、ローンの支払いで、本当に余裕のある暮らしを送っているわけではないかもしれません。
中国全体では、ローンの返済に2000元~5000元を当てられると回答している人たち(若年層)が約6割います。特に収入の高いミドルエイジの人たち(全体の約2割)は、不動産を一括購入しています。
中国人が購入を望んでいる住宅は、90~120平米(3LDK)が約6割と1番多く、次に70~90平米(2LDK)が多くなっています。約1割の人たちが、120~150平米以上(4LDK)の大型物件の購入を望んでいます。住宅の「広さ」だけで比較すると、東京都心よりも条件が良いようですね。
中国の不動産の仕組み
中国の不動産事情は、日本とは随分異なっています。中国は土地の「所有権」を人民に与えていませんので、人々は土地の「使用権」だけが認められています。マンションの場合は、70年間の使用権が与えられます。この期間を過ぎると(建前上)、国はその土地を返還する必要があります。ですが、おそらく延長(更新)が出来るので、追い出されることはないでしょう。しかし、更新料がいくらかかるのかなど、不透明な要素が多いのが実情です。日本のように土地を購入したら、永久的に自己保有とはならないのです。
マンションの価格は、その「質」(構造)によって異なります。しっかりとした構造の住宅の場合は、価格が普通レベルのマンションの2倍以上になる場合もあります。日本はグレードが同等の物件は、大体相場が同じですね。(もちろん地価によって、販売価格は異なりますが)
中国政府は近年の「住宅バブル」を懸念していて、正常化させるための対策を始めています。具体的な対策として、大型物件(140平米以上)の不動産所得税の増税、転売の規制、ローン金利の引き上げなどを打ち出しています。
中国の新築マンション販売で日本と全く違っている点は、内装事情です。中国は基本「スケルトン」状態で販売します。つまり、内装を行っていない「箱」を売るという形式です。
ですので、購入者自身が内装工事を行います。もちろん、自分の手で行うのではなく、自分で内装業者に頼みます。この方式の良い点は “自分好み”の内装にできること、“コスト”を抑えることができることです。もちろん豪華な仕上げにしたいのであれば、自由にそうすることができます。
そういうわけで、中国には多くの「建材屋」があって、ありとあらゆる商品が売られています。自分でトイレ、洗面台、シャワー、蛇口、ライト、壁紙、ドア、キッチンのシンク、クローゼット、床、タイル、棚etc、なんでも選べるんです。日本のように “規格化” されていないので、そこはとても面白いといえます。ただ、自分で何もかも決めるシステムは、非常に手間がかかること、個人の“センス”が問われる(失敗も多い)といった面もあります。
私自身中国滞在歴があり、いろいろなマンションに住みましたが、様々な “おかしな” 家を見てきました。例えば、蛇口のお湯と水の表示(赤と青)が逆であるとか、電気のスイッチのオンとオフの表示が逆であるetc。でもこれらは可愛い失敗で、リビングの照明がまるで “場末のスナック” のようなネオンの家もありました。
中国の需要に合わせた日本企業の戦略とは
中国人の富裕層の中には、キッチンだけでなくシャワーや洗濯の水も「浄水器」を使って安全・安心なものを求める傾向があります。日本のメーカー「東レ」では、“家まるごと浄水システム”を提案し、家中で浄化水を使えるようにしています。価格は日本円で25万円ですが、とにかく「安心・安全」を重視する中国人には需要が大きいでしょう。(*参考記事はこちら)
最近は「内装済」の住宅の需要が拡大していて、例えば「パナソニック」も、その分野にすでに進出し始めています。
まとめ
中国では「マイホーム」を持つことがステイタスです。また、結婚の “条件” にもなることもあるので、親が子供のために購入するケースもあります。大都市は、住宅バブルで価格が高騰していますので、なかなか購入できない人も多いのも事実です。特に大きな物件や豪華な物件は、庶民ではとても手が出ません。
そのため、中国は低所得者や若者向けの安価な賃貸住宅を大幅に増やしています。後編の記事では、この「保障制住宅」について取り上げます。