メイク・イン・インディア政策について(前編)

インド

はじめに

インドの人口は、2027年には中国を追い抜き、世界第1位になると予測されています。

インドでは、経済発展のために「メイク・イン・インディア」(インドでモノつくり)という政策が推し進められています。この政策により、海外企業のインド進出がしやすくなりました。すでに日本企業もインド進出を始めています。今後も増えてゆくと思われます。

ここでは「メイク・イン・インディア」政策について、前編・後編に分けて解説していきます。

メイク・イン・インディアとは?

インドは農業大国

もともとインドは農業大国でした。今も、農業(第一次産業)に従事する人が多く、第二次産業(製造業・工業)と第三次産業(サービス業)の発展が思うように進んでいません。こういった背景がありますので、インド政府は、国内の製造業と工業の強化を図ることになりました。

1960年代に重化学工業に投資がなされましたが、あまり成長を遂げることができませんでした。インドは他の新興国と比べても、GDPに占める工業の割合が低く、いまだに第一次産業(農業)の雇用が多いのです。

新興国が経済発展していくためには、第一次産業から第二次、第三次と拡大していく必要があります。インドも、農業大国から工業大国へと経済発展を遂げたかったのですが、現状、遅れをとってしまいました。

発案者はモディ首相

インドの経済発展のために、2014年、インドの首相ナレンドラ・モディ氏が「メイク・イン・インディア」政策を打ち出しました。

この政策の目的の1つは、インドの「製造業」の活性化です。そのために、外資企業を積極的にインド国内に受け入れ始めました。煩雑で時間を要していた行政手続きを簡略化し、電力供給などインフラの環境整備を行い、複雑な税制度を各州で統一して課税方法を簡略するなど、様々な改革を行いました。そうすることによって、外国の企業がインドに進出しやすくなりました。

2019年の総選挙でもモディ氏は圧勝しましたので、今後も引き続き「メイク・インインディア」の政策が続けられるでしょう。インドの今後の経済成長に期待がもてそうです。

具体的な目標は?

「メイク・イン・インディア」政策の目標は、インドのGDPに占める製造業の割合を上げることです。具体的には、15%から25%にまで引き上げるという目標を掲げています。そして、雇用をさらに生み出してゆくこと、輸出を拡大してゆくことを目指しています。

メイク・イン・インディアと日本企業

日本企業も続々進出

モディ氏は、日本企業の誘致を強く希望しています。「メイク・イン・インディア」政策が始まった2014年からわずか3年間で、200以上の日本企業がインドに進出しました。現在のインドは人件費が安く、コストを低く抑えることが可能です。製造業が進出するには、良い条件が整っています。

また、インドは都市化を進めるため、インフラ整備を大規模に行っています。水道や電気など生活に密着したものはもちろん、高速道路・鉄道・空港など、インドを近代化させるための整備を手掛けています。実際、インド国内の鉄道建設には、日本政府が支援を行っています。

日本とインドは「ビジネスパートナー」としての関係が築かれ始めています。インド自体が日本との関係強化を望んでいますので、日本企業が進出するチャンスは大いにあります。特に現在は、製造業や建設業の必要性が大きいでしょう。ですが、農業や医療などの分野でも進出の余地とチャンスは大いにあります。

以前は中国などが進出先候補でしたが、今後はインドを考えるのは「現実的」な選択といえるでしょう。

スズキのケース

インド進出で成功している、日本企業のケースをご紹介しましょう。

インドで自動車生産を行っている「スズキ」です。1983年からインドでの生産を始め、2018年には累計生産台数が2000万台に達したと報告されています。スズキの自動車は「質が良い」ということで、インドの多くの人々に受け入れられています。実際、インド産のスズキ車は、ほぼ100%インド国内で使用されているとのことです。日本の自動車「スズキ」は、インドの人々に愛されているようです。

スズキ・東芝・デンソーの3社が協力して、自動車のリチウムイオン電池を生産することにもなっています。今後、ハイブリッド車や電気自動車が普及していくようになれば、それらの生産も必要となります。非常に大きなプロジェクトとなるでしょう。

スズキの鈴木修会長は「スズキがインドの雇用創出と「メイク・イン・インディア」を実現している」と語っています。スズキのインドへの貢献は大きいですね。

確かに、日本の大手企業がインドに進出し、たくさんの雇用を生み出していけば、インドの経済発展に寄与できます。インドの人口が今後「世界一」になることを考えると、インドの需要は非常に大きく、インド進出は非常に有望であると思われます。

日本企業の進出の現状

JETRO(日本貿易振興機構)の報告によると、2020年10月の時点で、インドに進出した日本企業は1455社で、製造業の割合は49.3%であったとのことです。製造業のあとに、卸売業(12.9%)情報通信(5.9%)運輸・郵便(4.9%)と続いています。

インドの進出先は、ハリナヤ州(412社)、マハーラーシュトラ州(250社)、カルナータカ州(220社)、タミル・ナドゥ州(200社)、デリー準州(145社)と報告されています。

インド政府の対応

インド政府は、日本企業をバックアップするために、インド商工省内に「ジャパン・プラス」という専門部署を設置しています。インドは、日本企業の誘致に協力的です。積極的に日本企業を招いて、インドが製造業や研究拠点として発展し、“グローバルハブ” となることを目指しています。

また、日本語のTwitter「Invest India – Japan」(インベストインディアジャパン)を開設しています。ここでは、インドの「今」を発信しています。

例えば、インドへの投資のPR。2020年のオンライン取引が、2019年から80%も増加したこと。ある州の鉄道プロジェクト(7億8050万ドル)が順調に進んでいること。さまざまな情報がツイートされています。

https://twitter.com/investindiajpn

まとめ

インドの「メイク・イン・インディア」政策は順調に進んでいて、多くの日本企業がインドに進出し始めています。すでに進出した大企業の成功例もあります。インド政府が日本企業の進出を望んでいて、さまざまなサポートを行い、煩雑だった手続きや法制度を改正しています。今後の進出地候補として、積極的に考慮できるのではないでしょうか。インドは近い将来、人口が世界一になると予測されています。今後は「インド」に風が吹くのかもしれません。

今回は「メイク・イン・インディア」前編でした。後編に続きます。

翻訳市場調査などの「外国語サポート」が必要な方は、
ぜひ「アットグローバル」にご相談ください。
見積もりやご相談は完全に無料です。こちら からどうぞ!