アフターコロナに向けて観光地がとるべき施策とは?(前編)

インバウンド需要

はじめに

今回のコロナショックは、ワクチン接種が進みつつあるとはいえ、まだまだ収束の兆しが見えない状況にあります。そのため、観光事業が復興し、訪日外国人の受け入れ準備が整うには、まだ数年かかるでしょう。しかし、いずれ必ず「アフターコロナ」は訪れます。インバウンド需要の回復に向けて、観光地は今からどんな対策を講じていく必要があるのでしょうか? 

公益財団法人中部圏社会経済研究所のレポート※(以下、レポート)から、役立つポイントをご紹介します。前編と後編に分かれています。

失われた国際観光収入は141兆円

「2020年は観光史上最悪の年」

2020年の世界全体の観光客数は、約10億人の減少(前年比-74%)となりました。日本でも、右肩上がりに伸びていた訪日外国人旅行者数ですが、2019年に3188万人に達したものの、2020年には約412万人に激減してしまいました。

国連世界観光機関(UNWTO)の調べによれば、今回のコロナショックによる2020年度の国際観光収入の損失額は、1兆3000億ドルであったとのことです。これは日本円に換算すると、141兆円(2021/5/24現在のレート)です。この損失額は、リーマンショックのあった2009年の11倍以上に上り、2020年は観光史上最悪の年であったと報告されています。

回復するのは2024年以降?

UNWTOによると、観光需要が回復するのは2023年から2024年と言われています。ただし、これは2020年5月時点での推測です。類似した統計では、国際航空運送協会(IATA)が2020年7月に、2024年に観光需要がコロナ前の2019年の状態に戻るだろうと見込んでいます。

しかし、世界各地でコロナウイルスの「変異株」が猛威を振るっている状況を考えると、観光業の復興はさらに後ろ倒しになるのは間違いないでしょう。

コロナが観光業界に与えた影響

その1・観光の魅力の変化

コロナ禍による大きな変化の一つは、人と人との交流を制限する必要があるということです。地域の人やと旅行者同士の交流など、コロナ前では「魅力的」だったことが、コロナ禍では危険なもの、避けるべきものと見なされるようになってしまいました。アフターコロナにおいても、“ソーシャルディスタンス” が当たり前となり、今まで「魅力的」だった旅行のスタイルが受け入れられなくなる可能性があります。

また、街全体でおもてなしする、というスタイルも変化する可能性が高いでしょう。自分が泊まっているホテルは衛生的であっても、街中のレストランや他のホテルの観光客が同じ衛生レベルを保てる保証はありません。

むしろこれからは、「施設内で食事もアクティビティも完結するスタイル」が評価されてゆくかもしれません。宿泊客が同じ衛生感覚なら安全が保てますし、もし問題行動を起こす客がいたらスタッフが対応してくれるというメリットがあるからです。街を自由に散策することが危険なので、「施設内にこもったまま」の方が安全、という時代に変化してゆく可能性もあります。

その2・観光業界が悪者と見なされる?

コロナ禍では、全国各地で「県外ナンバー」の車に対する嫌がらせ行為が発生しました。また、「わが県に観光に来ないでください」と県知事が表明するケースも続出しました。その結果、観光客は地元の安全を脅かす悪者というイメージがついてしまったようです。さらにレポートによれば、観光業界自体の意識の低さが事態の悪化を招いてしまったと指摘しています。

ここ10年間、日本は「観光立国」となることで地域経済に貢献する、観光業は日本の「戦略の柱」とも言われてきました。しかし、このコロナ禍により、観光客や観光業界への悪いイメージが根付いてしまった可能性があります。とりわけ外国人観光客を温かく迎えるムードが一気に消え去ってしまったので、それを復活させるためには相当時間がかかるでしょう。

その3・需要が回復しても混乱が生じる

今後急激にインバウンド需要が回復したとしても、混乱は必須でしょう。このコロナ禍で観光業界や飲食業界は相当なダメージを受け、閉店を余儀なくされたお店が多いのです。そのような状況の下で、多くの外国人観光客が訪れたとしても、対応が追いつかず混乱が生じることでしょう。

また、ホテルや施設などが倒産して民事再生法などが適用された場合、ある旅館は倒産した結果負債が解消されたが、真面目にやっている旅館は負債が残るという、不公平な状況が生じてしまうかもしれません。さらに、観光地の中核となる大型施設やホテルは再生されたとしても、中小施設は不利な状況となり存続自体が危うくなるかもしれません。

まとめ

前編では、コロナ禍で日本の観光業界が受けたダメージ、人々の意識の変化などをお伝えしました。後編では、アフターコロナを見据えた具体的な施策と、私たちのとるべき行動などを取り上げます。後編もぜひご覧ください。

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