中国のオンライン診察とは?

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はじめに

体調が悪くなったら「病院」に行き、医師の「診察」を受け、「処方箋」をもらうというのが、日本での医療のあり方です。もしかしたら、今後はこのあり方に変化が生じるかもしれません。

今、中国では「オンライン診察」のシステムが導入されています。ここでは、一歩進んでいるこの制度についてご紹介します。

月間2500万ユーザーが利用、中国の4強

香港株式市場に上場する「WeDoctor」とは?

2010年に、医療オンラインプラットフォーム「WeDoctor(微医)」が設立され、2015年に、インターネット病院の「乌镇 (wuzhen)」がスタートしました。オンライン診察(再診も含む)、救急オンライン診察、病院の診察予約、専門医とのコンタクト、処方箋の発行、医療費の支払い、健康相談、ヘルスケアサービスなどを提供しています。

出典:微医

このネット病院では、診察したい「科」から医師を選ぶこともできますし、気になる「病状」を入力して医師に相談することもできます。実際に診察が必要となる場合は、病院や医師が紹介され、病院の予約をとることができます。

病院が遠い場合や病院に行くべきか悩んでいる時などは、「インターネット病院」の利用は便利でしょう。まずは、オンライン上で自分の病状を相談し、どう対処するのがベストか判断することができるからです。

もし、病院で診察や検査が必要な症状であれば、すぐに予約が取れます。また「評価」の高い医師を選ぶことも可能です。問診料は、オンライン決済が可能です。

「36k」によると、「WeDoctor」はこれまでに17億7000万ドル(約1900億円)もの出資を受けています。このプラットフォームの登録ユーザーは、2億2000万人に達しました。これまでに、4000万回以上のオンライン相談を受けています。売上高は、2020年度は18億円元以上(約310億円)となりました。新型コロナの流行で、このオンライン医療サービスの利用者は激増したとのことです。

「WeDoctor」が香港証券取引所で上場することになれば、中国で4番目のオンライン医療サービスとなります。その他、中国の3つの上場オンライン医療については、次にご説明します。

オンライン医療のBig3とは?

中国のオンライン医療のBig3とは、「京东健康(JD Online Healthcare)」「阿里健康(AliHealth)」「平安好医生(Ping An Good Doctor)」です。

「36kr」によると、「京东健康」は、中国大手EC「京东商城(JD.COM)」傘下のオンライン医療サービスです。もともと大手ECですので、オンラインでの医薬品の販売をメインに成長しました。京东健康は2019年に京东グループから分割され、たった一年半で香港証券取引所に上場しました。現在11万人以上の医師と提携しており、オンライン医療体制が充実しています。

出典:京东互联网医院

「阿里健康」も同様、中国大手EC「アリババ」発のオンライン医療サービスです。アリババグループが運営するECサイト「天猫(Tmall)」での医薬品販売をメインに発展しました。「天猫(Tmall)」のアクティブユーザーは2億5千万人もいます。この巨大市場での医薬品販売を行うことにより、2020年上半期の取引総額は、554億元(約9300億円)であったと報告されています。

出典:阿里健康

「平安好医生(Ping An Good Doctor)」は、中国の大手保険会社「平安グループ」傘下のオンライン医療サービスです。ECサイトではありませんが、もともと保険会社ですから、医療を提供する顧客(企業)情報を多く保有しています。その強みを生かして、成長してきました。今後も、オンライン医療に「医療保険」をプラスしたサービスを提供することで、他社と競合してゆくでしょう。

出典:平安好医生

中国オンライン診察の現状

そもそもネット病院とは?

「ネット病院」とは、どのような病院のことなのでしょう?

すでにある「病院」が開設するケースと、「企業」が病院と連携して開設するケースがあります。どちらのケースであっても、オンライン上で医療サービスを提供します。例えば、あらゆる医療相談、緊急の医療相談、医師の紹介、再診(可能な場合)、処方箋の発行、医療費のオンライン決済、健康管理のサポートなどです。

ネット病院の良いところは、手軽に相談・問診ができることでしょう。遠隔地に住んでいる人や多忙ですぐに病院に行けない人が「どう対処したら良いか」考えている時、まずはオンライン上で医師に相談できます。そこで、医師が病院で診察・検査を行う必要があると判断すれば、すぐに予約をとることができます。

提携している病院や医師が多ければ、患者にとっては「選択肢」が増えるのでメリットが大きいと言えます。評価の高い病院や、評判の良い医師に担当してもらうことができるからです。

病状が落ち着いていて、オンライン上で「再診」を受ければ良いという場合も、インターネット病院はとても便利です。また、健康管理の「アプリ」が開発されて、医師がその「データ」から経過観察することができれば、病気の悪化を早めに防ぐ助けとなるでしょう。

こういった要素から、インターネット病院はいろいろな可能性を秘めていると言えます。

なぜオンライン診察が広がった?

中国でなぜオンライン診察が普及したのでしょう? その要因の一つは、医療体制の地域格差です。大都市には最新設備の整った病院がありますが、農村部にはほとんどありません。

もし、遠隔地に住む人たちが(重い)病気に罹ったら、治療を受けるために大都市に行かなければなりません。そのためにかかる費用や労力は大変なものがあります。大都市の病院は毎日といってよいほど患者であふれかえっており、診察の「番号札」を取ることもままならない状況にあります。実際のところ、遠距離を移動できずに十分な治療を受けることができない病人が大勢いるのです。

この問題を解決するために、「オンライン医療サービス」は非常に効果的でした。病院に行けなくても、直接医師とコンタクトが取れますし、処方箋も発行してもらえます。必要ならば、病院の予約を取ってもらえます。

こういった中国の社会事情があるので、そのニーズを満たすために「オンライン診察」というシステムが発展したのでしょう。

オンライン診察の問題点は?

オンライン診察は、中国人の需要を満たす良いシステムではありますが、数々の問題も生じています。

1番問題となっているのが、法律の整備が遅れていることです。例えば、診察を管理・監督・罰則などの規制が明確にされていないため、「責任」の所在が定まっていません。

また、そもそもオンライン診断だけでは、患者の過去の病歴と現在の症状の「データ」を正確に把握することは不可能です。そのため、オンラインで「再診」して良いのか判断がつかないという問題が生じています。

また、オンライン診察の支払いでの「医療保険」の適用が整っていない地域があり、その対応に困るケースが多いということです。

これらの解決には、しばらく時間が必要でしょう。とはいえ、中国社会には「オンライン診察」というシステムは、効果的であると思われます。今後の発展を見ていくことにしましょう。

まとめ

今回は「オンライン診察」について取り上げましたが、画期的なシステムと言えます。

日本は、大都市も地方も島にも病院がありますし、医療のレベルも(非常に大きな)差はありません。とはいえ、もし「オンライン診察」が充実していれば、遠隔地に住んでいる人や多忙な人がすぐに相談できる場所となるでしょう。

また、良い病院を探す=良い医師を探すということでもあります。「オンライン診察」で直接医師とコンタクトを取れば、自分にとって最適な医師と出会えるかもしれません。

今後の日本の医療のあり方は変化してゆくでしょうか?見守っていくことにしましょう。

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