中国のシルバー事情2021

中国語

はじめに

中国では、長い間行われてきた「一人っ子政策」のために、少子高齢化が急速に進んでいます。その影響は、日本以上に深刻です。現在、中国の60歳以上の高齢者は2.5億人いると言われており、この人数は日本の全人口の2倍に当たります。

近年中国経済の発展は著しく、国民の生活は豊かになりました。それに伴って、高齢者自身の意識や社会の高齢者に対するイメージも大きく変わってきました。ここでは、現在の中国の高齢者を取り巻く話題をご紹介します。

元気なシルバー層

中国の元気な高齢者のトピックをご紹介します。

SNSで話題の「網紅」

「網紅(ワンホン)」とは、例えるなら中国版ユーチューバーのことです。最近中国では、平均年齢74.5歳という高齢者による合唱団が「網紅」としてフィーバーしています。この合唱団は名門「清華大学」の同窓会メンバー男女約40人で、最高齢者は90歳ということです。白シャツに赤い蝶ネクタイ姿で生き生きと歌っている様子がインターネットで中継され、「かっこいい」「年齢を感じさせない」と多くの国民を感動させています。

また、平均年齢が65歳を超えるおばあちゃんファッションチームも話題になっています。平均身長は170センチと長身で、20人超のチームでファッションだけでなく日常のさまざまな情報をSNSで発信しており、「カリスマ」的な存在となっています。歳を重ねても華やかで心豊かに生きる姿が、中国社会での高齢者イメージを変えています。(参照記事はこちら

高齢者の居場所を作る試みも

中国では高齢者自身の意識が変化してきていますので、豊かな老後の過ごし方に関心が集まっています。そのなかで、高齢者の「居場所」を作るためのさまざまな試みが行なわれています。今、高齢者に人気を博しているのは、北京市郊外にある「お年寄りのおもちゃ屋さん」です。その様子は、中国メディアも注目しています。

昔懐かしいブリキのおもちゃや投げ矢、知恵の輪やトランプ、パズルから木馬まで、昔ながらのおもちゃやゲームが約400種類、180㎡の店舗に所狭しと並んでいます。屋外の広場では、ブランコや車タイプの四輪自転車で遊ぶこともでき、子どもの頃を懐かしむ高齢者に人気です。先進国に倣って試験的に店を始めたという店主は、お年寄りが長居するのも歓迎しているため、店内は閉店間際まで大盛況のようです。

高齢者を取り巻く状況

中国では高齢者が増える一方で、社会の状況はどのように変化しているのでしょうか。現状を見てみましょう。

バリアフリーにはほど遠い現状

中国で1970年代から1990年代に建てられた建物では、6階建て・7階建てでもエレベーターが付いていません。そのため、高層階に住むお年寄りが自力で外出できない「外出難民」の問題が急増しています。要介護者も多いので、自宅で「監禁」のような状態を強いられています。

中国全体でバリアフリー化が一向に進んでいないため、高齢者は家の中の段差で転倒して怪我をすることが多くなっています。高齢者にとっては、屋内も屋外も不便なのです。中国ではこのような「ハード面」の問題が山積みで、住環境の悪さが高齢者の「孤独」を誘引し、老年期うつ障害疾患が増えているとの報告もあります。そのため、中国政府は、後付けでエレベーターを付けるなどの対策を進めています。

スマホ難民に

中国では、移動履歴などから新型コロナ感染リスクを判定する「健康コード」というアプリを「WeChat」に組み込み、コロナ対策を徹底しています。スマホユーザーはこのアプリを使用し、自分にコロナ感染リスクがあるかどうかを証明することになっています。

とても便利なシステムではあるのですが、高齢者にはスマホを持っていない人も多く、「スマホ難民」となるケースが増えています。スマホがないために、地下鉄の利用を断られたり、公共トイレが利用できないという事態が生じ、生活に支障をきたしています。2021年3月5日、中国の「全人代」(日本の国会にあたる)では、李克強首相は「スマートデバイスが、お年寄りの日常生活の妨げにならないようにします」と述べています。今後は改善がはかられるのでしょう。(こちらの記事を参照

まとめ

中国にはパワーのあるお年寄りが活躍していて、高齢者のイメージを変えています。高齢者たちは自身で生活を楽しむための工夫をしています。しかし一方で、解決しなけれなばらない問題が山積みです。

高齢化社会を迎えた中国では、住環境のバリアフリーや高齢者介護などの問題が深刻化しています。今後の高齢者人口の増加率を考えると、早急な対策を講じることが求められています。ハード面・ソフト面どちらも、高齢者に優しい社会になってゆくことを期待します。

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