外国人が抱える特有の問題を理解しよう

在留外国人のためのお役立ち情報シリーズ

はじめに

日本に暮らす外国人は増加しています。出入国在留管理庁によれば、2021年末の在留外国人数は2,760,635人でした。コロナ禍のため前年より4%ほど減少したものの、10年前に比べれば35%も増加しています。ですから職場・学校でも、外国人の同僚、クラスメートは珍しくなくなってきました。

しかし、日本で生活する外国人の多くは、日本社会において、特有の問題に直面しています。

すべての問題を完全に解決することは難しいですが、どのような特有の問題に直面しているのかを理解することは大切です。そうすれば、外国人にとって必要な助けを差し伸べられるからです。

ここでは、外国人が抱えがちな幾つかの困難な状況を取り上げていきます。

言葉の壁

外国人にとって一番大きな問題は「言葉の壁」でしょう。そのために、いろいろな困難に直面します。

例えば、病院に行かなければならない時です。病院を探すのも大変ですし、医師に自分や家族の症状を伝えるのも大変です。

知り合いの中国人は、コロナウィルスのワクチン接種の申し込みをするのも大変でした。接種券は届いたけれど、いつ、どこに、どうやって申し込めばいいのかさっぱりわからなかったようです。

学校に通う子供がいる外国人も大変です。プリントやメールでお知らせが来ますが、内容を正しく理解するのはなかなか大変なようです。日本語に限界があるだけではなく、文化の違いから、日本の教育現場の習慣がわからないからです。

日本に長く住んでいても、自己流で日本語を学んできた外国人は誤解して理解していることが多いです。日本人と結婚して、10年以上、日本で生活している中国人の友人と会話していて、てっきり理解しているだろうと思っていても、わかっていなかったということがよくあります。

突発的に対処しなければならない事態が生じたりすると、パニックになります。

先ほどの中国人の知り合いは、4月から子供が中学生になるのですが、急に5月に引っ越しが決まってしまいました。1ヶ月だけ、現住所で通う中学校の制服が必要です。どうしていいのかわからず、慌てて電話で助けを求めてきました。代わりに中学校へ電話をして、1ヶ月だけ制服を借りることができました。

もし自分が外国で生活することになったとして、そこに日本人の知り合いや、日本語が話せる友人がいなかったらと考えると、「言葉の壁」は本当に大きな不安の壁です。

低賃金

これも「日本語の壁」があるために生じることですが、仕事に限界があるという問題があります。

定住資格があっても、日本語による意思疎通に限界があると低賃金の仕事に限定されがちです。

日本に来て日が浅くても、日常会話程度ならできる人もいますが、読み書きはできないのが現状です。例えば、今、とても需要が大きい介護職ですが、実際にお世話をしている時は問題がなくても、仕事の引き継ぎのために記録を残すことが求められることがあります。でも、ある程度の日本語の読み書きができないとそこが大きなネックになり、介護の仕事は断念しなくてはなりません。

外国人が多く働いている場所というと、コンビニ・スーパーのお弁当を作る製造業などがあります。製造ラインで黙々と働けばいいので、日本語でのコミュニケーションというストレスはないかもしれませんが、低賃金で、なおかつ夜勤もしなければならないという劣悪な環境の職場が多いというのが実態です。

社会からの孤立

日本語に限界がある上に、日本社会の制度がわからないと、社会から孤立しがちです。

母国と違う習慣や制度がたくさんあるはずです。納税、医療の受け方、出産・子育て、学校制度など、戸惑うことばかりです。

自分が、言葉の壁がある外国で生活している場面を想像してみてください。ささいなアクシデントでも、それを解決するにはかなりの努力が必要です。より難しい問題に直面したら、かなりのストレスを抱えることになります。

特に、夫が職場に出かけている間、一人で子育てをしなければならない女性は、母国語で一緒に話せる友達が近くにいないと孤独を感じるかもしれません。家族が同じ国籍の場合、近くに同じ国籍の親戚や友人が住んでいることもあります。話し相手はいるので、その点でのストレスは少ないかもしれませんが、同じ言語のコミュニティーとのかかわりが強すぎると、日本の社会からは孤立しがちです。

夫が日本人である場合、日本の社会制度からすると、どうしても仕事中心の生活になりがちです。ただでさえ外国での生活は不慣れで不安なのに、出産や子供の学校生活のフォローなど難しい場面が生じる時に一人で対処しなければならないと、かなりのストレスとなります。夫が協力的だといいのですが、そうではない時に、サポートしてくれる環境がどうしても必要になってきます。

親子の摩擦とコミュニケーション

さらに考えられる外国人特有の問題に、親子間の摩擦という問題があります。コミュニケーションが上手にできないために生じる問題で、深刻な問題です。

子供が日本語しか話せない場合は、特にコミュニケーションの点で問題が生じます。親も一生懸命に日本語を学んでいますが、限界があります。小さい頃はそれでも問題はないかもしれませんが、学校にあがるようになり、学校からの通知を親が正確に理解できず、必要な準備ができない、または行事を忘れてしまうなんてこともあり得ます。

また、子供が思春期になり、学校や友人関係で悩みを抱えた時、子供の気持ちを十分に理解できないことから、親子の間に溝ができてしまうこともあります。「どうせ親に話してもわかってもらえない」と思うと、気持ちをため込んでしまったり、友達にだけしか悩みを打ち明けないということにもなりかねません。

日本はまだ外国人に対する見方に偏りがあるので、学校の友達から、子供自身の見た目をからかわれたり、親の片言の日本語をおかしいと言われることもあります。残念なことにそれが原因で、いじめや差別が起こることもあります。

子供の成長にとって、親子のコミュニケーションはとても大切です。小さいうちから、子供にも親の言語を教えるのは一つの良い方法です。子供の言語能力は優れているので、家にいながら二つの言語が習得でき、なおかつ、親子の滑らかなコミュニケーションが図れるなら、これに勝ることはありません。

まとめ

今後も日本で暮らす外国人は増えていくでしょう。外国人と共に暮らせる社会を作っていきたいものです。

近くに外国籍の人がいたら、積極的に声をかけてみましょう。彼らもできれば日本の社会に順応したい、日本人の友達が欲しいと思っているはずです。

日本人は比較的シャイなので、話しかけるのが難しいと思っている外国人もいるかもしれません。お互いに歩み寄ってみれば、たくさんのお互いの良い所を学べます。また、どんな助けが必要なのかもわかります。各地の自治体で、外国人サポートの場を広げるきっかけになるかもしれません。

私たち一人一人がそんな意識を持って生活すると、グローバルな社会に貢献できます。どこの国の人も、同じように安心して生活できる社会になるといいですね。


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