外国人に日本語を効果的に学んでもらうには?

在留外国人のためのお役立ち情報シリーズ

近年少子高齢化が進んでいることから、政府は外国人材の拡充に力を入れています。

外国人材の数は年々増え続けており、令和2年時点における日本の外国人労働者は「1,724,328 人」に達しました。今後さらに外国人労働者は増え続けていくことが予想されており、日本が外国人との共生社会へとシフトする日もそう遠くはないでしょう。

そんな共生社会において必須となるのが「日本語教育」です。そこで、今回は日本語教育に関する政府の取り組みについてフィーチャーしていきます。

なぜ日本語教育が必須なのか

外国人労働者が日本で生活する上で最も重要となる技能は「日本語能力」です。コミュニケーションがうまくいかなければ心がすれ違い、誤解やミスに繋がり、結果として大きな問題に発展することもあり得るからです。

しかし、日本は外国人労働者の受け入れを拡大しているにもかかわらず、本来は最も力を入れなくてはならない日本語教育をおざなりにしてきました。技能実習の過程で自然と日本語が身につくだろうという安易な考えのもと法整備がなされ、結果として日本語がほとんど話せない外国人労働者がたくさん生まれました。

当然そういった方たちは生活面や仕事面で困難に直面し、キャリアアップも望めません。来日前に抱いていた憧れや希望は失われ、日本に対するイメージは崩れ、トラブルも報告されるようになりました。

こういった状況を改善するためには、やはり適切な日本語教育システムを構築し系統立てて日本語を勉強できる環境を整える必要があります。政府も現状に問題意識を持っており、有識者会議では日本語能力の強化を提言しています。具体的には「公認日本語教師」の創出によって日本語教師の質を向上させることなどを検討しているようです。

日本語教育が徹底されれば、優秀な外国人材の確保が可能となります。政府の今後の動きに注目が集まります。

​今の日本語教育の状況

日本語学習者数

外国人日本語学習者は令和元年の時点で277,857人、前年比では7%増加しました。

出典:文化庁「令和元年度 国内の日本語教育の概要」

このグラフからも分かるように日本語学習者、日本語教師、日本語教育機関のすべてが右肩上がりの傾向を見せています。平成2年から数えると、日本語学習者数は約4.6倍、日本語教師は約5.6倍、日本語教育実施機関・施設は約3.1倍も増加しています。

国別日本語学習者

国別日本語学習者の内訳を見てみると中国(91,547人)ベトナム(62,117人)が圧倒的に多く、この2か国で日本語学習者数全体の過半数を超えています。次いでネパール(14,246人)、韓国(11,593人)、フィリピン(10,125人)、台湾(8,734人)、ブラジル(8,159人)、インドネシア(8,083人)、アメリカ(5,628人)、タイ(4,518人)と続いています。

出典:文化庁「令和元年度 国内の日本語教育の概要」

また、興味深い点としてペルーが前年比で約1.4倍、インドとモンゴルが約1.2倍増加しています。

外国人の日本語レベルの現状

出入国在留管理庁の報告によると、全体の外国人の言語力としては「仕事や学業に差し支えない程度に会話できる(32.8%)」が最も多く、次いで「日常生活に困らない程度に会話できる(32.4%)」、「日本人と同程度に会話できる

出入国在留管理庁の報告によると、全体の外国人の話す・聞く能力としては「仕事や学業に差し支えない程度に会話できる(32.8%)」と回答した方が最も多く、次いで「日常生活に困らない程度に会話できる(32.4%)」、「日本人と同程度に会話できる(22.9%)」という順になっています。なお、「日本語での会話はほとんどできない」と回答した人は12%でした。

また、日本語の読む力については「よく分かる(52.1%)」で最も多く、「分からない」「よく分からない」と回答した方の合計は22.4%でした。やさしい日本語の読む力について77.2%の方が「よく分かる」と回答して最も多く、一方で「分からない」「よく分からない」と回答した方は8.9%という結果になりました。

続いてこれらのデータを技能実習生に限定してみましょう。すると、話す・聞く能力では「日常生活に困らない程度に会話できる(46.2%)」と回答した方が最も多いという結果になりました。また、「日本語での会話はほとんどできない」と回答した人は13.3%となっており、外国人全体よりも割合が高いという結果になっています。

日本語を読む能力については「よく分かる」と回答した方は19.7%にとどまっており、外国人全体の割合(52.1%)と大きな乖離が見られます。なお、「分からない」「あまり分からない」の合計の割合では37%に達しており、外国人全体での割合(22.4%)に比べて高くなっています。ただし、優しい日本語の読む能力についての質問では「よく分かる」と回答した方は60.7%まで跳ね上がり、外国人全体の割合(77.2%)よりは低いものの比較的高い割合を示しています。さらに「分からない」「あまり分からない」の合計でも7.5%まで下がり、外国人全体の割合(8.9%)よりもむしろ低い割合になっています。

政府の目標

令和2年7月14日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」によると、今後の政府方針としては「日本語教育の充実(円滑なコミュニケーションの実現)」を目指して以下のような目標を掲げているようです。

  • 外国人の生活者に対する日本語教育環境の強化
  • 日本語教室が設置されていない地域における日本語教室開設支援の強化
  • 「公認日本語教師制度」の整備によって日本語教師の質を向上させる
  • 外国人材との円滑なコミュニケーションを行うために必要となるポイントや手法の調査
  • 日本語教育機関の制度整備に関する検討、および検討結果に基づいた対応の実施

日本語学習に役立つ情報サイト

文化庁は外国人の日本語学習を支援するサイト「日本語教育コンテンツ共有システム(通称:NEWS)」を開設しています。NEWSは日本語教育の関連教材やカリキュラム、論文や報告書、施策資料などを検索することができる情報検索サイトです。

カリキュラム案5点セットや多言語調査票などをダウンロードできるほか、日本語の初心者向けサイト「つながるひろがるにほんごでのくらし(通称:つなひろ)」の紹介なども行っています。

まとめ

今回は外国人の日本語学習に関してご紹介しました。

外国人労働者の受け入れを進める日本は、外国人との共生社会を構築していくことが求められますが、現状では共生社会を構築するには不十分な部分もが多くあります。しかしながら、政府もただ手をこまねいて見ているだけではありません。共生社会を実現すべく日本語教育に力を入れるなどの施策に乗り出しています。外国人を雇用する企業や事業主は政府の支援を積極的に活用し、多言語表記の整備なども含めて外国人労働者とのコミュニケーションを強化していきましょう。

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