インバウンドにおける多言語対応の現在地

観光庁(JNTO)の統計によると、2018年の訪日観光客数は3,119万人(前年比+8.7%)と史上初めて3,000万人の大台を超えました。政府は2020年までに4,000人という数値目標を立てていますが、今年はラグビーのワールドカップが、来年はオリンピックが予定されていることを考えると、この目標達成もあながち夢ではなさそうです。

これに伴い、国内ではさまざまなインバウンド対策が進められていますが、本コラムでは「多言語対応」に絞って、現状を以下の3回に分けてレポートしたいと思います。

(1)インバウンドにおける多言語対応の現状(本コラム)
(2)インバウンド対応に役立つ多言語コミュニケーションツール 最前線
(3)インバウンド向けの多言語対応の成功例

最大の悩みは多言語対応の貧弱さ

観光庁がこれまでに実施した受入環境に関する調査によると、訪日観光客が旅行中にもっとも困ったことは「言語によるコミュニケーション」の弱さに関するものでした。以下が最新の調査結果(平成29年3月20日発表)ですが、多言語対応面での問題が全体の50%近くを占めていることが分かります。

訪日観光客が特に困った施設

特に困った施設として旅行者が挙げたのは、鉄道駅、宿泊施設、城郭・神社・仏閣、飲食店、小売店の5つでした。中でも「飲食店」で困ったという回答が28.5%ともっとも多く、「鉄道駅」が17.4%、「小売店」が16.2%と続きます。

各施設で特に困った場面

各施設で特に困った場面を聞いたところ、飲食店では「料理を選ぶ・注文する際(65.8%)」、鉄道駅では「今いる駅から目的地までの行き方を特定する際(62.4%)」、城郭・神社・仏閣では「歴史・文化に関する説明を読む際(68.4%)」がもっとも多い結果となりました。このようなシチュエーション別の不満を解消できれば、多言語対応に関する不満を解消するのに大いに役立ちそうです。

もっとも必要だと思う多言語ツール

さらに、もっとも必要だと思う多言語ツールについて意見を聞いたところ、鉄道駅では案内標識や券売機の多言語表示が必要との回答がもっとも多く、飲食店では写真やイラスト入りのメニュー、多言語表示メニューが必要との回答が多く聞かれました。

必要を感じるコミュニケーションツール

上記とは別に、各施設で必要だと感じるコミュニケーションツールについて聞いたところ、鉄道では「構内アナウンスの多言語放送」が、宿泊施設・飲食店・小売店では「指差し会話シート」が、城郭・神社・仏閣では「多言語音声ガイド」が必要と答えた人がもっとも多くいました。

以前に比べて改善されている?

最後に励みになる情報を。確かに「多言語対応」が最大の問題点ではあるものの、以前と比べると改善されていると感じるリピーターも多いようです。多言語表示・コミュニケーションツールとも、1~2年前と比較しても、合わせて7割を超える人たちが「かなり改善している」「多少改善している」と回答しました。訪日観光客と接する機会の多い施設が、多言語対応を弱点と認め、真摯に対応している様子が見て取れますね。


いかがでしょうか。こうして分析してみると、施設やシチュエーションごとに、一体何がボトルネックになっているのかを突き止め、具体的な改善施策を打つのに役立ちますね。

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